第193話 私大ピンチ
「グオオオオーーーーッ!!!」
「っ!!来いよワイバーン、食えるもんなら食ってみろ!!」
町を散策している私キジコ。
現在工事中の闘王闘技の闘技場に立ち寄った所、魔力の弱った私を狙いにワイバーンが襲撃してきたのだ。
現場は大騒ぎ。
工事のおっちゃん達は衛兵に救援要請を出しに行き、ワイバーンのターゲットである私はここで食い止める。仮にこんな奴が街に飛んでいけば大勢の人が危険だ。
私の魔力残量はまだそれほど無い。
使える手はペネトレーザ100発分の魔力だけだ。
身体能力はまだあるけど相手は竜種、高い所で攻撃してくる以上近接戦は不利だ。
「オオオッ!!」
「っ!ペネトレーザ!!」
レーザーがワイバーンの顔を掠める。
「グルルル....!!」
ふむ、速度と威力は問題ない...しかし貫通力が弱くなってる様に感じる。
「グルアアアア!!!」
凄まじい風圧の砲撃...ブレスを放つワイバーン。
「うおおお!?」
ブレスは地面を荒々しく削り私に迫る。
私はなんとか必死に避け続ける。
「隙あり、ペネトレーザ5発!!」
「グオオオオッ!?」
よし命中!
けど貫通力はやはり弱くなっている。
魔力あげて威力を高めるか?
いや、命中外した時の損失が大きいからこのままでいこう。
残り94弾。
救援はまだか、町には凄まじい強さの仲間がいるから私は持ち堪えるだけで....
「ずいぶん甘い考えだな。」
「え?」
強い悪寒が走る。
「暴風壁!!!」
「まず...!?」
ワイバーンを中心に、闘技場に巨大な竜巻...風の壁が発生する。砂嵐で外の様子も見えない。
「やられた...!!」
「ガーハッハッハ!!以下に元神獣候補といえど弱れば赤子も同然よ!!」
「...念話か。」
「いかにも、我は強い奴を食うのが好みでな、この町にいた強い魔力を持った奴が突然弱るのを感じ取りやってきた。大当たりだ、貴様程のやつを食えば我はさらなる強さを得る!!」
私が弱るのを感じ取っただと?
言い方変えりゃずっとこの町を監視していたって事か!!
他の皆も危ない!!
「さっさと来いよワイバーン、長居されると迷惑なんだよ!!」
「それは申し訳ないな!だが我は簡単に出て行くつもりは無い、貴様のついでに町の人間も食うとしよう!!」
「っ!!」
ーーーーー
「まずい、まずいっす!!」
その頃、町中を全力で駆ける1人の獣人がいた。
「弱ったキジちゃんを狙って堂々と町中に襲撃して来やがった、キジちゃん無事でいるっす!!」
ケイである。衛兵が出した救援要請を聞きつけ、焦り向かっているのだ。
「(今強い奴らがゴロゴロいるこの町に襲撃ってどういう事っすか!?なんの自信があればそういう事が出来る!?おそらく他の皆の所にも救援要請の連絡が回っているはず、お願い間に合って!!)」
突然の襲撃事件、
闘技場から離れた位置にいた事、弱っているキジコの護衛をしておけば良かったと後悔している。
現在襲撃から5分経った。
桃花様達は現在会議中、ルザーナ達は館で休んでいる。クロマの転移があればすぐ着くはずだが、魔力が別の所に移動していない所を感じ取る限りまだ衛兵の連絡が回り切っていない。レリィやリーデンはどこいるか知らない。
「(間に合って...間に合って!!)」
ただそう思い駆ける...。
ーーーーー
「ペネトレーザ!!」
「フンッ、この程度!!」
風の防壁で私のレーザーを防ぐワイバーン。
残り48弾、予想以上に攻めて来やがるこの野郎。
「どうやら私に勝機があるみたいだな!」
「勝手に決めるな、最後までわかんないもんだよ。」
「強がりを!!グオオオーーーッ!!!」
「!!」
暴風のブレスが迫る。
このくらい避ける事は出来る、だが飛び散る砂粒がとても厄介。
「ペネトレーザ!!」
「っ!?...まだ戦う気があるのか。無駄な足掻きを!!」
なんだ、ペネトレーザの威力が若干弱まったぞ?
「ペネトレーザ!!」
シュンッ
「どうした、この程度か!!」
「っ!!...砂粒か!」
私がペネトレーザを撃つ直前に、防壁の砂嵐から石の粒やらを適当に集めて自身の周辺に纏う事で、ペネトレーザに被弾させ威力を弱めていた。
私の魔力が弱まっている影響上、威力も思った以上に下がる。
「(魔力の残存量がもうほとんどない!ここまでか...!!)」
「グワーハッハッハ!!貴様の命運もここまでのようだな!!せめてもの慈悲だ、殺してから食うとしよう!!!」
「っ!!!」
「空間衝撃波。」
それは突然だった。
砂嵐が、暴風の壁が...砕け散った。
「な...!?...中にいる此奴の安否も考えず突撃とは片腹痛い。」
砂嵐は中にいる私がどうなっているかを分からなくするためと、私を人質やらなんやらの目的で使われていた。
だがそれを打ち破ったのは誰だ?
今のは間違いなく空間衝撃波だ。
一体誰だ、これ程の空間衝撃波を使える者で心当たりあるのなんて...ニコくらいだ。
でもニコの気配じゃない、
「(この気配は...むしろ...。)」
砂埃が晴れてゆく。
そこには人影、小さな人影。
「誰だ貴様は!!」
人影は闘技場に降り立ち姿を現す。
顔にはバイク用の様な猫耳フルフェイスヘルメット。
着物を着ているが下は黒いハイソックス、
ブーツを履いていて、
猫の尻尾がある。
「目標補足、ワイバーン。対象の殲滅を開始する。」