第190話 私が助ける番だ
私は...ニコ。
ニコ・ランド・ウルフェン。
獣人族の王族として生まれ、
神獣の可能性を持つ者として鍛えられ、
...結果的に神獣の力を持った人間だ。
私の理想と欲は、
両親や仲間達が目指した、人間らしく慈しみの心を持つ獣人族の姿がある世界。
そして、目の前の誰かをより多く助ける力。
...くだらないと思われても良い。
でもそれが私だから。
否定されても自分まで否定するつもりはない。
頑固だろうけど、それが私と言う存在意義であり、私が私であれた理由なんだから。
神獣の力は欲しい。
それはここまで来たからでもあるけど、
今誰かを助ける事が出来るなら、大切な誰かに信頼され託されたなら、私はその力が欲しい。
何度も逃げようと、捨てたいと思ったこの力。
私の心を壊し、自分で自分を傷つけ、嫌な未来を歩ませたこの恐ろしい力が。
でも...あの人と出会った事で私は変われた。
あの人と出会えたから私は今の私にもなれた。
改めて言おう。
私はニコ。
自分の理想に思うがまま突き進む者だ。
私は...力を受け入れる。
今度は私が助ける番だ。
ーーーーーーーーーー
[やめろおおおおーーーッ!!!!]
ギウスティージアから膨大な魔力が溢れ、ニコに纏ってゆく。ギウスからは輝かしい力が溢れていて、まるで本来持つべき者に呼応するかのように纏われていく。
所詮コイツには相応しくない力って事だな。
さて、もうそろそろかな。魔力変形は思考力を沢山使ってこそ効果を発揮出来る魔法だから、頭が疲れるんだよなぁ。
これが低負担高画質な魔法だったらそれこそチートだっただろうけど...使える者限られるだろうし割と魔力のコスパが悪い。
帰ったら甘い物食うの確定だな。
...勿論、ニコと一緒に。
ぐらっ
「おお?」
[まずい...体が...我の肉体がぁっ!?]
「だから...お前のじゃねぇ!!」
ギウスを思いっきり蹴飛ばした。
「あ...神獣パワー足りたかな?」
いや...今私の意識が揺らいだって事はおそらくニコはこの精神、肉体の支配権を奪い返したって事かな。じゃあ...戻りますか!
...
「ぶはっ。」
目が覚めると闘技場。
向こうには私が蹴った背中を押さえるギウス。
[あああ...あと少しで...あと少しで...!!]
私達を睨みつけるギウス。
「そうでもないだろ、お前は私達を舐めてた時点で碌な未来無かっただろ。それも特にニコ、あの子の生きる未来を散々傷つけ邪魔をし、多くの人に迷惑では済まない事をしたお前にかける慈悲は...この場の誰も持っていない。」
[うるさい!!我を...誰だと思っている!]
「この場に及んでまだ言うか...こんな奴にニコが振り回されてたって思うと...腹が立つな。ま、安心しな。処刑人は私じゃない。」
[何...!?]
「それじゃ、未来に一歩進んだ力を見せてやれ。」
長年の痛みを...倍返ししろよ!
「頼んだぞ、ニコ!」
「ああ!」
その時は来た。
倒れていたニコから輝かしい光が放たれ、神々しい魔力に満ちてゆく。
立ち上がると身長が伸びてゆき、170cmはある。
髪と尻尾さらに伸び、白く美しい毛に。
装備はその力を纏い姿を変え、美しい。
「お待たせ、キジコ。」
「ああ、待ってたよ。ニコ。」
少し大人びた顔は笑っている、
綺麗な青い眼はさらに輝かしい。
ああ...なんて美しい姿だ。
とても綺麗で...立派な姿。
「どうやら上手くいったみたいよ。」
「あれが今世の...!」
「綺麗...。」
「クラル様...ラミ様..、ニコ様は...御立派になられました!!」
「良かった...良かった、ニコ!!」
目の前だからすごく伝わる!
今まで感じた事の無い、膨大で...優しく温かいこの魔力!!
これが...これが...神獣!!
[個体:ニコが神獣へと覚醒。]
[種族名:アドバンス・プラチナム・フェンリル ]
「ニコ・ランド・ウルフェン、今世の神獣として...ギウスティージア。貴様を倒す。」
神獣ニコ、いざ出陣。