第188話 皆の力
「邪悪め、神罰を与える...破邪の光よ!邪悪を滅せよ!!」
ギウスがそう言うと、空に魔法陣が浮かび上がる。魔法陣からは柱状の光が降り注ぐ。
「(竜騎士エリアのレーザーの方が怖かったな。)」
一本一本の威力は高いっぽいしそのレーザーも早い。
だがこのくらいは特訓前の私でも避けれる。
「ずいぶん生温い神罰だな、何がしたいんだ?」
するとギウスは手を翳す。
その瞬間、レーザーから枝状のレーザーが生えてこちらへ襲い掛かる。
「破邪の大樹よ、その一端を見せよ!!」
なるほど、そう言う技ね。
「空間衝撃波。」
スパルタ特訓で発動が早くなった空間衝撃波。
空間内は衝撃波で満たされ、空気中の魔力を乱す事ぐらい楽勝だ。
「な...破邪の力が...魔法陣が崩れた!?」
「何が破邪だ、邪悪にあっさり壊されてるじゃん。」
「ぐぅ...神之斬撃!!」
「っ!!」
予想通り、威力は激ヤバでも対処法は同じ。
「ギリギリまで迫って幻影回避で被弾ギリギリに回避、あとは瞬速撃!!」
「な...!?」
「化猫妖炎斬!!」
「ぐああっ!?」
へへんどうだ、手抜き状態のお前くらいなら魔身強化ちょっと使うだけで対抗出来る程度の実力まで成長したのよ!
さぁ、かかってこい!!!
ーーーーーーーーーー
と、奮い立ったのはいいが。
「あり得ない...あり得ない!!!」
と、私に斬られた現実を信じられないのか、頭を抱え苦悩している。やめろ、ニコの脳を無駄なリソースを注ぎ込むな。
「あり得ない!貴様は2日前、これ程の力は無かったはずだ!」
「おいおい始まったばかりでそれ言う奴初めて見たぞ!まぁ、簡単に言えば皆んなの手を借りただけだよ。」
ギウスは真成無双剣を横一振り。
私は焦らず、ほんの少しの動作でそれを避ける。
僅かだが斬る時の動作にニコらしさが残っていた。
「...骸積の手を借りたか!!」
「はぁ〜い!私達は神罰受けると聞いても残った猶予で何をしていいかなんて言われてないので、反撃の準備をしただけよー!」
「ふざけるな...神への懺悔を与える猶予を無駄にしやがって...!!」
「あーあー神様がそんな口調荒げちゃって。」
ギウスの怒りが増す。
これは桃花様達と立てた作戦の一つ。
ギウスを怒り状態にしておく事だ。
攻撃の威力は高くなるだろうけど冷静さを少しでも欠けさせる。
何するかわからないハイリスクがあるとは言え、神でもずっと冷静を保つ訳が無い。その上ニコの体に未だ依存している以上純粋な神とはどこか劣るだろうし何か秘密があるはずだ。
「余所見は良く無いよ。」
「っ!!」
「ペネトレーザ!!」
「くだらん真似を、はあっ!!!」
「っ...がぁ!?」
しかし相手が仮にも神(だと思う)。
今の速さを捉えられず、威力に耐えきれなかった。
この戦いは少しでもミスったら即ゲームオーバーだ。どんな手を使っても私は勝たなくてはならない。
これ以上ミスるわけにはいかない。
「...思ったより痛くは無かったな。この前の方がずっと痛かった気がするけどなぁ。」
「おいキジコ、そりゃあん時のお前がすでに大怪我した状態だったからだろうが。」
「あーそっか、じゃあこの神様って意外と大した事ないのかなぁ。」
とにかく、リスクは跳ね上がるとしても奴の冷静さを欠如させる。今のままじゃニコを助ける隙がない。
「...破邪の地の怒り、大地之怒衝撃!!」
「空間衝撃波!!」
ギウスが地面を思い切り踏むと、地面に亀裂が入り魔力エネルギーが吹き出してこちらへ迫る。
とりあえず空間衝撃波で破壊。
「邪悪があああーーーーー!!!!」
「久遠、行くよ!!」
ギウスは真成無双剣で斬りにかかって来た。ようやく剣の勝負に持ち込むなら私もだ。
「抜刀・真剣一閃!!」
「だりゃああああ!!!」
私は特訓で得た技術を、
ギウスは力任せに、刃を振った。
私も気づけば魔身強化を最大にして戦っている。
しかし不撓不屈はとっておきだ、まだ使う時じゃない。
私とギウスは刃を打ち合い始めた。
「くたばりやがれ!!」
魔力を纏った絶対やばい一撃。
「はああっ!!」
「おっと!?」
それでも避けるのが大変。
だが少しずつ剣の扱いが雑と言うか大振りになって来た。
「ああ...ああああ!!」
「そんな乱暴に剣を振ってこなくて...も!!」
「がはっ!?」
ギウスは力任せに剣を振いキジコを攻めるも、キジコはその内一発を受け流し腹部に肘攻撃一発お見舞いした。痛かろう。
「ぐぅぅ....なぜだ...なぜ我がこうも容易く劣勢など!」
「あんたと戦う為に対策してきたからな。結構キツイけどこうするのは当然だ。」
結構どころか凄くキツいしヒヤヒヤしている。
対策無しだったら即詰んでゲームオーバーか勝負が長引いていた。流石にこの作戦の要...不撓不屈は長期戦に向かないから、なんとしても短期決戦に持ち込まなくてはならないのだ。
「私だけの力で今ここに立ってる訳じゃないんだ。...さっさとニコを返してもらうぞ。」
「神に...神に...神に歯向かう邪悪が!!そんな浅知恵で我に対抗出来るなど思い上がるな!!!」
ギウスの白い髪が輝く。
...さぁここからは攻撃1発受けても生きていられるか怪しいな。
「ああああ...どこまでコケにしやがって!!」
「そりゃ神罰が全然来ないからね。焦らす奴はいつだって碌でもない奴だぞ。」
「!!!!」
けど激る怒りはそのままどころか増大してくれていた。2日前の神々しさは微塵も感じない。
ギウスは叫ぶ。
「...本当に愚か、なんて愚かな世代だ!!邪悪を滅する所か成長をさせるだと!?...我はこの世界を正しく導く神だ!!それをなぜ理解しない!?」
桃花様は答えた。
「簡単よ、お前が気に入らないだけだもん。」
それを聞いた瞬間、ギウスは真成無双剣を振り上げ、膨大な魔力を収束させる。
どうやら本気で私を滅ぼす気らしい...いやそれは最初からか。
「もういい...、この肉体がどうなろうと関係ない!!神獣の肉体であるならば邪悪の一つは滅ぼしてみせろ、神の命令だ!!!」
「!!!」
今の言葉はかなり良い情報だ。
2日前からかなり怪しくは思っていたが、おそらく奴はニコの体を完全に乗っ取ったわけじゃ無い。
その上奴はいきなりデカい一撃を出そうとしている。
...可能性が見えた!!!
「耐えろよ私の体、不撓不屈。」
肉体にヒビが入り、膨大な力が溢れ出す。
「邪悪を滅せよおおおおお!!!!!」
「...重力比例攻撃!」
...
...
私は迫る刃の力を受け流し重力比例攻撃の負担を減らした。
そして、
奴がビックリ仰天の顔をするこの瞬間を待っていた、
怒り狂って周りの見えない神様の大きな隙を突ける、
懐に潜り込めるこの千載一遇のチャンスを!!
「ようやく、ここまで来た。」
「あ...あああああ!!!」
一気に冷静になったのか、ギウスは咄嗟に動く事すら出来なかった。勝負に於いて致命的なミスである。
「聞こえるかニコ。今そっちに行くからな。」
最大出力...魔力共有。
(...思ったより遅かったじゃん。)