第187話 反撃
「...大変だね、キジコちゃん。だんだんキジコちゃんを転生させた理由から遠ざかってるじゃん。」
ここはあの世のどこかの豪邸。
庭園に佇む男、名はディメン。
キジコを向こうの世界に転生させた神である。
「彼女が安寧を得る日は遠い様ですね、一段二段落で済みそうにもない世界ですね。」
現れた女性の名は冥。
現代の閻魔である。
「はぁ、見ていて飽きないどころかヒヤヒヤするよ...。なんでこう...トラブルに巻き込まれるのだろうね?」
「特に今は神の力を持つ存在に目を付けられてますからね、...はぁぁぁぁ。」
キジコの日々にヒヤヒヤ心配する二人。
「...さて、妙な話はもう一つある。」
「!...花之宮菫さんですね。」
花之宮菫...キジコ以外の異世界転生者である。
現在はヴィオレットという名前を持つ。
「...結論から言って、私があの子を転生させた事はないね。」
「ええ。同時に、死亡した記録もありません。」
「でもあの子は間違いなくキジコちゃんと同じ世界から来た存在であり、花之宮菫である。であれば何が起こっているんだ...?」
「現世からによると花之宮菫さんは数年前から消息不明。通勤途中の彼女を写した町の監視カメラが謎のエラーで一瞬映像が途絶えた瞬間に、なんの痕跡も残さず消えたそうです。」
「謎のエラーとその瞬間に消えた...ねぇ。あまりにも妙じゃない?」
「はい。...また現世調査する必要がありますね。」
「都合のいい時に調査をしよう。今は手が離せそうにない。」
「わかったわ。」
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翌日...神罰とか言うのが行われる日。
「準備はいいな、キジコ。」
「うん、...色々ありがとうね。」
「よせ、しんみりするような事言うな。」
「じゃあ、スパルタ畜生二度とごめんだ。」
「いや自重しろよ。」
今私達がいるのは闘王闘技の会場。
ニコを奪われた悔やみの地。
「ご主人様...待っています。」
「師匠、絶対勝つって信じてます。」
「大丈夫だよ。」
主人の無事を祈る。
「キジコさん、頼む。」
「お願い...!」
「任せとけ!」
帰りを待つ者。
「まぁ、お前なら大丈夫だ。」
「ヴァルケオ、本当は凄く心配な癖に...。キジコちゃん、頑張ってね。」
「ヴァルケオ、素直じゃないんだから...。キジコ、応援してるよ。」
「お前ら....!」
「あっはは。」
家族を信じる者。
「んじゃ、俺たちは特別観覧席に行く。無様晒すんじゃないぞ?」
「よく見える所から観ていますからね。」
「無事を祈っております。」
「キジコちゃん、奴をぶっ飛ばしてね!」」
「はい!」
仲間を見送る者。
ようやくこの日が来た。
キジコ選手の入場でーす。
私は闘技場にやって来た。
「おい愚かな神さんよ!お前が殺したい邪悪様はここだよ!言ってた2日後は今日だぞー!さっさと出てこーい!!」
その瞬間、空が曇り禍々しい圧力が広がる。
闘技場の真上の雲に一筋の光が見え、無駄に神々しく降りて来た。
そしてそいつは宙に浮かび、私を見下す。
「...どこまで私の腹を立たせる気だ、邪悪よ!!」
観覧席にいる皆の魔力が妙な流れになる。
早速拘束使いやがったな。
「そりゃこっちのセリフだ。ニコの体が無きゃ碌な事も出来ない神様の都合に付き合わされてるこっちの身にもなれ。」
「黙れ!!お前が悪いのだ、お前がこの世に存在しているのが悪いのだ!!神の加護を持たぬ邪悪めが!!」
「はいはい、邪悪邪悪本当うるさい奴だ。」
「なんだと....!?」
「そんなじゃーじゃーじゃーじゃーうるさい神さんは嫌だなって意味だよ。」
「貴様ぁああああ!!!」
あっという間にすぐ沸点に到達したギウス。
どこの家電製品かな。
「...今より我は貴様に神罰を与える!!地獄にすら到達はさせん、無となり永遠に後悔させてくれるわ!!」
「ならさっさと来いよ!待ちくたびれた!!」
「ほざけ!!」
ギウスは一直線にキジコに殴りかかる。
「っ!」
「...避けたか。だが次は無い!!」
「よっと。」
「ぁっ!?」
キジコは避けた。
...ちょっとギリギリだが。
「はああ!!」
「ふんっ!!」
「アガッ!?」
キジコは隙を狙い、一発食らわせる。
「な..な...邪悪が...我を殴った!?触れただと!?」
「そんな事でそこまで驚くかな?」
ギウスは殴られた肩を見ながら大きく焦り怒りに満ちる。
「おのれ...おのれおのれ....!!」
ギウスが空に手を上げると、
恐ろしい見た目の真成無双剣が現れる。
「私をボコった時はもっと強かったはずだぞ!出さないってのもいいよ。」
「ああそうか!そんなに神罰を望むなら見せてやるよ!!」
ギウスは力を解放する。
その禍々しい力に地が揺れる。
「行くよ久遠、ニコを助けるよ!」
さぁ、ニコを返してもらうぞ!