第183話 加護
「...。」
気がつけば朝。
...良く眠る事は出来なかった。
悔しい気持ちがずっと離れていないから、思うように休む事が出来なかった。...情けないな。
コンコンコンッ...
「...おはようございます、ご主人様。」
ルザーナが寝室にやってきた。
「おはよ、ルザーナ。」
「朝食出来ましたよ。...悔しい気持ちはわかりますが、その気持ちに飲まれてばかりでは前に進みません。何事も心機一転、今はただ前に進みましょう。」
「...そうだね。」
私は大きくあくびをし、着替え、ルザーナと大広間へ向かう。
ーーーーー
「...ご馳走様。」
今日は一段と優しい味だった。
「皆さん集まってるね?」
「それじゃ早速だが緊急会議としよう。俺達には時間が無い。」
「ギウスの言う神罰は明日だ。立ち止まってる場合じゃない。」
大広間には朱斗達、ジンとハルさん、魔法を用いてリモート参加中の各国王様達、そして私達。
「議題はもちろんギウスティージアとニコについてだ。」
皆が頷く。
「まず、あれからギウスについてどの程度情報が各地に回ったか、説明をお願いします。」
「では、ムート王国ではすでにその情報は首都や周辺領域に広がっています。なにせ神獣ですからね。」
「サジェス帝国も同じだ。いや...あの時ギウスは世界中にあの声を広げていたのがわかった。その時ギウスの声を聴いた者達まで、身動きが取れなかったと聞いた。」
二人の出した情報にエルフ女王エルタナ、竜人国王エノガードも頷く。
『私達各地の精霊もあの瞬間、恐れの感情で震えてた。私達精霊は意外と敏感でしてね、あれに世界を任せればお先真っ暗どころかドス黒いわ。』
精霊女王ガイストは少し青ざめた顔でそう語った。
「現時点で奴をを崇拝する組織や人物がいると言う情報は出ていない、...だがこれは時間の問題であるかもしれないな。そうならぬよう策を打たねばな...。」
「まぁ大まかまとめると、すでにこの情報は全国各地広まり最悪の事態を起こす可能性が高い....そう言う事でいい?」
「うん、一般人を愛しき神の子とか言ってるくせに私をその観客ごとぶっ飛ばそうとした奴を崇拝する趣味はない。」
現在の各地の情報交換終了。
「さて...本題と行こう。...ニコをどう助ける?」
「それに加えて奴は神罰を与えると言ったが、どこでするかも言っていない。」
「さらにもう一つ、どうやって倒すか。」
そう、それが大きな問題だ。
「ギウスは神の加護ってのを持ってる人にあの拘束を行う。それがどれだけ強いやつであろうが、桃花様であっても。」
「言い換えれば一番対抗出来るのはキジコちゃん。異世界から来た魂だからギウスの言う神の加護を持っていない、それ故にあの拘束を受ける事が無い。」
ギウスにとって最も憎い敵である私が、拘束を受けない...現時点人類にとって大きな希望とも言える状況。
はっきり言ってプレッシャーです。
「それともう一つ、ニコを助ける方法なんだけど...希望はある。」
「...!!、本当か、キジコ様!!!」
ジンが焦り顔で私に言う。
「ああ、魔力共有だ。アレで何度かニコの精神世界的なのを見たことがある。んで、そこを乗っ取ろうとした謎の何か...つまり当時のギウスの様子も見た。」
「!!」
「もしかすれば...ニコはそこにいるかもしれない。もしくは魔力共有でニコの魂をとにかく探せば見つけられるかもしれない。...あくまでこれは希望であって完璧な策とかそう言うのではない。その上相手は歪んでも神獣、私を遥かに上回る強さだ。何の対抗策無しに根性で突っ込んでも死ぬだけだ。」
「...あの子の親としてなら確実なのを選ぶべきだろう、だが。世の中そんな美味しい話も無いし、無駄に探し時間食って大勢の人をさらなる危機に落とすくらいなら...貴方の希望を選びたい。俺もニコに情けないこ姿を晒したくもないしニコに悲しいものを残すわけにはいかない。」
「...皆様、私の案に異論は?」
『一ついいかしら。その案だとキジコ様が一人で戦わなければいけなのですよね。...いくら私達が動けないとしてもそれは無茶というものです。』
「...はい、ですが...。」
『何のための会議だと思っているのですか、私も無力ではないのですから。...このように。』
「...っ!!」
なんか、不思議な力が湧いてきた。
「これは...!?」
『私の加護....精霊女王の加護よ。効果が自動治療効果よ、せめてこれくらいはね?』
確か加護は下位の者が上位の者から与えられるお守りみたいなのだっけな...?
ヴァルケオ以来だな、加護もらうの。
あの日が懐かしいな...色々話したもんだ。
魔力無しで生きるのは本当に自殺そのものな旅、
この世界でちゃんとしたスローライフを目指してみせる事を決めたり、
私が神獣の称号を持っている事をようやく知ったり...おっと昔話を思い出してる場合じゃないか。
「しっかし... この世界の秩序を守る4種族の存在の内一つがまた牙を剥くとは...これはこれで世も末だな...。」
「痛い正論だな。」
「4大種族...あ、そういえば昔ヴァルケオから聞いたことが...。」
「4大種族... 秩序之天秤、神獣、位階、そして...時界者。」
「時界者...?」
「その話はまた話すわキジコちゃん。それよりも、キジコちゃんが主力である以上、まだやる事があるわ。」
「?」
「それっ。」
[ 残夢の加護を得ました。 ]
[効果:対象に与える攻撃の威力が1.5倍。]
「なんかすごい加護来たんだけど!?」
「いいでしょこれ。向こうが加護で攻めて来るなら私達も加護で攻める。生憎私達は当日は足手まとい、だから今出来る事を私達は尽くすわ。」
...桃花様の声にはどこか悔しい響きがあった。
自ら動けず誰かに託す事しか出来ない、
そう思っているのだろう。
...そんな事はない。
「わかった。今できる最善を取ろう。んで残りの時間は体を慣らす!他に作戦があるならそっちで考えていて欲しい。」
「よし来た。ならばさっさと済ませるぞ。」
朱斗と蒼鈴、翠柳がやってきた。
「...ちょい待った、翠柳さん...私より強いっけ。」
「どうだろうね、でも加護は下位の者が上位の者に与える際は、上位の者はそれに許可さえすれば受け入れられるよ。」
「そうなの!?」
[ 玲瓏の加護を得ました。 ]
[効果:自身の移動速度1.3倍。]
[ 暁闇の加護を得ました。 ]
[効果:隠密系スキル効果1.4倍。]
[ 泰然の加護を得ました。]
[効果:射撃時の集中力増加。]
「おお...これは。」
「まだあるよ、キジコ!」
「え?」
急に現れたのはヴァルケオ、テューニ、マウリ、エレムス、イグニール、そして椿姫。
「...聖獣が揃いに揃って...。」
「キジコちゃん何よその反応!ぶー!!」
「僕らの加護もどうか受け取ってほしい。」
「!!」
「俺らも神の加護の影響を受けていた。なら出来る事をするのは当然だ。」
「というわけでさっさとやるよ!」
「急だなぁ!?...あーもうどんとこい!」
加護いっぱい。