第181話 神獣の意思
「.........!?!?...」
「嘘...スアちゃん...ニコちゃん!!!!」
「あ...あああ....!!?」
それは突然だった。
スアとニコの闘いに決着が着くというその時。
二人は....貫かれた。
さっきまでいなかったはずの人型の白い光。
血に濡れた腕。
魔力粒子化...消滅し始めるスア。
倒れ、力尽きるニコ....
気がつけば私とケイは医務室の壁を壊し、
荒々しく闘技場へ飛び出し、
白い光を攻撃していた。
「あ゛あ゛あ゛....あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
[ようやく現れたか、邪悪よ。]
[ようやく滅する時が来た。]
[ようやく死を与える日が来た。]
[ようやく暗き世界に光を差し込める。]
白い光の何かは魔力防壁を張って身を守っている。
[一人仕留めた。]
[邪悪の一端仕留めた。]
[スアという邪精霊仕留めた。]
「黙れ!!!黙れ、黙れ!!!」
「お前が、スアを、ニコを!!!!」
白い光は腕を引き抜き、私とケイに反撃。
会場は静まり返る。
何が起こっているのかを理解できていないからだ。
「スア...ニコ...高治療...、」
[させない、邪悪が。]
「...っ!?」
一瞬だった。
私は斬られた。
吹っ飛ばされていた。
『..じ...ある..じ...に...げて...。』
「スア...スアあああああああ!!!」
[耳障りだ。]
[早く滅するべきか。]
ケイも既にやられた。
私も動けない。
...スアが....
スアが....ああああああああああああ!!!
[この世に光を与えられんこと。]
ザシュッ...
切り落とされた白い光の腕。
「随分...ふざけた真似してくれたな...あん?」
[!!]
「来るのが遅れた...これは一生の恥としよう。」
[なぜ邪魔をする、神獣の子孫よ。]
現れたのは激怒した朱斗と蒼鈴、そして...
「当たり前よ....こんなの目にして大人しくいられるか、曲者が!!!」
[...骸積、何のつもりだ。]
[貴様は高貴なる神獣の血を引き、]
[位階の三であろう者がなぜ我の邪魔をする。]
[理解が出来ない。]
[邪悪をなぜ肯定する。]
「邪悪と言ったな。」
[!]
桃花様の姿だった。
その姿は今まで見たことのない、
...怒っているのだ。
その拳は怒りに染まっていた。
ダメだ...私も立ち上がれ...
高治療....!!
「みん...な...。」
「無理するな、スアの消滅はなんとか食い止めた。」
「ニコ様も息があります、今できる治療も施した。」
[...余計な事を。]
「...!!!」
その一言に私もドス黒い感情に飲まれ始めた。
ドス黒い怒りに。
「...曲者、お前は何だ...何者だ。」
桃花様は怒りに満ちた目で白い光を睨む。
[我は神獣の意思。]
[この世界の光である神獣を選定する者なり。]
「神獣の意思だと...?」
その白い光は、自らを神獣の意思と名乗った。
[神獣の意思とは、]
[その各世代に於いて神獣を選定する、]
[神の魂なり。]
[器にふさわしき者に神獣の意思は、]
[神の魂をその者の魂と融合させる。]
...まさか。
「お前が...ずっと...ニコを蝕んでいた雑菌か....!!!」
[口に気をつけろ邪悪が。]
白い光は話を続ける。
[神獣とは各世代...100年に1体。]
[他に神獣にならんとする者がいれば、]
[戦わせる。]
[どちらが優れた存在であるかを。]
[選定するために。]
[どちらがこの世界を守るのにふさわしいかを。]
[選ぶために。]
桃花様は何かに気づく。
「...大昔から神獣候補同士が争ってたのはやはりそういう事、んで。お前がそうさせたのか...神獣候補同士を殺し合わせるように!!」
[そうだ。]
[だが少し違う。]
[神獣の意思は神の魂。]
[ふさわしき者の魂と融合する際に。]
[その意思も融合される。]
[我は今世の神獣の意思。]
「...。」
[そして今世の神獣は何者もふさわしくない。]
[ニコは邪悪と闘う事をずっと拒んでいた。]
[それではこの世界は救えない。]
[我はニコの心を壊しても神獣にさせようとした。]
[なのになぜ邪魔をする、邪悪よ。]
「...あの暴走はそういう事か...そのせいでニコは!!」
私の治らない怒りが叫ぶ。
「なぜキジコちゃんを邪悪と呼ぶ。答えろ。」
[...いいだろう。]
[どうせ殺す者ではあるが、]
[神の慈悲をくれてやろう。]
白い光は宙へ手を広げ、余裕の態度で話す。
[その者はこの世界の魂ではない。]
[この世界の異物なり。]
「異世界転生者だからな...それがどうした。」
[この世界の生きとし生ける者の魂は、]
[神の加護を持つ。]
[神の加護はこの世界で生きる権利そのものなり。]
[だが貴様は神の加護を持っていない。]
[なぜならこの世界で生まれた訳ではないからだ。]
[そんな異物を生かす理由などない。]
[異物は世界を乱す邪悪なり。]
[なのに異物はこともあろうに神獣候補の称号を持った。]
[そんな存在を神獣にさせない。]
[だから我は貴様に対抗を、]
[他の候補へ与える事にした。]
[神獣という力を!!]
それが...ニコのあの姿、あの状態...。
[なのに!!なぜコイツは貴様を!!]
[友と呼ぶ!!?]
[理解不能、]
[理解が出来ん!!]
[異物は滅ぼすべきだ!!]
[我は考えた。]
[ならば我こそがこの世界の光をなる。]
[この世界を未来永劫正しく導くために!]
[もはや神獣候補の意思や生き方などどうでもいい。]
「何を...!!?」
[せめて肉体はもらおう。]
「させるか!!!」
私は飛び出すも弾かれる。
[残念だよニコ、君の魂はもう必要ない。]
凄まじい威圧が発せられる。
その瞬間、ニコの肉体が粒子化、
白い光に取り込まれてしまった。
「ニコが...ニコがああ!!!」
白い光は膨大な魔力を溢れさせ、形を変えた。
「...我は神獣、ギウスティージア。今より世界を正しく導く者なり。」




