第176話 キジコvsケイ⑥
妖しく燃える炎、
淡く輝く月の光、
肉体が壊れようとも進む猫、
その覚悟に応え進む狐、
異なる二人は同じ意思を持っていた。
「「私が勝つ!!!」」
両者は全ての力を込め、乱撃を繰り出す。
その一撃一撃に込められているのは勝利への欲と強くなりたいという意思。
負けられない。
己の願いのために負けられない。
そんな、どこかストレートな意思が二人を燃え上がらせた。
「「うおおおあああああああ!!!!」」
勝つのは私だ、
先に進むのは私だ、
こんな所で止まる私じゃない、
どちらの道を進んでも止まる私じゃない、
でも勝ってみせる、
絶対勝つ、
1段戦に進むのは私だ。
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「私が勝つ!!!」
ケイの闘志は頂点、それ以上である。
体の限界なんて振り切り、心からその肉体を突き動かす。
彼女の輝きは更に増してゆく。負けたくない意思と勝利への欲、友と全力で闘う意思、強くなりたいと言う永遠の欲、後ろへ一歩も下がる気の無い彼女の心は尽きる事の無き炎で燃え盛っていた。
キジコの攻撃が少しずつ押され、
ケイの攻撃がキジコを徐々に押してゆく。
「やはり、限界が、先に来た、っすね!!」
「...!!!」
...だが彼女は勝利を確信しない。
キジコはそう簡単に負けるような奴じゃないから、
まだ終わる訳がないから、
友だから、そんな事ぐらいわかるのだ。
[覚醒ポイントが1、上昇しました。]
[肉体の崩壊が始まっております。]
[これ以上の戦闘は危険です。]
[...あなたが死んでしまいます!!!]
キジコの体のあちこちに魔力で光るヒビが入っている。闘いが激しくなりそのヒビは広がっている。
[多趣味]というスキル入手量の限界がない称号と、限界のない力を抑えるため...スキルを一定以上強化させないために存在するバッドステータススキル[極められぬ者]、
だがキジコの求める強さと意思の結果、もはやその制御を外れ、膨大な魔力が肉体を崩壊させ始めたのだ。
統合スキルの無限の姿を、制御しきることが出来なかったのである。
(...ごめん、スズネさん。私にも色々あるから止まれないの。ここで立ち止まる訳にはいかないんだ...まだ闘わせてもらうよ、闘いたい奴がまだいるから、助けたい奴がいるから!!)
「!!、魔力が急に...、」
「うおおおあああーーーーっ!!!」
死を恐れぬその鋭い目、
ケイは思った。
「(...楽しかったっす!)」
キジコの拳がケイを地面に叩きつけた。
「...私の勝ちだ。」
「け、ケイ選手、戦闘不能!勝者はキジコ様だー!!!」
...ヒビは未だ残り、魔力を放出している。
キジコは観覧席にいるニコとスアを見てフッと笑う。
「...待ってるよ。」
ただその一言を残しキジコは倒れた。
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「馬鹿!!こんなになるまで闘う事はないだろ、馬鹿、大馬鹿ァ!!」
「...ごめん...ニコ...イタタっ。」
ケイとの闘いを終え3時間が経過した。
その間ずっと心臓止まるんじゃないかってレベルで昏睡してました。ごめんなさい。
体のあちこちにあったヒビは朱斗と蒼鈴が顔を真っ青にさせながら修復したらしい。本当にごめんなさい。
スキル超耐久と超体力、疲労回復効果上昇がなければ最悪死んでた。ごめんなさいごめんなさい。
んで起きてすぐの現在、ニコにガミガミ怒られてます。可愛い。ごめんなさい。
「キジちゃん人気者っすね〜。」
「貴方も貴方です!!」
「ひゃい!!?」
「キジコをここまでするような強さってなんなのですか!?どんだけ友情深いんですかぁ!?下手すればどうなっていたかガミガミ...。」
「...こりゃ長くなるっすね。」
「ああ。」
「そこ、わかってるの!?」
「「へい!!」」
この後午後に始まる2段第二回戦始まる1時間くらい前までみっちり怒られた。