第169話 一方男の湯
『はぁ....。』
女子7人が温泉楽しんでる中、1人ゆったり温泉に浸かる精霊リーデン。騒がしいグループに無理矢理連れられ疲れた模様。
当然依代など全部更衣室に置いてきており今の彼は精霊としての姿で湯船にいる。
(この姿...まともに現すのいつぶりだろうな。もしかしたら初めてかもしれねぇな...。)
「よ、リーデン。」
『あ?...リーツの長共じゃねぇか。それに加えて誰だそのにーちゃんは?』
「初めまして、私は翠柳と申します。」
「俺らの親父だ。」
『親父だと...!?なるほど、確かに似てるわ。』
急に誰か来たかと思えば、
やってきたのは朱斗、蒼鈴、そして翠柳の3人。
選手専用貸切じゃねぇのか?
いや待て、貸切させた奴の身内じゃねぇか、
ずっる。
3人は体を洗った後こっちに来た。
「そういうお前のその姿はなんだ?黒髪にまつ毛長め、まぁまぁ女寄りの顔立ちの少年って。」
「向こうの精霊より背はあるな。140cmはあるか?」
『知るか、この姿まともに現した事無いからな。そもそも俺は合成技術による人工精霊だ、元の奴らがイケてる少年少女精霊だったんだろうよ。』
『いやーそれほどでもー!』
「おわっ、なんか出てきた..!」
俺のあるべき姿はあのゴーレムだ。
この姿は俺じゃない、
犠牲になった精霊達が集合した結晶体とも言える姿だ。
『ところでなんのようだ。わざわざこっちに来るのは。』
「ただ温泉に来ても話相手いた方が面白いだろ。あまりこう言う機会もないから話すことは話そうぜ。」
「まぁ何話すかは全くのノープランですけどね。」
「いいじゃないか、計画ばかりの会話はつまらないものだよ。素で話してこそ会話ってもんだ。」
『ケッ、面白い言うじゃねぇかおっさん。』
見た目はおっさんじゃなくてあんちゃんなんだけどなこの人。ややこし。
「それじゃ私から質問する。お前は好きな食べ物とかはなんだ。」
「ちびっ子か。」
『...肉と野菜多めのサンドだな。』(サンドイッチ)
「答えた、しかも意外と健康的だな!?」
『健康管理しなきゃ生きるもくそもねぇだろ。まぁ人間と違って栄養で背は伸びねぇけどな。』
精霊は魔力量で成長するからな、
牛乳や小魚食ってもそれほど意味はない、
いやそもそも精霊に骨とかはない。
だってほぼ魔力で構成された肉体だからな、
見た目は人間寄りでも内面は違うってことだ。
「次は朱斗だぞ。」
「え...。じゃあ、最近はまった事とかってあるのか?」
『あん?...はまった事ねぇ、無いな。考えたこともないからな。』
「そうか...。」
「ちなみに私は最近裁縫とか始めたね、桃花がたまにやってるのを一緒にしてたらこっちも楽しくなってね、それから...。」
『幸せもんだな。』
そういや趣味とかそういうのは確かに考えたことがない。...キジコに聞いているかな、あいつ確か趣味が多かった筈だ。
『俺は戦う事がメインだからな、あまりそういうのは考えたこと無いんだわ。』
「昔の母上かな。」
「だね。」
『?、そうなのか。』
「ああ、これは昔の話だけど...私が桃花と初めて会った時の話だ。仕事が遅くなって夜に村に帰ってる私は見てしまったんだ、血塗れの魔物の死体の山の頂点に立つ、血に染まった女性を。」
『ノロケの初手にしてはグロいぞ。』
「それでその女性はバランスを崩して地面に激突する寸前に私が助けた。放っておくのみアレだったし家に連れ帰ったんだ。その時には両親は亡くなっていたから私1人でなんとかしたよ。気がついて大丈夫かと聞いてみればちょっと焦りながら色々答えてたなぁ。桃花はその頃から戦う事しか考えていなかったからちょっと怖かったけど、意外とちゃんとした女性だった。」
「それが親父と母上の出会いねぇ、わけわからん。」
「どう言う出会い方してんだ。」
「直球に言わないでくれ息子達よ。」
変な奴だな。
「まぁ、そんな感じで君もいつか今とは違う人生を送る事だってある。人の楽しみは一つだけじゃないんだ、その時その時で楽しむといいさ。」
『まぁ、心に留めておくか。』
ーーーーーーーーーー
俺達は風呂を出てジュースを飲む。
一気に飲みたい気持ちはあるがそれやると頭が痛くなるらしい。
やるとしたら勢い任せに馬鹿やらかす奴だろう。
「3人とも、こっちに来るといい。」
「なんだ?...お、的当てか。」
そこにあったのは的と弓矢。
見た感じ的に当ててポイント稼ぎ、
ポイントに合わせて商品ゲットってやつだな。
「せっかくだしやっていこう。4人お願いします。」
翠柳は4人分の金を払った。
「では私から行きましょう。」
最初は蒼鈴から。
矢は1人5本。
ポイントは[外側→1〜10←内側]って感じだ。
「ふんっ。」
「8点、7点、9点、6点、10点で40点!こちらをどうぞ!」
店員は蒼鈴にお菓子の大量詰め合わせを持ってきた。
「蒼鈴は上手だなぁ。」
「じゃあ次は俺だ、せいっ。」
「7点、6点、8点、6点、8点で35点!こちらをどうぞ!」
店員はなんかの生き物図鑑持ってきた。
「これは...最近出版された図鑑だな。まぁ持ってないし得はしたかもな。」
「じゃあ次はリーデン君だね。」
『リーデン君...まぁ気にしないでおこう。』
弓矢か、使い方はわからないけどやるだけやってみるか。
『リーデン、ほんの少し角度上げた方がいいよ!』
『そうか...こうか!』
7点に刺さった。
『おおー!』
『なんとなくわかってきた。そりゃっ。』
「7点、7点、5点、8点、6点で33点!こちらをどうぞ!」
さっきとは違う図鑑もらった。
植物関連か?
まぁ、暇つぶしに見てみるのも悪く無いな。
「みんな上手に狙うなぁ。さ、私も。」
「いけんのか、親父?」
「失敗しそう。」
「あっはは、大丈夫だよ。見ていなさい。」
翠柳は呼吸を整えると...
ザシュッ
「じゅ..10点、10点、10点、10点、10点...!?」
「「『!!?』」」
「うん、私もまだまだ腕は大丈夫そうだな!」
「す、すげぇ...。」
「こちら...景品です!」
店員は何かのチケットを渡す。
「親父、それはなんだ?」
「次にこの温泉来た時に入浴料と食事料がタダになるチケット!」
「はあ!?」
『すごいの当てて来たな...。』
「まぁでもこれ一枚につき2人までなんだよね。2人で使うといいさ。」
「いや、親父と母上で使えばいいじゃねぇか。」
「私はいいよ、桃花と一緒にいる事の方が私には幸せだからね。だから...。」
「ならもう一枚当てたらいいじゃないの。」
「え?」
ドガガガッ
「ま...また全部10点...!?」
「やほー!」
「桃花!」
「「母上!?」」
おいおい一家揃ったぞ。
「こら桃花、お金払ったのかい?」
「ちゃんと払ったわよ翠!でもこれでみんなと温泉は行けるわね!」
「困った奥さんだよ...。」
「なによ、嬉しいくせにー!えい!」
「いたたっ..。」
「「『何見せられてんだこれ...。』」」
ーーーーー
「あれ、朱斗と蒼鈴、それに翠柳さんと桃花様も!」
「やっほーキジコちゃん!」
「...と、誰かなそこの少年?」
『やっぱり言うか...。』
俺は空間収納庫からゴーレムを取り出す。
「え...ああ!?リーデン!!?」
「驚いた...お前そんな顔立ちだったのか!?」
『そういえば見た事なかったな...。』
あーあ、また騒がしくなって来た。
ま、こう言う機会も悪くねぇか。
楽しかったしな。