第16話 落ちこぼれ
どうも、キジコです。
現在、帝国に向かうためレギスの森を離れヴェアートさんに軍の元に案内させてもらってます。
道中リンゴ食べたりお喋りしたりと平和でした。
天気も良いからこのご機嫌のままでいれると...
思った時期がありました。
「ヴルルル....。」
「キキキジコ様気をつけけけてくださいい。アイツは[ライト・キッカー・サラマンダー』ですすす。」
「落ち着け。」
私達の前に現れたのは赤い目と青い鱗の恐竜みたいな爬虫類魔物だった。
そしてヴェアートさんはどうやら爬虫類が苦手なようだ。
道中ちっちゃいトカゲが足元通り過ぎただけで
「ヒャアッ!!?」
というほど。
可愛い一面あるじゃん。
あのナントカサラマンダーは見た感じ恐竜映画で見たヴェロキラプトルって言う恐竜に似ている。
鱗は見た感じツヤツヤで綺麗だけど頭はどう見ても蛇やトカゲとかに似ている。
全身も手足あるけどある程度筋肉こそあってもゴツゴツしていない。
それどころか蛇のように美しいボディラインが形成されとる。
爬虫類好きってこういう所にも惹かれるのかな。
「シャアーー!!」
「ヒィ!!」
「...私が倒すわ。」
気が立ってるな。
怖がってるな。
シルトさん、これは大変になりそうです。
とりあえず魔法矢を放ってみた。
「ジャッ!」
おお、ジジイと違ってちゃんと避けるぞ。
面白い、良い勝負になるか...ん?
「ヴ..ヴルル..!」
あれ?息切らしてる?
おかしいな、そんなオーバーリアクションな事はしてないと思うが...?
「キキキジコ様、あのトカゲ、足に怪我がが。」
「トカゲ...。」
だがよくみてみればあのサラマンダー、右足に怪我ある。
なんかに引っ掻かれた跡のようだ。
「あのトカゲは本来群でで行動すぅ。引っ掻かれた跡からして群れからお、追い出されたのかもしれません。」
なるほど、群れから追い出され食糧や身の安全が中々確保できず焦ってるというか、危機的状況ゆえ気が立ってると言った所かな。
「ガアッ!!」
「のわ!?」
おぅわ!?火吹いてきた!!
サラマンダーの名がついてるだけあるか。
火を吹いてきた途端また息を切らしていた。
やはり弱っているようだ。
ちょっと可哀想に思えてきた。どうするか..。
「いや、助けてみるか。」
「ヒェエ!?」」
「なに、こちとら回復魔法は小治療だけ、それもレベル1。試してみる機会には良いと思う。」
「ええ!?」
私もヴァルケオ達にある意味助けられた身だから、なんというか放っておけない。
「シャアッ!!」
「ごめんね、たいあたり!」
「ジャッ!?」
案の定サラマンダーはもう倒れた。
よほどギリギリだったのだろう。
そして私はサラマンダーの元へ寄る。
「試してみるか、小治療!」
サラマンダーの傷がみるみる癒えていく。
しかし1だから回復速度遅いな。
「というわけでヴェアートさんも手伝って。」
「ヒャい!?」
いつまでビビってるんだ...。
「でも魔物ですよ!?」
「スキル面の経験値が足りないんだ。参考として治療使える?」
「つ、使えます..。」
「精霊水が無い環境で回復系の魔法は重要だからできれば早くレベル上げたいんだ。」
「わ、わかりました、治療!」
おお、こっちのよりも断然傷の治りが早い!
こうして、サラマンダーの傷は治ったが、
「ヴル...。」
落ち着いたみたいではあるが、
襲っても来なければ逃げもしない。
「お腹が空いているのでしょうか..。」
「爬虫類だから..なんかの肉かな..?」
「いえ、この生物は果物も食べます。リンゴとか。」
「リンゴ食うの!!?」
リンゴはさっきもう2個取ってヴェアートに持ってもらってた。
その際リンゴがなんかの魔法陣の中に消えビックリしたが曰く、空間収納というらしい。
ゲームでいう所のアイテムボックスや見た目と違ってえげつないくらい色々何か入ってるカバンとかそんなのかな。
「念力で浮かして..これ食うか?」
「シャ...?」
「うーむ切った方が食べやすいかn...
バクッ!!
「「わあ!?」」
いきなり丸ごと被りついてきた。
よほどお腹減ってたのかな。
「こっちも食べていいぞ。」
「シャ!!」
サラマンダーはすでに1個目を食べ終わり、2個目も食べた。
「...群で生きる生物である以上、一個体でできる事は限られ、各々の行動が重要となります。そのため足を引っ張る個体は群れからすれば邪魔者。おそらくこの魔物は...いわゆる落ちこぼれであったのかも知れません。」
「だから追い出されたのか...。」
人の社会と同じだ。
いらないものは捨てられる。
役に立たない奴は切られる。
自然も同じだ。
強い奴は生きて弱い奴は死ぬ。
...でも目の前の救いたい命を救えるなら、
私は救う。
「お前、ついて来ないか?」
「ヴル?」
「ええ!?」
ヴェアートはそうなるわな。
「治療魔法の練習台にしたんだ。責任取って私の仲間にしようと思うの。」
「え..いや、それは別に構わないんですが..え?」
流石に戸惑わせたか。
というかヴェアートは意外と素で驚くと
「ふえぇ〜。」
とかいうパターンあるかもな..。
「この体まぁまぁ強い魔物の体になったけど肉体年齢そのものがまだ若過ぎるから体力ないんだよ。だから時折乗せてもらおうかなと。」
「な、なるほど。」
〜ちなみに〜
そもそも猫自体、瞬発力に特化していて持久力は少ない。
「ヴルル。」
「特に敵意もないみたいだし、いいんだな?」
「ヴル!」
あれ、意外と言葉通じる。
思えば私もなんで異世界の言葉わかるんだ?
「今更だが普通の魔物って言葉わかるのかな?」
「え?」
「?」
「キジコ様は念話の仕組みは知らないのでしょうか?」
「知らない、考えてもなかったし。」
「ふーむ、では歩きながら説明しますね。」
そうして新たな仲間を加え、再び進み出した。
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サジェス帝国:城内王の間にて
「お忙しい中、突然のお願いを承認してくださりありがとうございます、帝王様。」
「うむ、今回の神獣の資格を持つ魔物に関しての意見だったな、ゲトーよ。」
帝王の前に跪いているのはゲトーという男は帝国軍の
副総隊長にあたる人物。現在戦争にて帝国城の守護として任命されている。
「はい、恐れながら申し上げます。
現在こちらへ向かっている神獣の資格を持つ魔物は兵にこの国へ案内される予定となっていますが..。」
「それがどうした。」
「現在帝国内にて少しずつではあるのですが、神獣という存在は平穏を脅かす魔物だという噂が広まっており、いくら帝王様の命令で兵達が案内されたとしても何者かがその魔物を狙うかも知れません。」
「..、そうか。あの者はこの俺自身が直接この目で見ておきたい。なんとしても無事に案内させなければならない。」
「そこでこの提案なのですが、
この私や信用できる部下、兵を動員してその役目を負いたいと思います。」
「ほぅ、」
「帝王様、どうかお願いします。」
「うむわかった。案内はなるべく人の目に着かないよう頼む。」
「御意、ありがとうございます!」
そうしてゲトーは準備をするため王の間から出た。
(...神獣の資格を持つ魔物..、ヴェアートから聞いたときはとても驚いた。なんとしてもこの目で確かめねばならない。)
ヴェアート「慣れなきゃダメだ慣れなきゃダメd...
サラマンダー「ヴル!」
ヴェアート「ヒャア!?」
キジコ「やれやれ...。」