第154話 ルザーナvsケイ④
「私は...貴方に勝てないのですか...?」
ルザーナは震えた声でそう言う。
その目は焦り。
過去の迷いを断ち切り、情けない自身を捨てた彼女にとってそれは絶望。
結局自分は情けない自分のままだった。
どれだけ力を得ようとあの頃から変わっていなかった。
自分はその程度だった。
動きたい、
抗いたい、
戦いたい、
諦めたくない、
なのに体は思うように動かない。
重く鈍い動き、
まるで慣れない鎧を着ているかのように、
体が動いてくれない。
ケイに立ち向かおうとするほど体が動かない。
まるで人形のように崩れ倒れる。
気づけば体は人間態に戻っている。
...悔しい。
ーーーーーーーーーー
「...勝てるっすよ。」
...!?
その意外な言葉はルザーナを驚かせた。
「君の体は私に臆してしまっている。もう勝てない、これ以上は無理だって。でも君の意思...精神は動じていない。それは君自身が心から絶望しているわけじゃないから。」
「...!」
「それに私はこの力を解放してもダメージを受けている。君の抗いは無駄じゃない、同時に私は無敵じゃない。」
「..ぁ..。」
「君は強い、でも足元が疎かだ。君は迷いを捨てても自分を大切にしようとする気持ちが無い。己より上の力を前になんの希望も無しに攻めて普通無事で済むと思うのですか?防御を取れば私からのダメージはもっと抑えられていましたよ?なのに君は無理矢理抗っていた!誰かを守って自分を後回しにしていちゃ誰かが悲しむ、それでいいはずがない。もっと自分を守れ、自分を愛せ、自分を救え!」
「...。」
「君は君の心があったから迷いを断ち切れたんだろ!?なのに今になってまだ未熟だってか?甘いわ!!もっと自分を認めろ、もっと自分を信じろ!!」
「未熟さじゃなく、もっと自分の強さを見つめろ!!」
「君はもう弱くない!!それを忘れるな!!」
...ああそうだ。
そうだった。
あの時からそうだった。
迷いを断ち切ったのに、
誰かのために立ち向かい、全身ズタボロになって。
仲間を守るために今なお残る傷痕が付き、
命を捨て去る覚悟を持って、
...自分を後回しに何度も傷ついた。
やっぱり未熟だった。
誰かに言われて初めて気が付いたなんてやっぱり情けない。
またご主人様を悲しませようとして恥ずかしい。
そんな私を強いと言ってくれた。
私は何度も脅威に立ち向かった。
その度に傷つき、ご主人様を心配させた。
でもその度に誰かを守れた。
私にだって守れる強さはある。
そうだ、私は強い。
強いから今ここに立っている。
自分が自分の意思があったからここにいるんだ。
私は無力じゃない。
私は弱くない。
それが私だから、
ルザーナだから!
「私は...進む!」
ルザーナがケイにパンチ、
その威力はさっきとは違う。
力強い意思がこもっている。
「そう、君は進める。」
「私は無力じゃない、だから誰かを守る事が出来た。私は弱くない!」
ルザーナの動きがどんどん強く、的確になっている。
さっきとはまるで違う。
「改めて問おう、私はユイット=ケイル・イーク・ストルヤーナ。闘王の称号を得るため、キジちゃんと闘うためにここに立っている!なら君はなんだ!」
「私はルザーナ!自分の強さを知るため...他の強者をぶっ飛ばしに来た強き者だ!!!」
ルザーナに膨大な魔力が纏われる。
体に美しい青色の鱗が纏う。
すると顔の横、腕や脚に端が黒色の強靭な鱗、
もはや金属とも言えるような頑丈な鱗の鎧、
腰には翼のようなマント、
そして真紅のスカーフ。
「...!痺れて来たっすよ!!」
「ルザーナが...!!」
この時キジコに、アナウンスが流れていた。
[個体:ルザーナが個体進化をしました。]
[種族:ライト:キッカー:サラマンダーから]
[地竜:アズール・ブラウ・ハイドランに進化しました。]
「地竜...!?」
「な...!?地竜だと!!?」
「さぁ...来るっすよルザーナ!」
「はい!全力で...闘います!!」
迷いを断ち切る意思強さ、
強者に臆しない肉体強さ