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猫に転生しても私は多趣味!  作者: 亜土しゅうや
闘王闘技編
154/302

第148話 邪精霊リーデン

 俺の始まりは、

 殴りたいと言う気持ちからだった。


 物心というやつなのか、

 俺の記憶はそこから始まった。

 それ以前の記憶がないからな。


 そしてすぐ思った、

 殴りたい、誰かを殴りたいと。


 「やぁ、お目覚めかな?」


 ...変な奴が現れた。

 なんだろう、コイツは殴ってもいいって気がする。


 『殴らせろ。』

 「おやおや、第一声がそれとは。どうやら実験は成功のようだ、これ以上にないほど。...ああ殴らせないよ、君には僕に逆らえないよう術式を刻んであるから。」


 術式...一定時間、魔法効果を持続させる特殊な魔法技術。定期的に魔力を供給させる事で半永久的に持続が可能。

 ...あれ、なんでそんな事がわかるんだ。


 「おっと自己紹介がまだだった。僕はロティアート...いや、ティライターと今は呼んでくれ。君は僕が作り始めて成功した、人工的な邪精霊だ。」


 邪精霊、加虐的な思想に飲み込まれ正常な状態に戻れなくなった精霊。


 『俺が...邪精霊?』

 「ああそうさ、適当に捕まえた精霊にあれこれして生まれた負の感情を元にした精霊魔力を集め、手頃な精霊に記憶が吹っ飛ぶほど過剰で高濃度にその負の精霊魔力を投与するって実験だよ。いやぁ幸運だよ、たった5体目で成功したんだ。今までは術師が召喚した邪精霊からでも試したけどあいつら脆いし弱いから役に立たなかった。だから根本的に、精霊から色々試そうと思ってやってみたけど...ついに君が完成した!ああ今日はいい日だよ、そう思わないかい...ディストル様?」


 奴が振り向いた先を見た。

 ...背筋が凍るというやつなのか、俺は動けなかった。

 今思い出しても耐性が無きゃあんな化け物に勝てる訳がない。


 「そうだな...とりあえず君はこの体に乗り移ってもらうよ。」


 そう言って奴が持ってきたのは黒い人形。


 「君の依代として合うよう作ったゴーレムだよ、これがあれば君は思う存分...楽しく殴れる日々を送れるよ?」


 楽しく殴れる日々だと...?

 そう聞いた俺はすぐさま乗り移った。

 殴りたい感情が殆どの俺には嬉しい話だったからだ。


 液体とガラス越しで見えづらかったが、この体は変な頭と服を着ていた。


 「対象の状態把握とデータ収集が出来るフルフェイスメットと防護コート、あとはまぁ手駒に任せたけどちゃんとセンスはしっかりしていたようだね。」


 ...変な感じだがじきに慣れるだろう。

 

 「ついて来て、早速望みを叶えてあげるよ。」

 

 案内された場所は広い空間だった。

 辺りには血なのかよくわからない液体が飛び散った跡や暴れてついた大きな爪跡などが床や壁にあった。

 異様な匂いも感じた。


 「君に頼みたいのはね...掃除だよ。」

 『掃除だと...?』

 「そう、コイツらのね。」


 そいつが壁にあったスイッチを押すとシャッターが開き、異形の怪物が現れた。


 「掃除はついでだ。まずは君の力を見せてほしい。」


 ...なるほど、つまり殴ってもいいんだな。

 待ちくたびれたぞ、ああ楽しみだ。


 そこから俺は思う存分、思うがままに怪物を殴り、蹴り、貫いた。なぜだろうな、40体倒しても全然足りねぇ、もっと殴りたい。楽しい、俺は強い、まだ戦いたい、そう思って100体を超えた辺りで怪物の流れは止まった。


 『まだだ...まだ足りねぇぞおお!!』

 「大人しくしろって...まぁ君の力はよくわかった、素晴らしい。色々使えそうだ。」


 ヤツがそう言った瞬間、俺の意識が消えた。



 次目覚めるとまた何かの液体の中にいた。

 別に苦しいわけではないのだが、興醒めした。

 まだ足りねぇんだよ。


 「やぁ、昨日はありがとう。お陰で色々データが取れた、君の依代もそれに合わせて改良を施したさ。早速憑依するといいさ。」


 とりあえず依代に乗り移った。

 ...昨日よりは動きやすい。


 『...なんの目的だ?』

 「決まってるじゃないか、掃除だよ。あの出来損ない達はまだあるし、実験の過程で結構生み出されてしまうから使い道に困っていたんだ。そのために君を作った、まぁ時折他の事もやらせてあげるからとりあえず今日もよろしく!」


 俺はまた怪物たちを殴り殺し始めた。

 怪物達は俺の知らない記憶の中にある生物とは全然違う。今にも壊れそうなのに強いのだ。

 

 俺は俺のやりたい事をずっと繰り返した。


 1年経った頃だろうか、

 ヤツ...ここの実験場に知らない者達が現れた。


 「ようこそおいでくださいました、僕はティライター...あー、ロティアートって名前についてはもう知ってるんだっけな。」

 「ええ、我々がこの研究所に訪れたいというお願いを聞いてくださり誠に感謝します。つまらない物ですが...これを。」


 その男は金属のカバンを開けると、そこには紫色の結晶が収められていた。その横には資料と思われる紙の束、そして金だった。


 「おお...おおお!?これはフォーセ鉱石の結晶、それもこれほど大きいのを!!」

 「喜んでいただけたようで何よりです、我々は貴方の研究について強い興味を持っています。我々自身が進めている研究に貴方の研究は大きな力と結果を出すと確信しそれらを贈る事を決定しました。もし足りなければまだ増やせますが...。」

 「いえいえいえいえ!!なんて素晴らしい...このような研究、そして組み合わせがあるなんて!!」


 ヤツは狂気とも思えるくらいに喜んでいた。

 

 「ありがとうございます...[グラザム教授]!!早速ですが案内致しましょう。」

 

 そう言ってヤツはその教授と呼んだ男達を連れ研究所の奥へ行こうとした時だった。


 「すみません、あの人形は一体?」

 「ああ、彼の依代だ。来るがいい。」


 術式命令で俺は依代に移った。


 『...なんのようだ。』

 「おお、これは!」

 「人工的に生み出した邪精霊です、まだ研究段階ですが凄まじい力を持っていますよ!」


 そいつらは驚いていた、なんでも俺のように人の手で生み出された邪精霊はいないかららしい。


 その後はいつものようにゴミ共を掃除する。その光景を教授らが覗き見ていたのは気になったがすぐどうでもよくなった、その時の俺はいつものように目の前のゴミ共を殴る事しか考えていなかったからな。


 それからしばらくして教授達は帰って行った。


ーーーーー


 それからまた1年。

 その日は訪れた。


 「やぁ、突然だが君には今までの出来損ないよりもずっと強いのと戦ってもらうよ!」


 突然やって来たかと思えばその言葉に俺は強く興味を持った。

 稀に外で実験台の大型生物を集めるために戦ったが、くだらなかった。


 『本当だろうなぁ...ロティアート。』

 「ああ、ちょっとまずい事になったからね...そいつを殺してほしいのさ。だからとりあえず...。』


 俺は依代に移動させられた。

 するとロティアートは謎の宝石をかざした。

 途端俺は依代ごとその宝石に封印された。



 「キジコ様、帝王様!!そちらは頼みます!!」

 「帝王様まで加わるのはまずいな...君、手伝ってもらうよ。」


 ロティアートは宝石を投げ、俺は解放された。


 『...なんだ?出番か..¿』

 「..!!邪精霊か..!」

 「その通りです。僕が作った特別な人形に受肉しているから強いですよ。」


 何かと思って出てみれば...瓦礫と悲鳴だらけの世界だった。

 俺のいた場所はサジェス帝国という国の地下にあった。とうとうヤツのやっていた事がバレたらしい。


 ...というか、ディストル起動してるじゃねぇか。


 「では皆さん、上で待っています!」


 そう言ってヤツ...ロティアートは使い切りの転移術式が刻まれた板を使って俺と転移した。


 いざ転移してみれば地上、悲鳴もさらに聞こえるし町も酷い状態だった。

 

 「この場は僕も参加するよ。」


 現れたのはロティアート...にそっくりなゴーレム。

 後にはディストルが現れる。

 ...どうやら相当やばい事に参加させられたようだ。


 それにしてもよく出来たゴーレムだ、奴が俺の依代を元に何か作っていた光景は何度も見ていたが...それがこれか。

 というか本物どこ行った、ロティアートは何を企んでいる...?


 さっきは内心混乱していて状況を把握しきれていなかったが、強い力を持った奴がディストルが開けた大穴から出てきた。


 サジェス帝王、帝国軍副総隊長ゲトー、そしてロティアートが狙っていた神獣候補のキジコ。


 ...あの猫が気になるな...と思っていたがキジコはどうやらディストルに挑むらしい。

 なら俺は強いオーラを出してるそこの帝王と戦ってみるかなぁ。


 ああ...面白そうだ、今まで戦ってた奴らがつまらない奴だったって事がすごくわかる。


 ヒャハ....殴りてぇ。

次回は

帝国編→キジコが眠っていた1年間のお話編

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