第147話 猫vs闘精霊③
『この体では初めてだ、本気になるのなんて。』
「そりゃ光栄な話だ、それだけ私が強いって証明出来たんだからな。まだ余力あるけど。」
リーデンは本気モードになった。
彼曰くは8割だそうだが十分その領域だ。
さぁ私もまた出力を上げなければいけない、だがいちいち言うのもアレなので話している間に強化を済ませる。
よし、魔力を割と消費したけど身体機能はかなり上がった。それに今着てる魔法具[化猫]も物理的戦闘向きの服だ、今のリーデンとまともに戦うなら今の状態が最もだ。
「準備オーケーだよ、いつでもかかって来な。」
『では。』
リーデンはいきなり前に現れて拳をあげる。
私も拳を構え猫パンチ。
開幕の時よりもずっと衝撃が強く走り空気を震わす。
二人は喧嘩なんて比じゃない殴り合いを始める。
それを見る者達は皆その光景に驚きと興奮を隠さない。
「行けーご主人様ーっ!!」
「負けるのではないぞ、リーデン!!」
ルザーナ達がいる特別観覧席も盛り上がっている。
『本当に楽しんでるな...。少し羨ましいぞ、己の生きがいを今最大限に楽しんでるなんてな。』
「あんなキジコと戦える...ワクワク。」
「...。」
同時に、戦士達は自分達も相当な強さを持った奴とこれから戦える事にうずうずしている。
皆キジコとリーデンの激しい戦いを見、さらに闘争心を燃やしているのだ。
「面白い奴らだな本当、俺らが昔参加した闘王闘技よりも楽しいじゃねぇか。」
「それだけ時代は面白く進んでいるってことだろエノガード。特と見てやろうじゃないか、新しい時代って奴をさ。」
「でやあああ!!」
『おらあああ!!』
結構ダメージを与えたつもりなのに全然倒れないぞこのロボット野郎。一体どれだけ殴りゃいいんだこれ...。
私の今のリーデンと比べて有利な点は瞬発力。猫の力を持っているからこそ瞬間的な速さと力は上回っている。
脱力からの爆発、これはただ脱力した状態からいきなり力を込めるだけでは意味がない。
照明と一緒だ、30分付けたままよりも何回もパチパチ電源オンオフしてる方が電力かかるのと同じ。
これをするならその体に合ったやり方、つまり慣れておかなければただ自爆するも同然。
ようやくリーデンの攻撃に慣れてきた、さぁ行くぞ。
「...。」
『(俺の動きに対しての細かい無駄が減って来たな...そろそろか。)』
リーデンは私に殴りかかる...
今だ。
『!?...』
私の拳がリーデンの顔に入る。
「せいっ...はあっ!!」
『グォッ...ようやく本領を出せて来たか。お前は突発的な事に対しての慣れが少し遅い、それを覚えておけ。』
「ああ、身をもって理解してるよ。」
『だったらよぉ...もっと見せやがれ!!』
私の拳が軽くなったように感じる。
だがその一撃はすごく重い。
だが体力が切れたわけじゃない。
何発も殴れてる。
リーデンが防御体勢をとっている。
一度距離を離し息を整える。
リーデンもそうしているのか魔力の微細な乱れが治まった。
でもその隙を見逃さない、居合の如く猫のバネパワーで前に踏み込む。
リーデンは蹴りで反撃しようとするも私はその足を掴み端に投げ飛ばす。
だがリーデンは壁を蹴り、私の前に現れ横蹴り、私は吹っ飛ぶ。そこから浮いた体を掴まれ地面に叩きつけられた。
しかし私は今のリーデンと違って魔法が撃てる、妖炎を纏いリーデンを離れさせ魔砲弾で追撃。
パンチで別の方向に跳ね返しさらに距離を取り深呼吸をする。
『ああ..これだ、これこそが闘いだ。感謝するぞ、近頃は本当にいい機会がなかったからなぁ。』
距離は結構あったのにも関わらず一瞬で私に迫り蹴りを当てに来る。
「こっちこそ感謝するよ、お陰で出力の目安がわかってきた。」
私はそれを避ける。
その隙を狙い攻撃しようとするもリーデンは高くジャンプ、私から再び距離を取る。
『...この一撃で、最高のラストにしてやる。そして俺がこの勝負に勝つ。』
リーデンの依代の水色のラインが赤く光り始める。同時に魔力が収束し始める。
その一撃のために10割解放って感じかな。
「来いリーデン、私も負けるつもりはない。絶対に勝つ。」
余力を残すのはまずいくらいの魔力をリーデンは込めている。防御すれば私は負けるだろう、ならば私もこの一撃に全てを賭ける...それが一番だ。
『魔力最大...これが全て!』
「全身全霊、最大火力!!」
開幕早々楽しかったぞリーデン。
『これが俺の...!』
「私の...!!」
『精霊拳!!!』
「猫....パンチ!!!」
...痺れる拳、
砕ける拳、
『...はは、楽しかったぜ。』
ただそれを言い残し、リーデンは倒れた。