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猫に転生しても私は多趣味!  作者: 亜土しゅうや
闘王闘技編
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第141話 振り返る転生猫

猫時代の大まかな振り返りのお話です。

 第二予選を終えたその日の夜のお話。


 「...。」

 「...ぶはっ...!」


 ベッドの上で寝ているニコ、

 椅子に座った私。


 「どうだった?」

 「...広がっているね。」

 「...そうか。」


 ニコの内側を今も広がっている心のヒビを見るために魔力共有を行っている私。ハルさん曰く桃花様に処置を施してもらった際はヒビの進行が止まりある程度だが修復されたそうだ。だがその効果はすでに切れ、まだ安定こそしているがまた爆発してしまわないか、こうやって定期的に検査している。


 魔力共有で見た世界はいつもどうりニコの部屋。

 最初は何の変哲もない部屋だった。だがヒビの存在を認識するとそれは変わった。部屋のドアから中心に壁、床、天井にヒビが入っているのだ。

 まるで何者かがここへ無理矢理でも入ろうと、ニコという存在へ踏み込もうと。


 生憎私はこのヒビを正しく塞ぐ方法は知らない。桃花様が施した処置はあくまで魔力を安定化させニコ自身を沈静化させるものなので正しい処置ではないのだ。


 ...親友が大きな危機に面してるのに何もしてやれない...とは思っていない、私は私の出来る事を今もしている、ニコもなんとかしようと努力している、いちいちネガティブな考えに至る方が失礼だ。


 とりあえず定期検診は終わり、意識を戻そう、そして現在に至る。


 「...ん、キジコ。」

 「終わったぞ、もう起きて大丈夫だ。」

 「お茶を入れて来るわね。」


 今の所ニコが暴走する気配はない、それだけはわかる。


 「...ねぇキジコ。」

 「なに?」

 「ずっと気になっていたんだけどさ、確かキジコって...元々この世界の人じゃなかったのでしょ?」

 「...!」


 あれ...言ったけ?

 ダメだ言った記憶がない、多分言っていても忘れてるわ自分。


 「桃花様から聞いたの、キジコは異世界から転生した人だって。」

 「...そうなのか、キジコ様。」

 「ああ。そうだな...簡単に言えば[色々あってな]ってやつだ。」

 「...聞きたいの。キジコは魔物の体で転生したんでしょ、その時の話を知りたい。」

 「そうだな、この際色々話そう。」


 そういうわけで少し振り返ろう。


 私はキジコ、本名は雉野小夏。

 趣味は(省略)。

 私のいた世界は魔法なんてない、人類の知恵と勇気、そして技術が根幹をなす世界。

 当時32歳だった私は自分の体の疲労も考えず行動し、結果それを間接的に...死んだ。


 その後神様に特別に転生権利をもらってこちらの世界へ猫として転生した。目が覚めた場所はレギスの森、猫として自由気ままに生きようと決めたけどそうは問屋が卸さない。


 飲み水確保しようとしたら凶暴な鹿に襲われた。

 その際私は神様からのちょっとした反則級チートでもなんでもないスキルをもらいなんとかその場を凌いだのだ。

 これが異世界来てすぐの出来事...なのだがそれだけでは終わらない。


 今も覚えてるあの威圧...白銀の獅子ヴァルケオと出会ったのだ。私は念話が使えた事で

ヴァルケオにどういう者かを説明(鑑定込み)、そこから彼についてゆく事にした。それからマウリ、テューニと出会い、数日間レギスの森で過ごしたのだ。


 それのどこかでだった、私が神獣候補であるというのを知ったのは。これは神様も想定外の事で、私はケモノスローライフを送る所かの命に関わるレベルに狙われる日々が始まった。


 当時最も面していた問題である聖人族と魔人族の戦争を止めるために当時疑わしかったサジェス帝王に会いに行くと決めた。

 ヴァルケオ達に見送られ、魔勇者ヴェアートと共に帝国軍が駐留しているエリアに向かう事にした。


 その道中に私達は傷ついた[ライト・キッカー・サラマンダー]と出会った。簡単に言えば[ルザーナ]に初めて出会った時だ。


 当時あの子は飢餓と恐怖、命の危機に飲み込まれ凶暴だった。私はその子を放っておけず傷を治しリンゴをあげた。サラマンダーはある程度元気を取り戻し、私達と来る事になった。


 その後帝国軍の駐留エリアに辿り着き、5人の仲間と一頭のサラマンダーと帝国に向けて旅をする事になった。

 名前はゼオ、アリア、ミーシャ、ケイ、スーロッタ。

 そしてサラマンダーにルザーナと名付けた。


 帝国への道中は大変だった。

 なぜなら反神獣派という謎の宗教的な派閥が私の命を狙っていたからだ。守護獣の元から離れた私を狙う絶好のチャンスなのだから。


 道中行く着く先々で奴らはしつこく襲撃、町の人にも迷惑をかけた。とまぁ襲撃からの撃退の繰り返しをして行くうちに気づけばある意味ヒーローのようにもなり、ある町で少し噂にもなった。


 やっとの思いで辿り着いた帝国、ここからが本番かと思えば反神獣派はすでに帝国にいた...いや、親玉が帝国を拠点としていたのは当時の私は知らなかった。


 ゼオ達とはここで別れ、私は帝国軍の副総隊長と特別編成隊長に連れられ帝王に会いに行った。

 しかし、いざ城の中に入ってみれば最悪。

 すでに反神獣派が城に攻め込んでいたのだ、ここに来る私を狙いに。反神獣派は帝国兵を操って襲撃をしていた、私への攻撃と城内の警備を手薄化を狙いに。


 そうなると帝王が心配、急いで向かうも洗脳兵は襲ってくる。もうダメかと思った時、私達の前に帝王が現れた。


 その後安全な場所へ隠れ話し合った。

 なんと戦争を止める事が決まったようなのだ。

 どうやら両国の勇者が説得してくれたようだ。


 だが悠長にしてる場合じゃない、私は城から脱出するために地下へ逃げる...が。


 それは罠だった。

 特別編成隊長の...いや、反神獣派の親玉の罠だったのだ。


 親玉の目的は神獣のいない世界などではない、そんな事は奴にとってはついでに過ぎなかった。反神獣派とは真の目的のために都合よく動かすための偽りの組織、祈る先も未来もないただの集団。


 親玉の真の目的は実験。

 奴は町で拉致したある女性を素体に生物兵器を作っていたのだ。

 しかもそれはただの兵器じゃない、どういうわけか神獣候補の称号を持っていたのだ。


 そして私達は激戦を繰り広げた。

 その際、親玉を裏切りより面白そうとかの理由で当時のリーデンが仲間となりなんとかその怪物と戦えた。

 その後時間こそかかったが怪物は撃破した...のだが、


 ルザーナが親玉の襲撃をくらい、ケイが私を庇い消息不明となった。


 その時の焦げた血の匂いを感じてからははっきり覚えていない。

 わかるのは、その際にこの体を得て覚醒、親玉を殺したくらいだった。その後私は意識を失い1年間目覚めないままだった。



 「...これが私の猫時代のお話、まぁ大体ではあるけどね。」

 「...反神獣派の話は聞いた事あったが、そんな事があったんだな。」

 「大変だったのですね...。」

 「...キジコ、私の思ってる以上に歳上だったんだね。」

 「そりゃ魂が32歳+現在だからね。」

 「...もう一人のお姉ちゃんみたい。」

 「むず痒いな...。」


 そんなわけで今回は猫時代のお話をある程度振り返させてもらった。1ヶ月あるかないかという期間だったのに中身ぎっしりの日常でした。


 「そろそろ部屋戻るね。」

 「うん、3週間後も頑張ろうね!」


 今日は話疲れた。じゃ、おやすみー。

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