番外編 とあるご令嬢のお話
本日2本目
私の名はエリア・ルフ・ドラゴ。
竜人国ドラグで[竜騎士]の称号を持った竜人族である。
それと妹のメイルノル・ルフ・ドラゴ、またはメーノ。
突然私視点のお話に入ってキジコ様達はどうしたってなるだろう、それについて説明しよう。
そもそも私達は5年に一度に開催される武力大会である闘王闘技の出場者です。
闘王闘技とは、数年に一度最強の戦士を決める大会の事で武術や魔術もどんとこいな大会。
私は妹と共に己の実力を試したくこの大会に出場したのだが妹とそろって第二予選敗退。
その予選が閉幕し翌日、妹と負けた者同士でどこかの店に寄ってみようと決めました。どうせミッドエデルという大きな町へ来たんだから美味しい物食べなくては勿体ないではないか。
実のところ我々竜人族は割とよく食べる種族、理由は私にはわからないが飛行状態で費やすエネルギーが多いから、他の種族よりも肉体機能が優れている分消費が多いからなんだとか。
そういうわけで色んな店に立ち寄っては色んな味を楽しんでいるわけです。実際5軒回ってますがまだ食べれます。
次どこ行こうかな...あら?
「...これ、どう見てもアレだよな?何でこの世界に...?」
アレは...キジコ様ではありませんか。
何やらショーケースの模型品を見て驚いている様子。
「お姉ちゃん...あの店。」
「ん?」
アレは...確か竜人国にあったカフェの2号店。ここにあったのか。
「あのー...キジコ様?」
「え?ああ、エリアさん!...ん?妹さんとどこか行っていたのですか?」
「はい、この辺りの店で美味しい所を探していましたのです。」
「ほほう、匂いからしておすすめの所があると見た。」
「ふむそうですね....今丁度目の前にある店はおすすめですよ?」
「ああその事で質問が...。」
「..?」
キジコ様はショーケースの模型に向かって指をさす。
「...あのスイーツ、いつからこの世界にあるの...?」
キジコ様が聞きたいのは[パンケーキ]についてのようだ。確かあのお菓子は...
「おかしい...何でこの世界に...?」
キジコ様の様子はただ知らないとかそういうのではなさそうです、むしろ驚愕と謎でいっぱいの表情。
「このパンケーキは数年前我が国のとあるご令嬢が考案した甘いお菓子です。」
「なぁ!?名前まで...。」
また驚愕しています、一体どうしたのでしょうか。
「ねぇキジコ様...私達とこれ...一緒に食べませんか..?」
おや、妹がキジコ様とこの店に寄りたいようである。ならば可愛い妹のために6軒目はここにしよう。
「いいよ、私もどんな味か調べたいしね。それと、スアと戦ってる時とってもかっこよかったよ!」
「...!!」
妹の目がキラキラ、胸を押さえている。
まずい、妹が変な方向に目覚める!!
「と、とりあえず店に入りましょう!」
ーーーーー
テーブル席に座り、店員がお冷とお手拭きを置く。
「...なぜ...まさか...いや...?」
キジコ様の様子は以前変わらずずっと考え込んでいる様子だ、少し話をしてみよう。
「そういえば...ルザーナさん達は?」
「ああ、今各自自由行動中でね。それぞれの行きたい所に行って町の情報集めて今度は団体で行こうかなと思って。」
「なるほど...。」
「...キジコ様、どうしてそんな考え混んでいるの..?」
「ん?ああ、パンケーキの事でね...ああそうだ。」
「「?」」
「質問だけどさ、そのご令嬢..?について何か知ってる?」
あの方についてですか...。
「お先に失礼します、カフェオレ2つとサンジュースでございます!」
私から注文したドリンクがやってきた、キジコ様はまた驚いてる。
「カフェオレって...ああ、続けて。」
「...何度か会ってはいますが...どうしてそのような事を聞くのでしょうか。」
「...少し気になる事があってね、今考えてた事の行き着いた先でもある。」
どういう事でしょう...?
「例えばさ、以前と最近で様子が変わったとか?」
「...!!」
な...どうしてそれを!?
「...知ってる様子だね。」
「...おっしゃる通りです、元々ご令嬢はかなりわがままで上から目線、その上人使いの荒い方でした。そんなある日...ご令嬢が7歳の時、邸宅の敷地内に魔物が侵入、魔物が放った魔力弾が壁に当たりその破片がご令嬢の頭に当たってしまったのです。」
キジコ様は驚愕と[嘘だろまさか]って顔になっている。
「そこからでした、目覚めたご令嬢は人が変わったように優しく丁寧な振る舞いをし、今まで迷惑をかけた従者に何度も謝るなど当時は大混乱でした。」
キジコ様は[マジか...]って様子です。
「お待たせしましたー!パンケーキ3つでございまーす!」
そう言ってる間にパンケーキが到着。
「この料理を
「2段重ね...季節の葡萄...ハチミツとバター...。」
「...!キジコ様...バター知ってたの?」
「...うん。」
なんと、バターを知っていたのかキジコ様。
この食材はご令嬢が氷の魔術を用いて乳製品から取り出した乳脂肪分の塊、その際バターと言っておられたが...なぜキジコ様がそれを?
「とりあえず今は食べよう!」
「...そうですね、ではいただきます。」
「いただきます。」
パクッ...
(...!!口に入れた瞬間、バターとハチミツが絡んだフワッフワの生地の優しい味が広がる..!それに加え旬の葡萄が爽やかな味をプラスして食べやすい!!というか生地に染み込んだハチミツ、すごく美味しい!!あーカフェオレが進むー!!)
...キジコ様すっごく幸せそうな顔をしてます。
「...すごく..美味しいね、あむっ...。」
妹もすごい笑顔になってる、やだ凄く可愛い。
ーーーーー
さて、食べ終えお口直しにお冷を飲む。
「...それで、ご令嬢さんは今どうしてるの?」
「ご令嬢はこの頃..その...。」
「?」
私はキジコ様の耳元に近づき小声で話す。
(実は...我が国の第二王子に惚れられまして...現在婚約者という関係に...。)
(!!!??)
咳き込むキジコ様。
「て...テン...プレだ...。」
「てん...プレ?」
どこか確信になってる様子のキジコ様。
「ちなみにご令嬢は本大会を観に来る予定でございます。...それほど気になさるのであればそこで会うとよろしいでしょう。あなたは悪い人とは思えませんので。」
「...!そうだ。」
キジコ様は空間収納庫から紙と羽筆を取り出す。
「...キジコ様、それ何を書いているの?...見たことない字。」
「私の考えがあっていればそのご令嬢さんに通じる言葉だよ。知ってる限りじゃ私と...そのご令嬢しか知らない言葉かもしれない。」
「...!?」
「意味は聞かないでほしい。その方との秘密の内容でいたい。疑わしいなら渡さないでおくが...。」
...私が出せる結論は一つ。
「私はキジコ様を疑いはしない。この手紙がなんと書いてあるかは全くわからないけど、ご令嬢に必ず渡すと約束しよう。メーノ、私は一度国に帰るけど大丈夫?」
「うん、キジコ様達と一緒にいる。」
「へ?!」
うぐ...悔しいが賢い選択だ妹よ。
決まりだ、夕方に転移魔術師を呼んで一度国に戻ってこれをご令嬢に渡すとしよう。
ーーーーーーーーーー
キジコ視点
...これだけの情報が揃えば...いや、もはやテンプレートとしか言いようがないくらい心当たりがある展開のある話だった。
もし手紙が通じるのであれば...絶対に会ってみたい。
私は書き記した。
この文字、忘れもしないこの言語で、この展開で。
[悪役令嬢にはなるなよ!?]
...そう、日本語でな。
128話でジンがチラッと言っていた、
異世界になぜかあるパンケーキに関するお話でした。
ちなみにホテル内にあるのは3号店。
このお話の続きはいつか本編でするとしよう。




