第140話 第二予選(Hブロック)/本大会出場者決定
第二予選もいよいよ最後、Hブロックに出るのはクロマ。
美しい夜空のような衣で身を包み、凄まじい力を持った魔女は今....
「あばば...ぷ..ぷれっ..しゃぁ...が。」
緊張している。
A〜Gブロックが終え残りのHブロックだから締めに期待する観客もいるだろう。そのためクロマはプレッシャーで震えてしまってる、頑張れ。
「大丈夫だクロマ、どーんと構えてりゃいんだよ!」
...!、ニコ、お前その言葉は...。
「ぐむむ....むはぁっ!!もうやけくそです、クロマ行ってきます!!」
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「さぁ第二予選もとうとう最後、Hブロック!!最初はエルフ国より、魔術師ラーマ!」
出てきたのはハロウィン寄りな格好のダークエルフの魔女。たわ...ゲフン、[アレ]は...ルザーナほど大きくないな。
でもなんか不思議な魔力の流れを感じる...あーもう、こんな事なら魔力の流れや状態をはっきり見えるスキルを得ておくんだった。
「続きまして竜人国より魔法と武術の2つの才に恵まれし天才、イレイン!」
おお!?格闘と魔法両方に才能持ってるタイプ!属性対応であれば通信プレイですげぇ嬉しいやつ。
...あら?あの人...腕に何かある。
「エリアさん、あの人腕...。」
「イレインさんはワイバーン種の血を引く竜人族です。そのため腕から翼を展開して空を飛ぶ事が可能です。」
「ワイバーン種か...確か竜人族全体で見ても4割あるかないかだっけ?」
「そうですフィースィ、正確には3.5割って所です。...昔はもっといたみたいですが。」
ふむ...要するに竜人族はドラゴンとワイバーンとかで血筋分かれてるんだな。それぞれの強さの違い、ちゃんと見なければ。
「そして最後は、古の時代から存在する魔法使いの一族ブランにして大魔法使いシャルマの孫、クロマだ!!」
「おい、あの装備って!」
「蒼星夜だ!!」
「じゃああの子はすげぇ強いのか!?」
予想していた以上に歓声が上がる会場、というかクロマって一族レベルで有名だったのか!?
それに蒼星夜について知ってるような声がチラホラ聞こえる、椿姫は才のある者に引き継がれると言っていたが...これで事実上クロマもトンデモな存在の仲間入りだな。
...時空操作を出来る時点でトンデモな気がするけどね。
さぁクロマ、私達と本大会出るために..いや、優勝する気で努力したその力を見せてくれ!!
「それでは闘王闘技第二予選Hブロック...開始!!」
ラーマが杖を前に向ける。
「業火之矢!!」
イレインが魔法陣を展開する。
「複合スキル展開、氷之大地、氷柱之雨!!」
業炎の矢と氷の世界がぶつかる、それに対しクロマはただゆっくり真ん中へ歩く。
「ブラン一族!私の力が上だって事思い知りやがれ!!」
「すみません...凍てついてください!!」
二人の魔法がクロマへ向く。
「時空操作...時間遅行。」
その瞬間、放たれた炎と氷柱の雨がすごくゆっくりな速度になる。同時に術にかかっていない分が後から迫り激突、どんどん崩れてゆく。
クロマは元の位置へ転移、指をパチンと鳴らすとその場で大きな爆発が起きた。
砕けた氷が溜まった業火で水蒸気爆発が起きたか...。
「キャアッ!!」
「うわぁ!?」
辺りが白い湯気に立ち込まれ、地面は水浸し。...待て、まさか!?
「...まずい!!」
「危ない!?」
ラーマは杖に乗り、イレインは翼を展開して空を飛ぶ。
「バリっと。」
クロマの得意魔法は空間と雷。
水浸しになった地面に対して雷なんて流せば当然、水に溶け込んだミネラルなどが電気を通し一気に通電。
「私の魔法を利用してえげつない事してくるわね...。」
「はわわ...し、仕返しです!」
イレインはクロマに突撃する。
「氷之角!!」
かなりの速度で突っ込むもクロマは簡単に避ける。
「これならどう!?フレイムボール!!」
大きな火球を二人に目がけて撃つラーマ。
「空間衝撃波、魔力変形。」
「な!?」
火球は空間衝撃波により空中で崩壊、バラバラになった炎が矢の形になってゆく。
「確かこうでしたよね...業火之矢!!」
「!!」
様々な方向に炎の矢が飛ぶ、イレインはそのまま地上で避け、ラーマは避け続けるも被弾し落下。地面に激突する寸前で体勢を立て直した。
「...やってくれるじゃない!」
「本気で倒すべきだと判断します。」
「本気でなきゃ...私は倒せませんよ?」
「言ってくれる!!」
ラーマは魔力を解放する。
「魔力自由操作化炎之力!!」
彼女の周りを炎が燃え盛る。
(無詠唱を前提として自由自在に魔力を操る力...かなり上級に位置するスキルだったはず。)
「これが私の力よブラン一族。炎を自由自在に操る私にもはや敵はいない、こんなふうになぁ!!」
「..!!」
「ぁっ..!!!」
ラーマは避ける時間もなく炎の渦でイレインを焼き尽くした。
「..!!」
「アーッハッハッハ!!私の敵なんですから燃やしてもよろしいでしょ!」
(冷静さを失ってますね、中途半端に力に飲み込まれてる辺り2流あるかどうかの魔法使いです。)
すると...
「....ぁぶない...じゃないですかー!!?」
「!?」
「!?、私の技を耐えた...!?」
「氷を纏うのがあと一歩遅かったら...死んでましたよ!」
「あらいいじゃない、これからが本当の地獄ですのに?」
「地獄を見るのは...お前です!吹雪之世界!!」
今度はイレインを中心に地面が凍ってゆき、吹雪が広がってゆく。
「その程度溶かしてくれる!!」
「もう怒りました、大人しく凍っておいてください!」
ーーーーー
「アーッハッハッハ!燃え尽きろワイバーンが!!」
「いい加減その口を凍らせましょうか...腹が立って仕方ないのです!!」
それからも炎と氷のぶつかり合いは続く。
相殺により発生する水蒸気爆発の音が何度も響く。
炎が渦巻けば氷の渦がそれを消し、火球が飛んでくるなら氷の壁で防ぐ。
イレインが氷の魔力を纏いラーマに突撃、翼に氷の刃を発生させ攻撃する。
「しっつこいわね羽トカゲが!!」
「...!!!我々の侮辱として受け取ります。今すぐ死にやがれえええ!!」
イレインがヒートアップ、少し前までの冷静さがない。
超強力な魔法バリアが闘技場と観覧席の間になかったらやばかったぞ皆...。
こんな強力な2属性のぶつかり合いなんて....ん?
...あれ、クロマは?
「...準備完了、私の勝利です。」
「「!!?」」
湯気が晴れるとそこにはクロマの姿。
杖は雷エネルギーを帯びており、その言葉には確信を感じた。
「今更この地獄絵図を相手に勝てる自信があるのかしら?」
「そうですよ、引っ込んでいてください!」
「もしかして何も考えず炎やら氷やらを撃ち込んでいました?」
「あら、今更通電攻撃を喰らう気はないわ。」
「違いますよ、空を見ればわかります。」
「空?...ぁ..!?」
頭上はぶつかり合いで発生した水分による雲が立ち込んでいた。
だが雲が晴れてゆくとそこには...
「なによ...あの光!!」
「はわわ...物凄く魔力が凝縮されています!!」
「なかなか倒れてくれませんので保険で用意していたのですが....発動して正解でした。」
頭上に現れた光球の正体は凄まじい密度の雷エネルギー。あんなもの喰らえば並の人間じゃ消し飛ぶ。
「さ..させない!!」
「消えてー!!」
「無駄です、かなりの魔力を込めて作ったので簡単に壊れるものじゃありませんし、今の貴方達の魔力残量ではバリアで防ぎきる事は出来ないでしょう。」
ラーマとイレイン南斗の顔は焦りに染まっていた。それもそうだ、くらえば命が無事であるかもわからない技が発動寸前なのだから。
クロマは左手を上に上げ、人差し指を伸ばす。
「[派手すぎる技を沢山使い]、[周りを見なかった]事が貴方達の敗因です。安心してください、[殺し]はしませんから...多分。」
「嘘...やめ...!!!」
「嫌...!!」
「奥義、破滅之一柱。」
光が収まり、徐々に見えてゆく闘技場。
そこにはローブが風でたなびくクロマ。
光の球体...バリアに包まれているラーマとイレイン。
静まり返る観客。
「流石に殺す気はありませんでしたのでバリアを張っておいたのですが...気絶して聞こえていませんね。」
「ら..ラーマ選手とイレイン選手戦闘不能!!勝者はクロマ選手だー!!」
...クロマ...すっご...!
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1時間後...
「お待たせしました皆様!これより本大会出場者を発表致します!」
...私達は胸を張る。
「Aブロック、キジコ様!!」
とりあえず手を振る。いえーい!
「Bブロック、リーデン選手!!」
「本大会ではまともに戦ってくれよ?」
「Cブロック、ルザーナ選手!!」
お辞儀をするルザーナ。
「Dブロック、エキー選手!!」
「...。」
「Eブロック、レリィ選手!!」
剣を上に掲げるレリィ。...てかもう回復したの?
「Fブロック、スア選手!!」
大きなあくびをするスア。
「Gブロック、ニコ様!!」
「キジコ、やったよー!!」
あはは、可愛い。
「Hブロック、クロマ選手!!」
観客ではなく私に手を振るクロマ。
「闘王闘技本大会出場者以上8名!!さらなる輝きに期待だあああ!!」
未だ枯れず湧き上がる歓声。
「師匠、私頑張りました!!」
「ご主人様、私達みんなで出場出来ましたよ!!」
『頑張ったの!!』
「うん!皆も私も頑張った、おめでとう!!」
皆と手を繋ぎジャーンプ!
「ちょっとキジコ、私も!」
『皆可愛らしいな、お前も混ざったらどうだリーデン?』
『ふざけんな。』
「...フフッ。」
目標の一つ、皆んなで本大会出場...達成!




