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猫に転生しても私は多趣味!  作者: 亜土しゅうや
闘王闘技編
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第136話 第二予選(Dブロック)

 Dブロックに出る選手の中で最も気になる人物、エキー。その正体は不明、全身ローブで身を包み顔には仮面。匂いも何かしらのスキルで消しているのか感知出来ない。


 ただわかる事は、その闘気はとても濃く重厚であるという事。ストレートに言えば強い、本大会においてはまさに強敵となる存在。


 「お待たせしました、続いてDブロック!最初はムート王国より第3番軍団長、騎士グラース!」

 

 おお、ようやく聖人族の人が来た。

 思えば私の知る人間に最も近いの聖人族なのよね、別の大陸行けばちゃんとそういう人達がいるのだが、私は転生してからそういうことは離れた者達と暮らしてたからなんか...久々感あるんだよね。


 「続きまして竜人国より、竜闘士バール!」

 

 今度は斧を持った竜人族の人間。

 鍛え抜かれた肉体が重そうな斧を軽々と振り回す。


 「そして最後にサジェス帝国より、正体不明の武道家エキー!」

 「...。」


 静かに闘技場の上を歩くエキー。

 だがこの場、選手用観覧席にいる強者達は気づいている。


 「...勝負あったな。」

 「私とは桁違い...。」

 「お姉ちゃん怖い...。」

 「ウチもやシヤ...。」


 闘技場に現れた途端、少しずつだが解放されてゆく重厚な闘気。その圧力に二人は即座に戦闘体勢に入る。


 「なんという圧力...!」

 「こりゃ、油断すれば武器を振るわず地に這いつくばるかもしれねぇ...。」

 「...。」


 その闘気が溢れ出しているのに対しエキーは至って静か、荒れ狂う海を市民プールのように平然と泳いでるかのように状況と体勢が合っていない。



 「それでは第二予選Dブロック...開始!!!」

 「...!!?」


 それは一瞬だった。


 「が..あはぁっ!?」

 

 なんとエキーはグラースの腹部に膝蹴りを入れていたのだ。グラースはその場に倒れ込み...戦闘不能となった。


 「...マジかよ。」

 「あの速さで動き、相手を殺さずただ気絶にさせる程度のダメージにまで加減する技術。」

 『...化け物じゃねぇか..ケケッ。』

 「あの強さは現状最も気にしておくべき強さだと考えます。」

 

 観客達も呆然としている。

 なにせ開始1秒経った瞬間に今のが起きたのだ。


 「...面白い、その力試させてもらおう!!」


 バールが斧を横薙ぎする...が。


 「...。」

 「馬鹿な...!?」


 斧は右手で止められていた。

 衝撃もほとんどなく、飛んできた小石を掴むように。


 「この一撃を...びくともせず...!?」

 「...。」

 「っ!?」


 そしてバールも顔に蹴りをくらい倒れたのだった。


 Dブロック、1分もなく終了。

 勝者、エキー。


ーーーーー


 休憩時間...


 「...。」


 誰もいない廊下、あるのは休憩スペースと長椅子。そこの近くの椅子に腰を掛け、ジュースを飲むエキー。

 仮面を少しずらして顔を隠しながら飲んでいる。


 「...ぬるい。」


 近くの飲食スペースからジュースを買ってきたようだが、残念ながらそこのジュースは冷却魔法陣の魔力が切れかけていてあまり冷えていないのだ。

 飲み干しゴミ箱にカップを投げ捨てた。


 ため息をつき観覧席に行こうと...した時だった。


 「あの!」

 「!」


 青い髪、サラマンダーの尻尾、金色の目。

 そこにはルザーナの姿があった。


 「...急ですが、お時間大丈夫でしょうか?」

 「...?」


 ルザーナの様子はどこか違った。

 さっき闘技場内で見せた風格と落ち着きがなく、静かであるがどこか焦りが見える。

 

 でもエキーはどうしてそうなっているかをすでに察している。

 

 「...動かないでください。」

 「...。」


 エキーは頷いた。

 普通であれば闇討ちされる可能性さえある状況であるのに、彼女はそれを全く疑っていない。

 なぜならルザーナからは敵意を感じないから、

 ルザーナはどこか震えていたから、

 彼女の目は敵へ向けるものではないから、




 エキーはルザーナの事をとても知っているから。


ーーーーー

 

 ...私はエキーさんに抱きついていた。

 なぜなら、私はこの人の事を知っているから。

 ずっと会いたかったから。

 いつか会えると信じていたから。

 皆、貴方をずっと探していたから。


 「...匂いを消しているのはスキルではなく、このローブの効果ですよね。ここまで近づけばとても微かですが私にはわかります。熱源感知で見えたローブの中に耳と尻尾、私に対して何も警戒していない所...。」

 「...バレちゃった。でもまだヒミツにしてね。」


 ...ようやく聞けた、この声を。

 この体になる前に聞いたこの声を。


 「なんで...なんで、言わないのですか...!?」

 「...キジちゃんはまだまだ成長できる。そして近いうちにもっとすごくなる気がする。それまでは...隠しておきたいんだ。どうせ全てを出し切って戦うならそっちの方がいい。」


 私は知っている、ご主人様といつか全力で戦う事を約束していた人を。


 「今ここであまり話す事は出来ないけど...大きくなったね、ルザーナ。最初見た時は一瞬誰かと思ったよ。」

 「はい、私も沢山努力しましたから!」


 スパルタ特訓頑張りました!


 「本大会では最初に戦うけど...手は抜かないでね。私もルザーナの成長見てみたい。」

 「勿論です、全力で挑みます。」


 そう言って私は観覧席に戻った。



ーーーーーーーーーー


 「お前が期待する所見るに...キジコ様はまた強くなるんだな。」

 「スーロッタ...。」


 廊下の奥から現れたスーロッタ。

 伝統ある大会である故、実力に信頼ある人物として現在警備役として任命されている。


 「お前が生きてる事知ってるの、これでルザーナと俺の二人だな。」

 「...そういや前に会った時、なんで気づいた?」

 「くしゃみした時の声で大体気づいた。まだ12歳同士の時、酷い花粉症で寝込んでたお前世話してたの俺だからな。実家向かいだし。」

 「そういやそうだったね...油断した。」

 「お前たまに抜けてる所あるなぁ、変わらないな。んじゃ俺はまだ警備あるから観覧席に戻っとけ。」

 「はいはい、お勤めご苦労様。」


 キジちゃん、本大会楽しみにしてるっす!

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