第121話 重力比例
「はあ!!」
「うあ!?」
ニコの大剣対策を見つけるためにヴァルケオと特訓する私。
初手から重い一撃、私は後に吹っ飛んだ。
ニコの大剣対策...一言で言えばカウンター。
あんな一撃を真正面から耐久するなどは出来ない、ならばその火力をどうにか活かす他ない。
私の持ち手はスキル習得量の多さ。
技術とスキルを得るために現在猛特訓!
「ふんっ!」
「うがっ...イッデぇ...!」
「うむ、素手の対策はテューニの教えで多少どうにかなってるな。だが重要なのはここからだ。」
ヴァルケオはナックル...いや籠手?を装備する。
「キジコ、ここからは武器を抜け。そして必死に真面目にこの力を学べ!!」
「来い!!」
その一撃は凄まじかった。
受け流すよう構えをとったのに私は中に浮いていた。
いや、受け流しきれずぶっ飛んだのだ。
「グエッ...デタラメかよ今の...。」
「残念だが本物だ、まだまだ行くぞ!」
「(ただ受け流すとかじゃダメだ、考えを変えよう。)」
私は技術が足りないという考えをやめた。
今の私は技術はある、あとはなんか掴むだけだ!!...と。なので今はヴァルケオのデタラメパンチから色々学ぼう。
ヴァルケオの容赦ない(手加減込み)猛攻は続く。
私は久遠で弾き返したり受け流すのが精一杯、集中が少しでも下がれば間違いなくまたぶっ飛ぶ。
思い出せ、私が欲しいスキルを得た時はいつも欲しいって思っていた。
魔砲もそうだ、あれは前世で見たロボットアニメやバトル漫画のカッコいい技を再現したくて、努力したからスキルとして得た。
なら今だって可能なはずだ!思い出せ、この状況を、いつか起こる状況を打破出来る能力を!!
...そうだ、ある!
確かにある!
前世でふらっと見たアニメで、防御力に比例して攻撃力が増すとかそういう技が出ていた!
これを活かせ、今重点おく場所は重さ。
相手の攻撃の重さに比例して弾く技を!!
「はああっ!!」
「...無理矢理でも試すしかねぇよなあああ!!」
私は久遠に思いっきり魔力を込める。
そしてヴァルケオのパンチを...真正面から受ける。
「いっけえええーーー!!!」
「何!?」
久遠に込めた魔力を一気に放ち斬る。
「思ったより吹っ飛ばし返せなかったな。」
「面白い手を出すじゃないか。」
今試したのは溜めた魔力を敵の攻撃の威力に応じた強さに放出し、相手を弾くという技だ。
だがヴァルケオの攻撃があまりにも強くてうっかり全放出してしまった。
もう一度魔力を込め体勢を整える。
「来い!」
「何か見えてきたようだな!!」
ーーーーーーーーーー
「...おかえり、ジン、ニコ。」
「ああ。」
「...。」
ニコは眠っている。
暴走を始める神獣の力が解除された後その場で意識を失ったのだ。
やってきたのはハルの工房。
「ニコを洗ってやってくれ。」
「わかったわ。お茶淹れるからジンもゆっくり休んでいって。」
...ニコの力は未だ増大している。
ニコがおかしくなり始めたのは結構前...キジコさんと初めて会った後あたりからだ。
私の種族スキルの一つ、[心聴]は他人の心の音を捉えるスキル。
ニコの心はあの日からヒビが入る音が聞こえていた。
ニコ自身は幸せな気持ちであってもその底は違った。
あの日からほんの少しずつ大きくなっていたヒビは、ある時を境にさらに大きくなった。
それはバノスを討ち取った日からだ。
ニコは神獣の力に目覚め始めたあの日から、稀に己の意志と反して周囲の魔物を狩る。その度に魔物の血をつけて帰ってくる。
会議から3週間経った今もニコは暗い。
抱いてあげた時もニコはずっと泣いていた。
怖いと。
傷つけてしまうと。
失ってしまうと。
「...ありがとう、ハル姉。」
「いいのいいの!疲れて汗をかいたらお風呂入るのが一番!ニコはこれから忙しくなるのだからこういう時くらい私にも手伝わせて。」
「...うん。」
少しだけ尻尾が動いた。
微力であっても私達はニコを助ける。
だって家族だから。
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(補助スキル:超耐久を習得。このスキルは常時発動。物理的ダメージを軽減、自身の体力が上昇します。)
(補助スキル:超体力を習得。このスキルは常時発動。体力が一定割合上昇します。上昇値はおよそ3割分となります。)
(攻撃スキル:五連斬(1)を習得。)
(攻撃スキル:瞬速撃を習得。このスキルは通常攻撃を瞬発的に速度を大幅上昇させます。そのため特定の攻撃方法はありません。)
「はあああ!!」
「でやああ!!」
「すごいね二人とも、神域の開けた土地で戦ってて正解だったよ。」
「森の中でぶつかっておったら木々が吹っ飛んでおったわ。」
キジコは新たなスキルを得てさらに強さが増す。
ヴァルケオはそれに合わせてさらに力を解放してゆく。
「ヴァルケオも楽しそうだね。」
「あったりまえじゃん。娘のような存在が目の前で成長してるのに嬉しくない親なんているか?」
「勿論いないね、現に僕らも嬉しくてうずうずしてる。」
あと少し、あと少し!!
「ヴァルケオ、必殺なんでもいいから放って!!」
「いいだろう。」
ヴァルケオは構えをとる。
「その一撃で掴んでみせる!!」
「やってみせろ!!」
白銀に輝く拳がこちらへ来る。
「見せてやる...!」
私は納刀し構える。
「キジコちゃん...!?」
「...来るよ、キジコが求めた結果が!」
「白銀闘拳!!!」
「!!」
チャキッ...
「いっけええええええええ!!!」
その瞬間、輝く刃が、
「...!?」
「...!!」
「見事!」
「すごい...!」
ヴァルケオの一撃を止めたのだ。
(攻撃スキル:重力比例攻撃を習得。対象からの物理的攻撃威力が発動者の力よりも上であった場合に発動可能。魔力でその攻撃と同等の威力を発揮し相殺する事が可能となります。ただし、相手の威力が高ければ高いほど消費魔力が多くなります。)
「...出来た!」
「お疲れ様。」
新スキル、ゲットです!