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猫に転生しても私は多趣味!  作者: 亜土しゅうや
波乱のマイライフ編
121/302

第116話 人の心vs獣の意志(13)

気がつけばこの作品のユニークが1万人超えました。

皆様本当にありがとうございます。orz

 「...。」

 「...。」 

 「ガルルル...!!!」


 気づけば皆敵味方関係なく、その場を離れている。なぜならこれから戦いが始まるから。


 パワーアップしたキジコとニコ。

 暴走し自身の力に酔うバノス。


 ようやく準備は整った。 

 さぁ、戦い時だ。


 「さぁ来い愚か者共!!オレこそが最強であるとわからせてやる!!」

 「あっそ。じゃあいくよ。」


 その瞬間、閃光がバノスを地面に叩き込む。

 皆唖然としている、そのあまりの速さに。

 二人はバノスを見下ろしている。

 バノスは獣の本能で、自分を見下す二人に怒りをあらわにする。


 「ガルァアアア!!獣之爪斬撃ビーストクロッシュ!!」

 「遅い、猫パンチ!!」

 「ニコ・パンチ!!」


 離れてても聞こえるような威力のパンチに加え、今度は下に周り込みバノスをさらに上にぶっ飛ばす。


 「全力魔砲撃フルブラスト!!」

 「ニコ・スーパーバースト!!」


 そして、

 

 「魔砲起動、大魔砲弾ハイカノン!!」

 「ニコ・キャノンブレイク!!」


 上空で大爆発が起き、地上に凄まじい風圧がやってくる。

 そしてバノスはまた地面に叩きつけられる。


 「ガ...ガルァ...!?」

 「どうした、かかってこいよ。」

 「...黙れえええ!!」


 バノスはキジコに爪で何度も斬りつける。

 キジコはそれを全て避けていてダメージにもならなかった。

 

 「はあ!!」


 キジコは反撃にと1発パンチを食らわす。


 「ありえん...ありえない!!人間如きの術にこれほどの力などありえない!!」

 「...お前自身は獣としての誇りを勝手に持ってるようだけど、お前は獣なんかじゃ無い...ましてや人でもない。昔書斎で読んだ本に書かれていた話だ、


  [獣人の心]


 ・我ら獣人にある獣の心、それは生きる心。

  我ら獣人にある人の心、それは慈しむ心。

  我らは野蛮な獣にあらず、

  我らは無垢であらず、

  我らは獣であり人である。

  孤高なる存在の強さ。

  絆を結ぶ群れの強さ。

  己が信ずる道を貫く志。

  我らは邪悪であらず、

  我らは正義であらず、

  己を、

  家族を、

  仲間を思う心を持つ。

  我らは生きる存在。

  我らは心を持つ存在。

  己のためだけではない、

  誰かのために生きる事ができる。

  それが我ら獣人。

  それこそが我らである。


 これはひいお爺様が昔唱えた言葉。

 かつて荒くれ者の獣人が多く、個の意識が低き時代、ひいお爺様は人として生きる道を持ち、時間をかけ仲間を増やし今のように平穏派を作り上げた。


 バノス、お前を見るとよくわかる、お前は昔から己の欲のためだけに生きている。それも他人の命を何とも思わず自分だけの理想を広げ皆を苦しめる。自分さえ良ければあとはどうだって良い、自分は偉いからなんでも許されるという思想。わかりやすいほどの小物、反吐が出る。」

 「...黙れ。我ら獣人の心は欲だ!!己の欲のためならなんだってしていい、誰を殺しても、何を食っても、どんな物も手に入れてもいいんだよ!!人間風情と同じにするんじゃねぇ!!!」


 バノスの結晶が光りだし、溢れるオーラがバノスに吸収されてゆく。バノスの魔力が体から溢れ始め、目は充血し落ち着きもない。


 「オレガタダシイ、オレコソガ王ダ!!」

 「...キジコ。」

 「ああ。」


 バノスは二人に襲いかかる。

 バノスの爪による連続攻撃とキジコの猫爪連続攻撃がぶつかる。

 あまりにも早いその攻撃は火花を散らす。


 「ガアアアーーー!!」

 「しつこい...な!!」


 キジコは腹部に潜り込み正拳突きでノックバックさせ追撃に斜め上方向にキック。

  

 「ゴアァッ!!」


 バノスは魔法弾を撃ってきたが今の私なら...


 「でや!!」

 「ガアッ!?」


 サッカーボールのように蹴り返せる。

 そして、

 

 「ニコ・ストライク!!」

 「グアアッ!?」


 背後からニコがキックをかます。

 吹っ飛んだ方向の反対からの一撃だからさらにダメージがあるだろう。

 

 気づけば戦闘は激しさを増し、漫画で言うズダダダダとかガガガガッって感じになってる。二人の攻撃はとても息が合っており、キジコがバノスの攻撃を防げばニコが隙を狙い強い一撃を与える。大きな隙が生まれれば二人で必殺を撃つ。


 周りの皆は戦いなどとうに忘れ、ただ彼女らをみている。先程まで荒れていた者達はニコの[獣人の心]を聞いてから静かになった。

 

 「...俺たち、今まで何やっていたんだろうな。」

 「お前、何を言っているんだ?」

 「王...いや、バノスを見て、ニコ...様の言葉を聞いてようやく理解した。俺たちは醜い欲のため、醜い王のため、獣の本能に振り回されて生きる者じゃない。俺たちは人間の心を持って生きている、どうせ欲があるならもっとまともなの選べば良い!」


 バノス兵は魔法を組む。


 「特定支援魔法、攻撃補助アタックサポート!!」

 

 ニコとキジコの体が光り、力が増す。


 「ナニヲ...してイル!なぜコイツラニ!!」

 「俺は獣なんかじゃない、れっきとした人間だ!!本能にもお前なんかにも振り回されない、俺は俺の意志で生きる!!」

 「ダマレ!!オマエラはオレサまのドウグだ、オレヲウラギルコトハユルさん!!」

 「...違うな。」


 周りの獣人達が次々と支援魔法を発動する。


 「俺達獣人のあるべき姿は心を持って生きる事。本能のまま欲を貪るお前とは違う。」

 「ただ戦う事だけが俺たちの生き方じゃない!!」


 皆の様子が変わった。

 これまではバノスに怯え、ただ戦う事だけだったバノス兵は決意した。

 もうあんな王に使える必要はない、自分達は自分の意思で生きれば良いと。


 「グルルル...グルァアアアアア!!!」

 「余所見してる場合か!!」

 「ガア!?」

 

 二人の力はさらに増し、オーラがより煌びやかになる。


 「これで最後だ。」

 「終わりだ、バノス!!」


 二人は全力の魔力を込める。

 

 「魔砲フル稼働、魔身強化フル稼働、レーダーフル稼働。」

 「強化能力全開。」

 「マズい...ガルアアアア!!」

 「逃がしません、波雷撃サンダーウェーブ!!」

 「ガアァッ!?」


 クロマの波雷撃はバノスの足に命中、その足が麻痺して動けなくなる。


 「アア...タノむ...悪カッタ!!クラルとラミをコロしてワルカッタ、平穏派ヲコロしてワルカッタ!!ダカライノチダケは!!!」

 「お前を許す気は微塵もない。失われた者と失った者の痛みを少しでも知れ。」


 ああ、思い出すよ。

 雨が降っても燃える城を背に走り、涙や汗も雨で流されもはや何を流しているかわからなくなるほど必死に逃げたあの日を。

 多くの命が奪われてあの日の悲しみ、

 あの怒りを...


 今ここで終わらせる。


 「極限魔力大砲撃ギガブラスト!!」

 「災厄之終焉ロストカタストロフィ!!」

 「オレハ...ナニを間違エ...。」


 その言葉を最後に、バノスの姿は光へと消えた。



ーーーーーーーーーー


 町のど真ん中が直線上に広範囲削れた地面。

 そこに立つのは煌めくオーラを燃やす二人。

 気づけばタイムリミットは過ぎている、しかし彼女らの魔力は未だ溢れている。


 「...インヴァシオンの皆よ、私はパースの代表のニコだ。バノスは死んだ、今この時をもってこの国は終わりとする。」


 ...その言葉に異論を唱える者は意外にもいなかった。

 

 「皆が今後どうやって生きていくかは自由だ!我ら獣人には人の心がある、己で何をしたいかを考え生きよ!!ただし、バノスのような

道を歩む事は許さん、また悲劇繰り返したくない!」


 学校の朝礼よりも短い内容。

 ただそれだけを、ニコは叫んだ。


 「師匠ーー!!」

 「ご主人様ー!!」

 『主人あるじー!!」


 皆が駆け寄ってきた。

 心配かけてごめんな。


 「お嬢!!」

 「ニコ!!」

 「ジン、ハル姐!?待ってるんじゃなかったのか!?」

 「はは、やっぱり待てなくてな。」

 「家族の心配くらいして当然でしょ?」

 「...!!」


 ニコは二人に無言で抱きつく。

 その際涙が見えたのは言うまでもない。


 「戦後処理も色々と残っている、早いうちになんとかしたいな。」

 「だったら俺も手伝おう、ジン。」

 「え...ああ!!ウダス!?」

 「ジン、先生のこと知ってるの?」

 「ニコ、ジンは元クラル様直属の騎士だ。」

 「ええ!?」

 「あの大虐殺が起きる1年前に俺はパースで皆を守るようクラル様に頼まれていた。...思えば逃げてきたお嬢を助けるために采配されたのかもな。」

 「だからジンあんなに強かったんだ...。」

 「ま、そんな感じだ。」


 なんと、ジンの正体が元騎士だったとは...。

 通りで魔力が高く感じる訳だ。


 「ウダスは今後どうする、何もないならパースに来てくれると助かる。」

 「さっきも言ったが色々手伝うさ。俺達がつかえた方の意思を守るのも残された者としての使命だ。安心しろ、書類仕事はこう見えてできる方だ。」

 「はは...それは頼もしいな。」


 「それにしても...派手にし過ぎたかな?」

 「別にいいんじゃないか?」


 派手に削れた地面...復興大変そうだな、ごめんなさい。


 「...?何だあれは?」

 「ん?」


 削れた地面に何か落ちている。結晶..?


 「...!?呪力封印結界!!」


 ウダスが結晶に向かって結界を張り拾い上げる。


 「こいつだ、バノスを獣に変えた結晶は。」

 「これが...。」

 「本来なら各国代表会議に提出し対策を取るべきだが...どこに研究所の奴らが潜んでいるかわからない。ここで破壊する。」



 「させませんわ。」

 

 ザクッ...


 「...!?」


 背中に爪のような切り傷、血飛沫を上げるウダス。


 「ウダス!!?」

 「結晶は回収させてもらいます。貴重なデータを集めるのに有用なものであると我々は判断致しました。ではこれにて...!?」


 現れたのはあの研究員の女。

 彪の爪でウダスを斬りやがった。

 逃げる瞬間、ニコが腹部に向かって蹴りを与える。


 「ガハ...!?」

 「でやああ!!」


 ガシャァッ!!


 「..!?結晶が!!」

 「結晶は渡さない、お前も逃がさない。」

 「...この野郎!!!」

 

 彪女は怒りをあらわにする。

 わざわざ来てくれたんだ。

 色々聞きたい事がある、体力全消費覚悟で突っ込むしか...!?


 ドクンッ...


 (称号:多趣味のバッドステータスより、個体キジコは種族的な肉体上これ以上の領域へ進む事は出来ません。なお、予想よりも過剰に神的エネルギーが増大しております。直ちに状態の平常化を開始致します。

 ...キジコさん!!死なないで!!)


 「な..あ゛!?あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!??」

 「!?」


 同じ神獣候補であるニコと魔力共有した事により神的エネルギーが増大、しかし私の内にあるバッドステータスはそれ以上の領域を許さなかった。


 それにより私は激痛を伴い反動が発生、ニコとの魔力共有が解除され与えられた魔力が解除、無理矢理エネルギーが素の形に変化されてゆく。


 最後にスズネの声が聞こえた、この状態を恐れていたのか。


 これ以上先の領域は許されない...それはつまり。


 「うあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!??」

 「キジコ、キジコ!!!」

 「何だよこれ!?あんな技撃ったのにキジコから魔力が溢れ、形を変えている..!」

 「雑魚どもはどきやがれ!!」


 彪女は皆を秒で皆をぶっ飛ばす。


 「...何があったかは知りませんが...私は貴方達を絶対に許しません。我らを邪魔した罰...ここで受けてもらいます。特に神獣候補キジコ!!お前には散々迷惑食らってんだよクソが!!...まず最初に殺してやる。」

 「させない!!」


 ニコがキジコの前に立つ。


 「...もうこれ以上、誰も傷つけさせない。特にお前らにはな。」 

 「黙れクソオオカミ!!死ねやああああ!!」


 彪女はニコに向かってその狂爪を向け襲いかかる。


 「ニコ!!」

 「逃げろ二人とも!!!」

 「私は逃げない、キジコを守る!!」


 もう誰も失いたくない!!!


 

 パシッ...


 「え...?」

 「ニコ...!?」

 「な...なんだよ...なんだそれは!?」


 光り輝くプラチナ色の髪。


 しかし一部が元の髪色。


 さっきまでとは比べ物にならない神々しい力。


 凄まじい威圧。


 覚悟を決めた目。


 圧倒的な魔力。


 「ニコ...。」

 「嘘でしょ...離せ...離せ!!」

 「ダメ、さようなら。」


 ニコは彪女の手を握り潰す。

 すると彪女の体は内側から白い光が溢れてヒビが入る。


 「いや..いやああああああーーーー!!!」

 

 彪女が消滅する瞬間まで、恐怖に染まった叫びが消えることはなかった。



ーーーーーーーーーー


 

 「...これは。」

 「お嬢...その姿は..!?」

 「ニコ..!?」


 まさか...覚醒の資格を持っていたのは...私...!?


 「...まだ完全じゃねぇ、だが間違いない。今世紀神獣になるのはニコ、お前だ。」


 キジコはスアに治療を受けながら、意識が少し朦朧としているがニコをじっと見ている。

 

 「ご主人様...。」

 「...そっか、やっぱり。」

 『主人...?』

 「やっぱりって...?」


 「私の称号に多趣味ってのがあるんだけどね、これにはバッドステータスがあるんだ。

 隠しスキル:極められぬ者、今まではっきりした基準がなくよくわからなかったけど...なんとなくわかった。


 このスキルを持っている限り一定以上自身を強化をする事が出来ない。


 色々出来る、多彩な人はさ...色々出来る分一つの分野を長く極めないというかさ、純粋にある分野を極めた人と比べればその分野においては技術が劣る。

 人にもよるかもしれないが大抵はそうだ、[この道何十年のプロ]か[器用だからそういうのも出来ますよ]と比べれば当然前者を選ぶ。

 

 それがモチーフなのかなんなのか、私はスキルを多く手に入れられる分のハンデ...いや[制御装置]かな、それがこのバッドステータスだよ。


 そしてそれは己の強さそのものにも関わっていた。神獣にはなってないけどその力を共有したのはアウトだったらしい、それがさっきの激痛だ。


 ...こんな所だ。ニコはまだ完全に覚醒していないから候補称号は残ってるけど、事実上これで私は自由の身だったりな..はは。」


 そう言ってキジコは気を失った。

 その生命反応は低下しておりスアは焦り治療をする。


 気づけば私は髪の色が戻っていた。



 ...私が神獣。


 ...私は私、神獣になってもいつも通りどんと構えてればいい...


 ...そのはずなんだ、


 ...なんだよ...


 ...この涙は。


 私もそこで意識が消えた。

災厄之終焉ロストカタストロフィ

•魔力共有をした事でキジコの能力の一部がニコにも伝わった結果発動した技。元は魔砲撃...極限魔力大砲撃ギガブラストなんだがニコの能力でニコなりに改変された結果こうなった。

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