第112話 人の心vs獣の意志(9)
静かに吹く風。
大量に横たわるバノス兵。
なにがあったかというと、
・目立つよう騒ぎ立て小隊エリア(1)制圧。
・騒ぎを聞きつけエリア(2)の小隊が増援にくると睨む。
・森に身を隠し、増援を待ち伏せ。
・本当に来た。
・やってきた兵を倒す。
・今に至る。
って訳である。
特にこれと言った目立つ見せ場や面白い事が無かったからカットしたとかじゃないよ、作戦が良くてすぐ終わっただけだよ。
というわけで小隊撃破した私達。
「とりあえず小隊[は]全て倒したな。」
「...[は]って事は...ああそうか、そういやバノス軍はパースの兵よりも多いんだっけ。本軍隊とかがあるって事?」
「そうだ。小隊である程度でもダメージ与えた所で本軍が出撃...って感じだ。数はさっきの比じゃねぇ、数はわかるが聞かない方がいい。やる気失せるから。」
「うわ...そんなのに攻め込まれたらやばいじゃん!?」
「ああそうだ。だからバノスを討つ前にそいつらを先になんとかしなきゃいけない。」
「え...でも数が..。」
「作戦はある、大丈夫だ。」
「そ...そうか。」
ウダスが何を考えているかわからないが、この中で敵陣について一番知っているのは彼だし任せるしかないか。
私達はエリア(1)と(2)を通り、城下町へ向かう道を歩ん...ではいない。
今いるのは森の中。誰かが使っている隠し道なのかわからないが獣道のように歩いてる場所が草が生えていない。
相手は超大人数の兵士、正面きって戦える数じゃない。おそらく奇襲仕掛けるためにこの道を使っているのだろう。
「...お、あったあった。」
「ん?」
ウダスは目の前の木に近づく。
そこには何やら赤色の木の実がなっているが...腹減ったのか?
と思いきや、ウダスは木の実を軽く弾く。
リーン....
「...鈴の音?」
「この木の実はな、魔力を込めて弾くと鈴の音がなるんだ。魔力量のちょっとの違いで細かい波長が違ってな、今のは城下町へ忍ばせている仲間への合図だ。」
「え、聞こえるの?」
「秘密の特殊道具を持たせている、一応聞こえるぜ。」
うわ気になる。
「やっぱり奇襲作戦なんですね、先生。」
「当たり前だ、相手にしてられるかあんな数。後はこの先少し進んだ所にあまり使われてない道がある。仲間の1人がそこにいるから合流する。」
「...思えば何人いるの?ウダスの部下って。」
「50人はいる。皆かつて生き残ったクラル様やラミ様の部下達だ。」
「そうなのか。」
「皆見つけるのは苦労したが、その志は変わっていなかった。」
そう言ってると、少しボロボロのレンガの道が見えてきた。おそらくこれが言っていた道なのだろう。
そして少し先に見えるのは壁...城下町の壁である。私達はついに敵の本拠地へ辿りついたのだ。
「裏口門か何かか?...ってあれ 、お仲間さんは?」
確かこの道に出た時に出会うんだったよね?どこにも見えないのだけど...。
だがウダスは裏口門に向かって歩き始める。
しかもその先には2人、兵士がいるではないか!?
ちょっと待ってー!!
「...あいつらは?」
「はい、例の配置に皆着いております。あとは実行のみです。」
「わかった。」
「...え?」
「こいつらが言っていた仲間だ。ただの変装だ。」
そういうことかーーー!!
よく考えたら前世のアニメでもそういう展開あったわ。
「じゃあ着いて来い、こっちだ。」
ウダスについて行き、私達は敵の本拠地へついに突入したのだった。
ーーーーー
インヴァシオン派領域本拠地、バノス城下町。
ヒト気のない薄暗い町の端っこ。
私達はウダスに渡された黒布フードを被り急いで進む。今向かっているのはすぐ近くにある建物だ。なんでも近辺にある自分が所有する館に通じている地下廊下があるらしい。
パース兵が皆入り私達も皆入ろうと..した時だった。
「お、ウダス戻ってきてたのか!」
「!?」
急に現れたのは重装備の獣人。
「ダードンか、いつぶりに会ったか...。」
「そういうのは良いだろ...ん?そいつらをは?」
ドキィッ
「ああ、しばらく別の地に潜入させていた仲間だ。今回の事もあって戻って来てもらった。」
「別の地...そんな調査あったか?」
ドキドキ
「おいおい...たまにお前の所にも離れた地の情報とか少し回ってただろ?」
「ん?ああ...そういえばあったな、こりゃすまねぇ。」
「いいんだ、俺達は作戦会議しなきゃいけないからまた後でな。」
「ああ、止めて悪かったな。」
そう言って重装備の男は去って行った。
ウダスさんのお陰で助かった。
「それじゃ、今日までの我が館へようこそ。」
内装は綺麗。
私達は3階にある部屋にやってきた。
そこは窓から町が綺麗に見えるがどこもちょっとボロい。そして武装した獣人...本軍隊らしき姿の奴らが結構いる。
「これから何をするんだ?あ、ジュースどうも。」
「わからない、先生の事だから絶対すごい事が起きる。クッキーどうも。」
『モグモグ...。』
「良い香りです...。」
「...緊張感ないですね...。モグモグ...。」
「別に良いだろ、これからでっかい事やるんだから休憩くらいする方がいいさ。」
まぁセーブポイント的なのあった方がいいよね。だが、でっかい事とは一体何をするのだろうか?
私達は休憩を終え、出撃準備をする。
ウダスは先程から念話で部下と連絡を取り合っている。
「...わかった。お前ら、準備はいいな?」
「はい!」
「では..。」
ウダスはサムズアップする。
よく見ると人差し指の所に小さな赤い魔法陣がある。
ポチッ
ドォォォーーーン!!
「!?」
ドカーーーン!! ドゴォーン!!
「ば、爆発!?」
「作戦その1、部下に町の中に仕掛けさせた爆破術式を起動。行くぞ!」
私達は館を飛び出し町へ出る。
「作戦その2で今部下達が町中で侵入者が出たと言い回っている。これで一旦あいつらの目的はパースへの進行はなく侵入者、襲撃者の排除になる。」
バノス兵はあちらこちらでパニックになっており、指揮が崩れている。
「作戦その3、有力な指揮官の排除だ。これを成せば出陣所ではないはずだ。キジコ、お前はコイツを」
ウダスは私に写真資料を渡す。
「コイツを始末しろ、回復されては困る。」
「...わかった。」
私は資料に書かれた情報をもとにその場所へ向かった。資料によると、この軍でも幹部に当たる存在であるらしく指揮官として活躍しているが故に始末する必要があった。
ウダス達も他の指揮官の始末、残ったメンバーは別の場所に身を隠している。
迅速に終わらせよう。
私は隠密を発動し、暗い路地を進んだ。
それからすぐ、ターゲットは見つかった。
狭い路地を逃げるように走っていた。
本来ならば現場でどうするかの判断をするべき人物がこの程度であれば放っておいてもいいんじゃないかと思ったが流石にダメだと思い、私はその指揮官が走っている道の先に立つ。
「な...なんだお前!!」
「ごめんね。」
私は猫爪で高速に斬り捨てた。
「こちらキジコ。指揮官排除完了。」
「わかった、それじゃニコ達と合流しろ。場所は..
ーーーーー
それから私は皆のいる場所へ戻ってきた。
「ご苦労さん。」
「なんかこの肉体で初めて猫らしい事した気分。」
普段は人間として人生楽しんでたからね。
「...殺したくなかったか?」
「いや、ターゲット自身現場から1人で逃げてたからなんかヤな奴だなって思った。それに今は戦争、命のやりとりが隣り合わせの現場で甘ったれた事はしない方が良いかなって。」
「...面白いな、お前。」
「皆、見ての通りあいつらは今絶賛パニック状態。おそらく城も緊急事態で厳重警戒だろうがこればかりは仕方ない。今から行くバノス城は正面突破だ、異論ある奴は?」
「質問があります先生。」
「ん?」
「隠し通路とかはないのでしょうか?」
「自信過剰のバノスが用意してると思うか?」
「ナットクシマシタ。」
ないのですね、隠し通路。
「こっから先はパース兵の皆さんの力も重要になります。どうか気を引き締めてほしい。」
「大丈夫です、この戦争に参加した時点で覚悟はとっくに決めています!」
「なら頼もしい。では...行くぞ!!」
いざカチコミ!!