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猫に転生しても私は多趣味!  作者: 亜土しゅうや
波乱のマイライフ編
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第111話 人の心vs獣の意志(8)

 「ようやく...ようやく...!」

 

 大粒の涙を流す暗殺隊長のウダス。

 彼は長年待っていた、憎きバノス達を討てる仲間を。

 

 「ウダス様、ポーションを。」

 

 彼の部下は私とウダスに何種かポーションを渡す。どうやらこの時のためだったのか準備がとてもよろしい。


 「...先生。」

 「クラル様、ラミ様...お嬢様はご立派になられました...。」


 ウダスはペンダントを握り祈る。

 

 「先生、父上と母上に祈るのはまだ早い。それと話し方はあの頃と同じで良い。そっちの方が話しやすい。」

 「...そうだな。」


 ウダスは再び顔隠しを付ける。


 「先生、知ってはいるだろうけどパースは今リーツと同盟を組み戦力は増大しました。」

 「ああ聞いてるぜ、まさか特定の国に武力加担しないっている中立がそんな事をするとはなぁ。」

 「色々ありますからね。その考えちょっと古いですよ、中立国家は今や他国の仲介や結びを作る国です。緊急事態であれば武力加担もありますよ。」

 「そうだな...待てよ、お前パースは大丈夫なのか?」

 「そうじゃん!ニコ、パースは大丈夫なの?」

 「ああ、桃花様が守るとおっしゃり私はこちらに向かうと良いということで...。」

 「え、桃花様が...?」

 「すっごいやばかった。確か...序列の三だとか、感じ切れないほど膨大なエネルギーというか白黒というか。」

 「なあ!?」


 ウダスが腰を抜かす。


 「ま..まさか、骸積むくろが...!?」

 「え、先生知ってるの?」

 「...この世にはな、[位階序列]と呼ばれる実力の高い存在がいる。序列は10まで、その10体の存在は我々の遥かに...果てしなく上の強さだ。その存在意義は世界の守護。神獣や秩序之天秤スターリブラよりも立場は上、それに挑むのは愚かなんてもんじゃない。」

 「そうだったのか...。確かにこの世で3番目に強いだとかなんとか。」

 「ああ、序列の三...骸積むくろ。逸話の一つ、今よりもずっと凶暴な魔物が蔓延っていた時代...少女は突然現れ、嵐でも起きたかの様にその場は一瞬で怪物の遺体が高山の如く積まれていたそうだ。赤月よりもずっと赤く滴る血はその地を飲み込み、深紅に染めた。その頂に座る少女はただ笑っていた、その姿を見た当時の人間は[ 深紅しんくの死神 ]と表現するほどだったという。」


 マジか...桃花様そんな強い人だったのか...。確かにそりゃパースは安全ですな。


 「ウダス様、選定に向かっていた仲間が揃いました。」


 森の方からさっきボコボコにしたであろう暗殺者達が戻ってきた。彼らも仲間だったのか。

 さっきはごめんね☆


 「では...行こう。」

 「ああ。」


 暗殺者チームという仲間が一気に増えた私達はバノスの城へ向かった。


ーーーーー

 

 「こっちの道が近い...のだが。」


 目の前には土と岩石の山。


 「...一昨日の雨で土が緩んだなこれは。」

 「参りましたね...。」


 ウダス達の様子を見る限りどうやらこっちの道が近いらしいのだが、この辺りに雨が降って地盤が緩み土砂崩れが起きたらしい。


 「緩んでるのだとしたらこの先の山道は危険だな。...別の作戦で行くぞ。」

 「別の作戦?」

 「元々は城の隠し道からこっそり侵入するつもりだったがこれじゃ難しい。あと残っているのはバノス軍が山ほどいる道...。」

 「...まさか。」

 「正面突破だ!」


 暗殺隊長の称号とはなにかと疑う発言だがよくよく考えれば彼らは気配消せば良いだけだし、そもそも実戦に正々堂々も卑怯も関係ないので考えるのをやめた。


 「先生、バノス軍の小隊はあとどれくらいいるの?」

 「この先あと2つほど小隊の集まりがあるくらいだな。この先と城の前、残りは城に固まってる。」


 「...ねぇ、先生は今回バノスが突然パースを襲った理由って知ってる?」

 「ああ勿論だ。事は少し前...どっかの研究所が姿を消した事からだ。」

 「...!!まさかマギアシリーズの!?」

 「そうだ、バノス達と手を組んでた。...いや利用していたってのが正しいな。奴らの契約内容は必要な実験をするためにマギアシリーズを提供していただけであって、その実験が終われば提供するどころか滞在する理由もない。」

 「つまり...その実験が終わったから姿を消したって事?」

 「そうだ。んでバノスはマギアシリーズだけを動かして他国を攻めれば、自分達が攻めたとバレないと考え色々試していた。んで本格始動の前に全部居なくなって乱心、もはや獣の本能に飲み込まれたのか自分が上に立とうと神獣候補であり自身が知る限り最も優れた存在であるお前...いやお前達の存在を潰すって言うくだらない理由だ。」

 「...。」

 「ただ...そうなる前、研究所の者がやってきてな...。」

 「?」

 「バノスになんか変な結晶を渡してな...。それ以降俺は出撃...というより選定に向かったからわからない。だが研究所が用意したモンだ、碌でもないのは確実だからバノスと対峙するなら気をつけろ。」


 結晶...?

 これまた得体の知れない物というか単語が。


 「思えば...奴らがしていた実験内容ってなんだったのでしょうね?」


 パース兵の1人が疑問を投げる。


 「確かに...我々はその様な光景は見ていませんでしたが、ウダス様は何か知りませんか?」

 「残念だが俺もわからない。奴ら隠れるのがうまいっていうか、俺もなにをしていたのかがさっぱり...だがな。」

 「?」

 「実験期間中はどういうわけかインヴァシオンの獣人が何人か消えていた...とだけは言っておこう。」

 「...悪い予感がするな。」


 まさか人体実験とかしてるのか?

 結晶にしろ実験にしろその答えはいつかわかるだろう。


 謎が深まりながらも私達はバノス城に向け歩む。


ーーーーー


 「見つけたぞ、小隊の集まりだ。ざっと200はいるな...。」

 「...大体3〜4隊はあるね。」

 「キジコ、とりあえず正面から行くにしてもなんか危ない気がするよ?」

 「確かに...。」


 生憎と数は向こうの方が多い。

 隠れてペネトレーザ撃つか?いや反撃されたら他の人が危ない。


 「先生達の隠密能力なら...。」

 「あの数だとかなり目立つ何かが必要だ。」

 「あ...そうか。」

 「いや?都合いいのあるじゃないか。」

 「え?」

 「キジコ、お前俺達と出会ったばかりの時かなり目立つ赤い服だったじゃないか。それも派手な魔力を撃てる。」

 「あ。」



 ざわざわ...

 

 「お前らー!パースの奴らがもうすぐ来るだろうからさっさと準備しろー!」

 「ハッ!」


 ドゴォォォーーーーン!!!


 「ギャアアアアア!!」

 「うわあああああ!!」

 「な...なんだ!」


 挿絵(By みてみん)


 「異世界来て一度こういうポーズでかっこよく目立つのやりたかったんだよなぁ。」


 妖しい色の炎と共に現れるキジコ。

 これは目立つ。


 「な、なにをしている!倒せ!!」

 

 武器を持った兵士達が襲い掛かる。


 「青之火炎アズールファイア!!」

 「うわああ!?」

 「雷砲撃サンダーブラスト!!」

 「ギャアアア!!」

 「精霊之瞬光フェアリーフラッシュ!」

 「わーーー!?」


 ドッカンキラピカ襲撃するキジコ達。


 「俺達も手伝うぞ!」

 「おー!!」


 パース兵たちも自分達の武器に光魔法を付与、思いっきり輝かせる。


 「うおおお!!」

 「眩し..ギャア!?」


 目眩しにもなるのでどんどんバノス兵を倒してゆく。ちなみにパース兵達は対光魔法してるのでご安心を。(サングラスの魔法版)


 「に..逃げろ!」

 「撤退だーー!!...ギャア!?」

 「なんだ..ウガァ!?」


 キラピカしてる中逃げるバノス兵達。

 しかし何者かに斬られる。


 「なんだ!?気配がわから..ガアッ!?」

 (うまくいってるようだな...暗殺部隊!)


 作戦はこうだ。

 (1)キジコ(鳳凰)を中心に、

   小隊に向けとにかく目立つ技を放つ。

 (2)一般兵は光魔法を駆使して数で目立つ。

 (3)暗殺部隊は気配を消し、

   皆が目立つ隙にバノス兵を倒す。


 色んな強さを持つ人達がいればこういうのって上手くいくもんだな!


 「いっけえええ!!」



 それから少しして、バノス小隊エリア(1)の制圧が完了した。


 「ふぃ..お疲れ様。」

 「あはぁ...!!」

 「...?どしたニコ。」


 あ、そっか。

 魔法具の鳳凰をじっくり見たかったのだっけな。正確にはそれを着た私だけどさ。

 

 「目立つ作戦は成功だな。んじゃここで適当でも良いからテントでもなんでも張るぞ。」

 「え?」

 「待ち伏せだ。あれだけ目立てばエリア(2)の小隊が増援に来るはずだ。城は厳重な警備だからって理由で案外油断して全員で来るかも知れんしな。」

 「そんな単純かなぁ?」

 「俺達獣人は衝撃ある物には興味惹かれやすいんだ。意外と上手く行くかもだぜ。」


 そういや日菜ちゃんの実家之犬だって初めて合った私をすっごく嗅いでいた。それと似た感じかな...?


ーーーーーーーーーー


 囮のテントや案山子を用意している中、スアが話しかけてきた。


 『ちょっと良いかしら?』

 「ん?どうしたのスア。」

 『...変なのよ。』

 「え?」

 『森の生き物がざわついている。』

 「...さっき派手に暴れたからじゃ...。」

 『そうじゃないの!...まるで絶対的な強さと立場を持つ獣がいるかの様な、恐怖に飲まれた風を感じるの。』


 スアは大地の精霊。

 こういう自然関係においてはこの場の誰よりも詳しく、感じ取りやすい。


 「それは一体...。」

 『...わからないわ。』


 スアは不安な表情をしている。

 どうやら思った以上に深刻な状況であるらしい。


 「...もしかしたらあの結晶と関係があるかもしれない。」

 「ウダスさん...?」


 話が聞こえたのかこちらへ来たウダス。


 「仮にも俺は暗殺者。自然の中に身を隠し気配を溶け込ませる技術を持ってる故に多少だが自然の流れってのがわかる。そして今森はそのスアが言った様に怪しい風が吹いている。このピリつく感じ...あの研究員が置いて行った結晶と同じものを感じる。」

 「な!?」


 だとしたらそれの出所はバノスの城か?

 一体...なにが起きているんだ?


 「そろそろ隠れるぞ、増援もそろそろ来るはずだ。」

 「わかった。」

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