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猫に転生しても私は多趣味!  作者: 亜土しゅうや
波乱のマイライフ編
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第110話 人の心vs獣の意志(7)

 「はぁ...はぁ...。」

 「ハァ...これで終わりだ!!」

 「同感だ...これで最後だ!!」


 剣に大量の魔力を込める暗殺隊長。

 刀に残った魔力を溜めるキジコ。


 「「はああああぁぁぁぁ...!!」」


 碧色のエネルギーが光る暗殺隊長の剣、

 水色混じる炎激るキジコの刀。

 

 これで決着がつく。


 「悪くねぇ相手だったぜ。」

 「しばらくこういうのはごめんだわ。」


 両者の刃が輝く。


 「ギーグティック...

 「化猫妖え...


ーーーーーーーーーー


 「ハッ...ハッ...!」


 魔身強化の出力を上げ、少しでも早く辿りつこうとするニコ。途中その姿を見た兵士は、大地をかける狼の様だと言っていたとか。



 「早く...早く追いつかなきゃ!!」


 急げ、間に合え。

 バノスと決着を付けるという意味もあるが、それとは別に知りたい事があるのだ。

 そのためにはキジコとウダスの戦いが終わる前に追いつかなきゃいけない。間に合ってくれよ!



 これ私が叔父...バノスに無理矢理教育を積まされていた頃の話だ。

 ある時、バノスは戦闘訓練がそろそろ必要だと言い手を引っ張られある部屋に連れて行かれた。


 入れられたその部屋の中央に、顔の目元だけが見える黒い服装の男が立っていた。

 それは当時のウダスで、バノスは戦闘訓練の指導官にその場で任命させた。


 私は何がなんだかわからなかった。

 ウダスは私にいきなり剣を持たせこう言った。


 「かかってこい。」


 ただその一言だけだった。

 まだ剣術は何も習っていなかった私はただ剣をとにかく振った。

 

 「...無知はこんなものか。」


 そう言いウダスは隙だらけの私も攻撃をわざと当たったり(無傷)、適当に反撃を喰らわせてきたりと腹立たしい事を繰り返す。


 「はぁ...はぁ...。」

 「体力が成っていないな。まずはそこからだな。」

 「ウダス!今日はそこまでだ。」


 初日はそこで終わった。

 私は解放され両親の元へ走って行った。

 母上は私を抱きしめ、父上は泣いていた。

 しかしこの日はどこか妙に感じたが...気のせいか?


 次の日私はまた放り込まれた。

 

 「重力増加プラスグラビティ。」

 「!?」


 訓練が始まるやいきなり私は体が重くなった。いや、させられた。


 「まずは1.5倍からだ、基礎体力を鍛えるぞ。」


 その日私は重い体のまま広い訓練所内を走らされたり、剣術を習ったりとした。

 ちょっと動くだけで結構な負担だっていうのにその状態で色々訓練を受けたからすごく疲れた。


 結果その日はあまりにも疲れその場に倒れる様に眠った。

 途中起きたら私は自室にいた。

 横には母上が涙を浮かべながら眠っていた。

 朝起きると大変だろうから拭き取ってあげた。


 さらに次の日。

 また1.5倍の重力をかけられ、今度は格闘訓練を受ける事になった。


 「少しでも素早動けるようにするためだ。たとえ当たるとしても避けろ。今は全力で避けろ。」


 重力が増えた状態でいきなり避けろだと?

 ふざけんなこんな重いのに。

 私は息を切らしながらもとにかく避ける動作を繰り返す。


 「...今日はここまでだ。」 

 「...。」

 「これを飲んどけ。飲んだらすぐに親の元へ戻るがいい。」


 そう言って市販品の疲労回復ポーションを渡された。喉が乾いていた事もあってか私はすぐに飲み干した。

 冷蔵保存されていたのか割と冷えていた。


 それからも重力増加状態の訓練が続いた。

 高く飛ぶ訓練、

 防御の訓練、

 反撃の訓練、

 走る訓練、

 各種武器の取り扱い訓練、

 そして..攻撃の訓練。


 「はあ!」

 「ふむ、少ない動きでダメージをちゃんと与えている。体力配分を考えておくのは非常に大切な事だ、あと先考えず適当にエネルギーを使うのは良くない。」

 「...はい。」


 日が経つにつれ基礎が構築されてゆく。

 それに加え重力増加量が0.1づつ増えており、気づけば合計2.0になった頃だ。


 私は外に出た。

 今日の訓練はいつもより早い時間からだった。

 向こうでバノスとウダスが話している。

 バノスは何やら怒った様子であり、ウダスは全く動じずただ話していた。


 「ニコ。しばらくは重力増加を使わない。」

 「え?」

 「今からこの森に入ってもらう。まずは5時間だ。」


 そう言われ森に放り込まれた。


 森の中はとても静か。

 バノスがギャアギャア喚く部屋と比べればなんて快適な空間なのだろうか。

 私は持たされた短剣を使い、木々に傷をつけながら森の中を進む。


 最初に見つけたのは黄色の果実。

 ウダス曰く、味はないが水分が多く腹を満たせるとのこと。毒はない。

 とりあえず体力維持のため一つ食べた。

 

 次は魔物の遭遇。

 相手は群れからはぐれたであろうアイアンディアー。

 私を見るやいきなり襲いかかってきた。

 

 幸い木々が多くアイアンディアーには少し狭い場所だった故、突進してきた所をギリギリで避け、木に角が突き刺さった所を狙い首に向かって鍛えられた脚の一撃を加えた。

 そのままアイアンディアーは倒れ込み動くことはなかった。


 それから特に何もなく4時間経過。

 ちょっと退屈だったがまぁいつもと違って意外と面白かった。


 そうして木々につけた傷をたどり戻ろうとした時だ、ドスンッと足音が聞こえた。

 振り返るとそこにはより硬そうな角と強そうな筋肉を備えた鹿魔物がいた。

 資料で見たことある、アイアンディアーの上位個体...ハード・アイアン・ディアー。


 私を見ると怒りを顕にして襲いかかってきた。もしかしてさっきのはぐれた下位個体探しにきた感じ....?んで倒した私を追ってきたの!?


 魔物鹿は荒げた様子で角を振り回している。

 あんなの当たれば大怪我するだろう。


 私はさっきと同様の方法、誘い込んで角を木に刺させようとした。だが、パワーが強く刺さりはしたがすぐ木を抉り削る様に脱出、すぐさま私を狙う。こんなパワー聞いてなーい!


 そのまま魔物鹿が突進しては避け、突進しては避けるの繰り返し。

 

 私は逃げる様に森の入り口...いや出口か?

 そこに向かって走る。

 だが魔物鹿の方が走力が上、追いつかれ私はまた避ける。


 正直息が切れてきた。

 体力的に厳しい。

 

 アイアンディアーも息を荒げながらこちらを睨む。

 ああ、私ここで終わりなのかな...?


 ...待てよ?

 あの魔物鹿も息を荒げてるって事は体力が減っている事...。

 仮にも生き物、体力も限界があるはず!

 これしか状況打開はない!


 私は息を整え、魔物鹿を挑発する。

 魔物鹿は見事と言わんばかりに挑発に乗り襲い掛かり、木に角が刺さる。


 結局木を削って私を狙うが、さっきよりも速さが落ちていた。

 これを繰り返したら!


 そのまま私は堅そうな木を見つけてはそれを繰り返させる。

 狙い通り魔物鹿は体力がどんどん減っていった。


 そして、とうとう突き刺さった角を抜く体力が無くなった。

 私はその隙を狙い、近くにあった大きな石を頭に向かって全力で叩きつけた。



 ...5時間経過。

 私は森を出るとウダスと両親がいた。

 

 私は両親に抱きつかれ、ウダスは城へ去って行った。


 「最初にしてはよくやった。」


 ただその一言だけ言い残して。


 その夜、風呂から出た後両親と話していた。

 

 「ニコ、ウダスの訓練は辛くないか?」

 「今日のはまだ楽。森は涼しかったし食べられる果実もあった。...ちょっと楽しかった。」


 両親はそれを聞きただ黙って頷いた。

 思えばウダスの件はちょっと妙な両親。

 でも疲れてたのでそんな事は気にしずその日は寝た。


 それからたまにこうやって森に放り込まれる訓練があり、あの大虐殺が起きるまではあまり変わった日常は無かった。


 ただ変わった事、それはいつのまにかウダスを[先生]と呼んでいたくらいだった。



ーーーーーーーーーー


 話は戻り現在....


 森の中を進んでいると争った跡が残っていた。

 前を見ると光が見えた。

 間違いない、キジコ達はこの先にいる!


 私は全力で走った。

 間に合えと必死に思いながら。




 「ギーグティックスラッシュ!!!」

 「化猫妖炎斬かびょうようえんざん!!!」


 「!!??」


 到着直後、

 碧色のエネルギーと妖しい色の炎がぶつかり合った。


 「...相討ちかよ。」

 「ケッ、期待できる若者だ...。」



 「キジコ..... 先生!!!!」


 「ニコ!?」

 「お嬢様...!?」

 「...え?」


ーーーーー


 「今あんた...ニコの事...。」

 「先生...お久しぶりです。」

 「...ニコか、久しぶりだな。俺のこんな無様な姿を見にきたのか?」

 「違う!...やっぱり先生、私のことお嬢様って言ったよね?聞こえたぞ!」

 「...なんの事かな。」

 「とぼけるな!!...昔妙だったんだ、先生の件になると両親から感じる雰囲気がちょっと変だった...。私の両親とどういう関係だったんだ!?」


 「...隠しても無駄か。俺は正確に言えばバノスの部下ではなく、クラル様の部下...お嬢様の父上直属の部下。バノスにはこの事を隠し奴の下にいた。...何か妙な動きをしないかな。

 ある時バノスがいきなり部屋を訪ねてきたと思えば驚愕した、お嬢様が連れてこられたんだからな。

 だがわたくしはこれをチャンスだと考えた。

 もしバノスが平穏派を手にかける時やその後を考え生き残れる様、鍛えさせるべきだと考えた。

 お嬢様を鍛える日々は必要な事であったが辛かった。この顔隠しをはずさなかったのも悲しい表情を見せないためだった。

 ...お嬢様はバノスが見込んだ才能だけあって、その幼さでありながら実力を早く上げた。

 私とクラル様、ラミ様はこれにいつも喜んだ。これでいつか何か起きた時、私達が何かあった時にお嬢様は生き残れる可能性があがったからだ。

 そして事件はおきた...あの大虐殺だ。

 俺は当時請け負った仕事を終え国へ戻っている最中だった、燃え盛る国を見て俺は急いで戻った。

 だが...遅かった。

 クラル様とラミ様は血を流していた。

 意識はあった...だがもう長くなかった。


 「クラル様ぁ!!ラミ様ぁ!!」

 「...ウダスか..ニコは無事逃げれたぞ..。」

 「...!!では..お二人も...!!」

 「私達はもうダメ...。ウダス、あなただけでもお逃げなさい。」

 「そんな!ダメで...。」

 「ウダス!」

 「!!」

 

 クラル様はペンダントを私に渡した。


 「...今までありがとうな...。もし機会があれば...ニコを...頼む。」


 そう言い残しお二人は息を引き取った。

 私は燃え盛る城の中を涙を流し逃げた。


 私は決めた、いつかバノスを討つものを待つと。そのために...それに相応しい人物を任務の中で見つける事。

 私自身はバノスを超える強さを持っていてもバノス軍...インヴァシオン派は数が多い。私1人では歯が立たない。だから下手により大きな実力は隠し、今もこうやって見極めている。

 そこに横たわっている三下達も昔からの仲間、クラル様の部下であり俺の部下でもある。

 そして今...ようやく希望の光が見えた!

 全力の俺と相討ちで終わらせたすげぇ奴が来た!

 俺の努力は...無駄じゃなかった。

 

 ...話が長くなったな。

 お嬢様が現れたのは予想外だった、でもこうやって貴方様がご無事である事をこのウダス、心よりお喜び申し上げます。」


 ウダスはその場で顔隠しを外し、涙を流した。

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