第106話 人の心vs獣の意志(3)
な...なんじゃこりゃ...!?
その景色を見渡す私キジコ。
私は新たな装備を手に入れ、最前線である平野にまでたどり着いた。道中スアが発動したであろう精霊術の跡があったので、よりはっきりした位置を特定し追う事が出来た。
そしていざたどり着いてみれば、目の前に広がるのは倒れているインヴァシオン派...バノス兵の数々。
あたりには大型魔物の足跡が残っており、ここで暴れたであろう事がわかる。一応バノス兵達は辛うじて生きているようだが...こりゃ酷い光景だったに違いない。
一体...何があったんだ...!?
そのお話はある程度前に遡る。
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キジコと桃花が鳳凰の作成、融合作業をしていた時の話である。
ルザーナ達はバノスの城が見える平野にやってきたのだが、バノス軍はヘビー・テイル・サラマンダーという大型の魔物を使いルザーナ達を襲う。
しかし何かに目覚めたルザーナがHTサラマンダーに話しかける、すると突如HTサラマンダーは恐怖に飲まれバノス兵達をどんどん強襲、結果少ない労力で小隊を撃破したルザーナ達であった。
ちなみにルザーナ達は体勢を整えるために後退、キジコが通った道とは別で森の中で兵達と休息をとっている。
「ふーむ、バノス軍のある程度は撤退しちゃいましたね。」
「放って置いてもいいでしょう。あんな怪物がバノス側の森に解き放たれちゃったのですから、向こうは下手に森での行動は取れないでしょう。」
作戦会議をするルザーナ達。
意外と前進している模様。
「本当にありがとうございます、我らの国のためここまで手を貸してくださるなんて...。」
「いいんですよ、困った時はお互い様って師匠から聞いた事がありますので。」
ルザーナ達の助力に深く感謝をするパースの兵達。武力で劣る彼等にとって彼女達はヒーローである。
『...ところでルザーナ、さっきのアレはなんなの?』
「...さっきの?」
「HTサラマンダーを撃退したアレです。なんかすごいオーラというか雰囲気というか。」
「ああ...アレは...その、なんというか...ふと思いついたというか、なぜか出来る気がしたというか。」
「...もしかして。」
『鑑定。』
補助スキル:蛇王
・自分より弱い同族、近縁種に対し特効を持つ圧力。
限定的な効果の代わりに効果は絶大。
『やっぱり、新しいスキルなの。』
「ええっ!?」
何やら新しい力を得たルザーナ。
「俺達も離れた所から見ていたが、...アレは恐ろしかった。」
「ああ...ゾクっとした。」
「女王様って風格だった。」
「(踏まれたい。)」
何やら新しい何かに目覚めたパース兵達。
タッタッタッタ...
「おーい!」
「は、ご主人様の気配!ご主人様ー!」
キジコと合流した!
ーーーーー
「...なるほど、そんな事がね...。」
「私、もっとご主人様に期待されるような強さになります!」
「うんうん....、」
...お前そんなキャラだったか!?
いや強くなってくれるのは嬉しいよ!?
でもなんか方向性が違くない!?
「...まぁ、みんな無事でよかった。ここからは私も加勢するから。」
とりあえず早速だが鳳凰モードでレーダーを張るとしよう。空中や遠距離からの攻撃も想定しておくべきだ。
「モードチェンジ。」
「へ?」
すると私の周りに赤い色の粒子が現れる。
粒子は化猫に集まり、形を変えてゆく。
そして化猫は鳳凰へとモードチェンジをした。
かなり簡素に纏めたが、決めポーズとかすれば特撮作品の変身も再現出来るんじゃないかな光景だった。靴も鳳凰に対応した物作れば面白くなりそう。
「すごい、赤くてカッコいいです師匠!!」
「赤も素敵ですご主人様!」
『キラキラなの。』
どうやら彼女達は気に入った様子。
ちょっと派手すぎかなと思っていたが大丈夫っぽいな。
ザワッ...
...!誰かこっちを見てるな。私はレーダーに深く集中し始める。
方向はバノス城側の森からだ、誰かいるぞ。
ふーむ...魔力は割とあるみたいだがそこまで強くは無さそうだな。
いや待て、じゃあ今の視線はなんだ?
近くには私達以外誰もいない、まるで向こうが私達の居場所を把握しているようだ。
でもどうやって?かなり距離がある上に木々に隠れてるから望遠鏡でも無理がある。
印でもあるの....か!?
「ルザーナ、使えるレーダー機能全部使って!!」
「え!?はい!!」
私も全部使う...すると。
「...!!そこの兵士さんに何か反応があります!!」
「へ?お、俺!?」
私は近くにあった飲料水をその兵にかけた。
「うおっ冷た!?」
「...!反応が薄くなりました!」
「今のは間違いない、印を付けられていた!」
「し、印?」
「...多分私達が加勢する前に戦っていた兵からつけられたのではないでしょうか?どこかに隠れられても居場所がわかるよう。」
「ということは...!?」
ピカッ
「!?レーザーネットバリア!!」
ドゴォォォォン....
「ヤベェ...バレてる!!みんな逃げろおお!!」
突如空に現れたいくつもの火球。
これは複数の相手兵に居場所を悟られているという意味である。
パニックになる兵士達。
逃げようとする者、震えて固まる者。
「落ち着いて!!下手に散ると逆に危ない!!」
しかしパニックは収まらない。
安息地なんてない、そんな考えが兵達を飲み込んだ。
すると...
ターンッ!!
「!?」
「る、ルザーナ?」
近くの岩に足を乗せるルザーナ。
「...貴方達、うるさいわ。」
「!!?」
「そんな行動取れば逆に早死にするって言うのに...ちょっとは冷静になれないの?」
その足には蛇...呪力脚を解放している。
「あ..あ...。」
「ほら...静かになれるじゃない。出来る体力と頭あったらさっさとしろ!!屑ども!!!」
「は、はい!!ルザーナ様ぁ!!!」
...異様な光景出会った。
ルザーナは岩から降りた途端、
「...!!アレ、私...何を?」
「あれ、何も覚えていない?」
「え...え...?」
「(言わないでおこう。)」
しかしバレた以上こちらも黙ってるわけにはいかないな。
「ルザーナ達はここにいて、私が行ってくる。」
「ご主人様、お気をつけて!」
私は森を抜け出した。
遠くではあるがバノス兵の魔法使いであろう存在が何人かいる。アイツらだな...さっき火球飛ばしてきたのは。
すると私に向かって大量の火球が飛んでくる。一斉射撃とはこの事か。
空間衝撃波、一気に消し飛べ!!
火球は消し飛んだ...が。
(ズドオッ!!)
うお!?結構揺れた...。加減はしたつもりだが、こりゃかなり威力上がってるなこれは。
私はとりあえずなんの変哲もない魔法弾を撃ってみる。
(ドーーンッ!!)
あれまビックリ、魔砲弾のような威力ではありませんか。
これは強い。
すると森の奥からさらにバノス兵が現れる。
だが今の攻撃で向こうもパニック状態だ。
みんな焦りん坊だなぁ...。
私はバノス兵達の方へ歩いてゆく。
「お、おい!近づいてきてるぞ!!全員撃てー!!」
また火球。
ペネトレーザで薙ぎ払ってみる。
ザシュッ
おおう、めっちゃスッパリ綺麗に斬れた!
ミゴトナキレアジナリ。
「撃て!!撃て!!」
ふむ、ペネトレーザ撃っちゃうと兵達が蜂の巣になってしまう。戦場であるとはいえ、みんなが後で通る道をグロテスクな光景にするわけにはいかない。
私はただの魔法弾をいっぱい空中に待機させる。せっかくの機会だ、向こうがいっぱい撃ってくるなら私だって真似させてもらおう!
私は魔法弾を一斉に撃つ。
その威力はバノス兵の火球の比ではなく、炎を掻き消してはバノス兵達に命中する。
「ぎゃああああ!!」
「うわああああああ!!」
すっごい声。
だがとりあえずこの装備でのスキル発動は制御が要練習であるのがわかった。
いい勉強になりました。
「何をしている!!早く攻撃しろ!!」
「神獣候補を討て!!」
「やれー!!」
そっちにもいたか!
では...まずは妖炎の練習にするとしよう!!
この時、バノス兵には恐ろしい色の炎を纏った怪物が目に見えていたという...。