第101話 増える目標
研究所の魔の手からアイを救出して2日後の事...
私、なんか燃えています!
キジコです。
別に火事が起きてるわけではなく、燃えているのはなんというか...闘争心というか向上心というか...とにかく燃えています!
バトルマンガとかで超よくあるアレです。
いやまさかこういう気持ちが強くなるなんて。
前世では格闘ゲームのオンラインのタイマンで負けたらよくこういうのなったけども、いざリアル(異世界)になると、なんかこう...ぐあ〜ってくる。
そもそもこうなったのは一昨日の出来事。
私とニコとクロマの3人で戦ったマギアシリーズのプロト10。ただでさえ奴には歯が立たなかった上に、その後に増援としてやってきた朱斗と蒼鈴が解放した神獣パワーはプロト10ですら全く敵わなかった。
私達は理解した、この二人こそが...正真正銘の化け物だと。
同時に、いつかは超えるべき相手なんじゃないかと思う。
明確な理由はない。でも、そうしないといけない感じもするというかなんというか...
(また会えるっすよ!)
...がっかりさせたくない気もするから。
ーーーーーーーーーー
ザザザァァーーーーッ
「...。」
「ご主人様...。」
「すごい集中力...!」
『はわわ...。』
現在私は滝に打たれている。
リーツは海から少し離れているが、海に向かって流れている川がある。なのでそれなり貴水域かつ広い川なので割と魚は困らないらしい。
そしてここは森の奥にある川の源流近辺であり、それなりに大きな滝がある。
源流近辺だけあってテレビで見るような大きな川や滝壺があり、深いが水も綺麗で魚も見える。
タビ曰く滝の水は降水や地面に吸われ塩分濾過された海水が時間をかけて噴き出しているのだとかなんとか、難しいから考えないのが一番って言われた。
さてさて、場面は戻って滝行する私。
精神統一....。(建前)
今の私に必要なのは正直言って純粋パワーだ。
あれだけエッグい魔力見せられたら流石にそう思ってしまう。前世で見た異世界主人公なら彼らだからこそできるすっごい手腕を見せる時であろうけど、いざ直面してみればそんな展開は無かった。
思えばこの世界に来てからハードな努力が大半を占めている。元々猫の体となって安全な森で楽しく暮らすというのが大前提だった。
(その初日で早速魔物鹿に襲われたが。)
でもそこでヴァルケオ達に出会い、いつの間にか神獣候補となり、魔勇者ヴェアートと聖勇者シルト、ゼオ達と出会って行き...数えたら日が暮れるかもな。
でもなんだかんだ、すっごい楽しいの。
こっちでもかけがえのない仲間が出来た事が今の私にとってとにかく嬉しい事なんだ。
力が欲しい。
純粋に、ただ欲望のままに。
だからこそ今の私に出来るのは地道な努力。
正直異世界来てやる事なんて人それぞれ。
どうしようが勝手、来てしまったもんは仕方がない。
多少あれだろうけど楽しんだもん勝ちだから、私は今日も楽し...
「ジャアアアアアアァッ!!!」
「今だあっ!!!」
ドゴォッ.....
シュタッ...!
「いっちょ上がり!!」
「うおおおおおおおーーーーー!!!!」
今更ながら滝行してた私ですが、
本当は滝行しに来た訳ではなく、この滝行スポットに住み着いた水棲中型魔物を討伐するためにやって来ていました。
この魔物は最近この辺りに現れたウミヘビのような魔物で、餌を求め川の深い所をうまく渡りここまでやってきたようで、滝行に集中しているお客さんを襲いかけたらしい。
おまけに警戒心も強く、下手に攻撃すると暴れたのちすぐ別の所に逃げてはまた現れているとのこと。
それを知り私達はやってきたっていう訳だ。
あー冷たかった。
色々振り返ったけど、やっぱ今を楽しみながら燃えて強くなっていくのが私には似合っている。
私なりの闘争心はいつだって燃えている。
それを絶やさないのが今やるべき事だと思っている。
「ご主人様、個々の管理人さんがお礼にと川魚を。」
「なんだと!?」(グゥゥ...。)
さて今度やってきたのは川から少し離れた砂利の敷き詰められた広場。周りにはキャンプをしに来た観光客や冒険者がいる。
パチッ....パチッ..
「ああ...いい匂い。」
目の前にはさっきもらった川魚が串刺され塩まぶして焼かれている。
鮎やイワナの塩焼きならこういうので食べたけど、これはなんて魚なんだろうか。
「クロマ、これなんて魚なんだ?」
「これはキヨナガレって言います。焼くと白身がふわふわです。」
鮎と一緒か、絶対美味しい奴だ。
ああ、こんな時に米があればなぁ...ソウルフードお預けつらい。
でも匂ってくる、この旨味ある香ばしい香りが堪らない...!
「ご主人様、リンゴ食べます?」
「おお、助かる!」
あっぶねぇ、ルザーナがリンゴくれなかったらいざ焼けた時にまだ足りねぇって陥ってた。
本当気が効く子だ、ナデナデしてしまうじゃないか。
「えへ...えへ...///。」
「むぅ...。」
ぬ、魚よりも先にクロマが焼けちゃった。
「魚の下処理ありがとうね、クロマ!」
「ふふん!」
よしOK。
「あ、そろそろ食べられますよ!」
「おお!」
焼いた分を取り出し皆1本持つ。
「では、いただきます!」
「いただきまーす!」
あむ...
「んんーー!!」
すごーい!
焼けた皮がパリッと中ふわふわ、
塩が白身と混じり合い、
噛むたびに優しい美味しさが口に広がる〜!
しかも骨が柔らかくて丸ごと美味しく食べれちゃう!
もう幸せ〜!!
「やっぱり旬のキヨナガレは旨味が多い..!」
「とっても美味しい魚です...!」
『塩付けて焼いただけなのに凄いの。』
せっかくいっぱいもらったしロイヴィやイブキ達にも分けてあげようかな。ご近所付き合い大事。
私は保存容器にお裾分けの分をそれぞれ収納して...
「さぁ、じゃんじゃん焼いて食べましょー!」
ーーーーーーーーーー
???...
「...まさかエデルの番猫がそこまで力を出してくるとはな...。」
「すま...ない...。」
「謝らなくていいさ、てっきりプラドの調査で手こずってるかと思ってたけど存外早くきてしまったね。だが炎の魔人から得たデータは必要最低限以上は手に入った。君も辛うじて生きて帰ってきて嬉しいよ、プロト10。」
研究服をきた初老の男...教授。
その目の前にはボロボロのプロト10。
「しばらく君は調整に入ろう。」
「ああ...。今のままじゃだめだ。」
そう言ってプロト10はスリープ状態へ移行、動きが止まった。
(...プラドに色々やらせた所もあったとはいえボロをすぐに出してしまうとはな...。)
(だが驚く事に今まで別所で活動させていたプロト10が今の神獣候補を超える実力になっていたのが驚きだった。)
(元々倒す予定ではなく炎の魔人のデータを取るためお引き寄せたのだが、予想外だ。)
(エデルの番猫から得たデータも多少ある。時間を掛けてでも強化調整を行なってやるとしよう。)
教授はプロト10を浮遊魔法で浮かせ、再びどこかへ去っていた...。
5G手に入れた!