第100話 白黒
朱「記念すべき100話目に活躍するのは俺達だ!!」
蒼「ひゃっはー!」
キジ「なにぃぃぃぃぃ!?」
昨日より遅くなってしまった...。
マギアシリーズのプロト10に攫われたアイを救うためヴィンの森にある研究所跡にやってきた私達。
待ち構えていたプロト10の強さは凄まじく、私達の攻撃は全く効かなかった。
それだけでは終わらずアイは魔法で洗脳され魔力が増強、紅蓮激る炎で私達を襲うがクロマの機転で形成逆転した。
プロト10はアイを再び連れ去ろうとした途端、朱斗と蒼鈴が到着。住民に手を出した以上無事で帰す気はないようだ。
「さて...うちの町の住民、それも年幼い子に手ェ出した以上無事には帰さん...いや、ここで始末する。」
「ふん、何を言うかと思えばくだらん。言葉に出した以上...実力に自信はあるんだろうな?」
「ああ。なんなら俺だけでもな。」
「おい待て、私だけでも倒せるんだが?」
あれ蒼鈴の一人称私だっけ。
そもそも2人ともそんなに強かったっけ。
「何をごちゃごちゃと...言ってやがる!!」
プロト10は2人に向かって火炎弾を放つ。
...だが、
「どこ見て狙ってんだ?」
「な!?」
...正直見えなかった。朱斗と蒼鈴が、気づけばプロト10の後ろにいたのだ。
「倒壊しないよな?」
「大丈夫だろ、全力までは出さなくてもいいだろうし。」
「何を...ぬぉ!?」
朱斗と蒼鈴の魔力が爆発的に増大化する。
その魔力ははっきり言って今の私とニコの全力をもってしても追いつけない。
今更私は気がついた、以前...あの時2人はカラミアに対しその力を出すまでもなかったと言う事を。
「...あれ?」
「キジコ!?」
魔力を感じ取ろうとすると逆にクラッときた。
膨大過ぎる、そこが見えない。
もしかするとヴァルケオと互角...いや、それ以上であるかもしれない。
「玲瓏。」
「暁闇。」
...言葉が出なかった。
いや、言葉を出せなかった。
白く輝く髪とオーラ、荒々しいのに美しくも感じる白き朱斗。
黒い...なのに輝かしく、底の見えない魔力そのもの、黒き蒼鈴。
気づくと私達は地面に膝をついていた。
私の横には傷の癒えたアイが寝ていた。
ああ、ようやく理解した。
たとえ片鱗であろうと皆わかる。
これが、神獣の力の一端。
神獣の血を引く2人の真の姿。
「フンッ、白黒ピカピカなった所で我には敵わん!!」
プロト10が2人に再度攻撃を仕掛ける。
「煌々・舞。」
「あん?」
...!?
何かが落ちていた。
瞬きした瞬間に理解した、プロト10の左翼である。
「バカな...!?」
「呂色・大蛇。」
「な!?」
漆黒の大蛇がプロト10に噛みつき、壁に押し付ける。
「長夜・悪夢。」
「ぐああああああああ!?!?」
そこからさらに黒い靄がその肉体を蝕み始める。
「どうした、俺たちはまだ大して動いてもいないぞ。」
「が..あ...。」
「朱斗はもう少し動いてくれ。」
「はいはい。」
朱斗はゆっくり歩き始める。
それは余裕からくるものではない、
1秒、
そう、毎秒に1歩ずつプロト10に近づいている。
それは死のカウントダウン。
白い死神の足音。
「面白いな、ドラゴンも震えるもんなのだな。」
「あ...が...!!」
プロト10が私達を数十秒で退けたの同様、2人はプロト10をあっという間に死の淵まで追い込んだ。
それだけ実力がかけ離れているから、
私達ですらプロト10には敵わなかった。
そしてプロト10は2人に手も足も出なかった。
...完敗だ。
この場にいる誰もが当然のように考えた。
死の歩みは止まらない。
恐怖が己を飲み込む。
逃げたくても逃げれない。
「...終わりだ。」
「(ピピッ...!」)」
「「!?」」
「アイ!!!」
ほんの一瞬だった、
気づくのが遅かった、
私達の後ろから気配なくマギアシリーズが近づいていた。
いや、ほんの少しは気配はあっただろう。
だが強さがデタラメな存在が2人もいるこの空間においてその存在感が裏目に出てしまった。
ガシャアッ!!
「...ギリギリセーフ...!」
「隠密行動型か...!」
朱斗の放った魔力弾が間一髪防いだのだった。...だが。
「....!!逃げられたか。」
プロト10の姿はどこにもなかった。
どうやら今のマギアシリーズで気を取られた
極めて僅かなその瞬間を狙い転移で逃げたようだ。
こうして事件は1時間もなく終了したのだった。
ーーーーーーーーーー
翌日...
「う..ううん...。」
「アイ、アイ!?」
「...んん...?」
少女は目覚めた。
あれから町へ戻り館に戻っていた。
「今回の件、未然に防げなかった事をここに謝罪する!!」
朱斗と蒼鈴は床に膝をつき深く頭を下げた。
「ま、待ってください!領主様達は何も悪くはありませんって!!」
私もそう思う。
普通誰が金属の肉体を持った喋る超強いドラゴンが襲撃してきて転移で逃げられるなんて想像出来ただろうか。
ちなみにロイヴィさんは町の人が持ってた治療スキルで助かったようだ。
アイ自身は本格的な改造を施される前だったようで、肉体は無事であった。
だが少女は気づいた。
ゴーグルがない。
また目が痛くなる、そう思い目を覆おうとした時に気づいた。
目が痛くない。
そして何か目を布かバンドかよくわからないが巻かれている。
「蒼鈴、これは?」
「ん?ああ、[呪いの魔法具]だ。」
「は!?」
「これの製作者が作った魔法具はな、いつも装備中は何かを失う代わりに強い力を得るって言う物ばかりでな、これもそれの一つなんだ。」
本当に呪いの装備じゃないか。
「ちなみに一度装備すると外せなかったり...?」
「そんな機能あってたまるか。」
あ、ないのね。
「...これ、視力、減るの?」
「ああそうだ。視力が大幅下がる代わりに他の身体機能や魔力機能がサポートされる。その上内側から裸眼のように外を見ることができる。」
「...!!」
「つまりアイだけが扱える魔法具か。」
「君のゴーグル代わりと言ってはなんだが...どうだ?」
「...ありがとう、これほしい。」
「そうか!」
一応ゴーグルの残骸は回収していたが、それなりに重さはあったので機能性と体力考えないお兄さんの事も考えるとこっちの方がずっといいだろう。
「...そうだ朱斗蒼鈴、マギアというか研究所側には逃げられたけどプラドの方は何かあった?」
「ああ、その件だが...
「プラドだと!?」
「おぅあ!?」
ロイヴィさんが大きな声で驚愕する。
「し、知っているの?」
「ああ、昔...かつて住んでいた村の村長でな、金銭欲が強く何度も人身売買に手を染めていた。」
「...イブキ達も似たこと言っていたね。」
「ああ、その上...これだ。」
朱斗は紙を取り出す。
「これは?」
「さっき遮られちゃったけど、これはプラドの人身売買に関する履歴や領収書(原本)だ。」
「な!?」
「...てことは...!」
「もうお前らは奴に怯えなくてもいい、既に逮捕した。」
その途端今度はロイヴィとアイが深く頭を下げていた。彼らの人生に多くの不幸をもたらした奴がとうとう捕まったのだから。
これでようやく彼らは怯えずに生きれる。
「ありがとう...ありがとうございます!!」
「いいんだよ、領主としてやる事をしただけだ。」
「タビ、あとは任せた。」
「かしこまりました。ではお二人のお食事をお持ちして参りますね。」
ーーーーー
「戻ってきたな、キジコ。」
「ああ、またトラブルに巻き込んでごめんね。」
大広間に戻ってきたキジコ。
そこにはルザーナ達やニコが待っていた。
「いいんだ、お泊まり楽しかったし!」
「その事なんだが、朝起きたらなんか肩凝っていたんだ、私寝相大丈夫だった?」
「へ?あ、大丈夫だったと思うよ?」
「...?そうか。」
※ニコとルザーナがキジコの腕を抱き枕にしてました。
『よくあれで寝られたわね...。』
「ん?どうしたスア。」
『なんでも。』
「ニコ様、そろそろ...。」
「むぅ...じゃあ、そろそろ私は帰るよ。これ、受け取って。」
10G手に入れた!
「沢山勉強になったよ、ありがとう!」
「またいつでも来ていいからね。」
「うん!!」
そうしてニコは転移役の人と一緒に帰っていった。
「...さぁ、家の目標改修費まであと少しだ。今日も頑張るぞ!」
「「『おー!!』」」
改修費ラストスパート!
現在所持金337G、50S(333G、450S)




