第97話 寂しくさせちゃった
新たな町の住民となった隠密系傭兵イブキ達から情報を得て町の警備強化と防衛強化をするリーツ。
なぜこんなことをしているかというと...その日の夜。
「ヴェスパの名前を持つのが2人いた。それもこの前引っ越してきたばかりのな。」
「...!ロイヴィとアイか!!」
「大当たりだ。ヴェスパ=ロイヴィとヴェスパ=アイの2人。」
朱斗は書類を机に広げる。
「...ん?苗字が先に?」
「そういう地域結構あるんだぜ、あんたの前世はどうだった?」
「えーと、私の国は苗字が先でした。」
なんだろ、異世界にどっぷり浸かってるせいか苗字が先に来る名前にちょっと新鮮さ感じてしまった。私は雉野小夏私は雉野小夏...。
「とりあえず彼らの保護や町の警備は任せろ。お前は友達と遊...ニコに色々教えてやってくれ。」
あ、うん。お宅らニコが完全に遊びに来るって理解してるのね。そして不自然だぞそのキリッとした表情、女子2人が笑顔でキャッキャ楽しんでる方が平和だって思ってるだろ!!
「むぅ...。」
「...ルザーナ?」
ムスっとした顔のルザーナ。
「...ずるいです。」
「「「え?」」」
「ずるいですご主人様ぁー!!私だってご主人様ともっといたいのですよ!!明日は絶対ご主人様と一緒にいます明日のお仕事お手伝いキャンセルです!!私はとにかくご主人様といたいのですー!!!」
涙目で抱きつく長身青髪爬虫類娘。
最近ニコと仲良くしてたり1人で行動してたりと、ルザーナを超寂しくさせてしまった。
まさかこんなジェラシー感じる子だったなんて...!
「わかった!寂しくさせて悪かったって!!明日以降もずっと一緒にいて良いから今は離れて!!クッキー食べれない!!」
「ご主人様ぁーー!!」ギュゥゥ...
朱蒼((平和だな!))
ーーーーー
そんなこんなで早速だが翌朝の話である。
ワックワクしたルザーナに起こされ体が少しフワフワというか軽い気分。休日理由もなく早起きしたらそうならない?
今は太陽の位置も低くちょっぴりオレンジ色の空。いわゆる朝焼けが出ている時間帯。
せっかくの早起きなんで朝の体操をする私達。
空気も気温もちょっぴり冷たく、覚醒しても変温動物の名残かちょっと寒そうなルザーナ。
対して効果あるかわからないが...。
「ルザーナ、これを着ると良いよ。」
私が空間収納庫から取り出したのはカーディガン。きっと似合うだろうと作っておいたのだ。
「ありがとうございます...ご主人様!」
ばっちり似合って満点の笑顔。
ちなみに季節に合わせて少し薄手にしてあるが...。
「ご主人様からの...久しぶりの...プレゼント..!!」
...特に心配する点はなさそうだ、今ので体温上がってる(わからんけど)。
「ニコの到着予定時刻はまだ先だし、散歩がてら見回りに行こうか、ルザーナ。」
「はい!」
静かな町、朝焼けの刻、少し冷たい風、地味に薄暗い町の道。
寝ぼけ覚めてきた猫女、
超ご機嫌な爬虫類娘。
「ふぃ〜朝は冷える冷える。」
「私がくっつきましょうか?」
「歩けないからダメ。」
「しゅん...。」
散歩とはいえ見回りも兼ねている。
いざという時動けなきゃ意味がない。
そこの所我慢してもらう。(ゴメンネ)
ニコが勉強という表看板引っ提げて遊びに来るんだ、自ら動いた方が案外何かわかるだろう。
...カンカン....カンカン...
「ん?」
「なんの音でしょう?」
何やらトンカチで何かを叩く音がする。
言ってみよう。
「おお、キジコさんとルザーナさん、おはよ!」
「あれ、爺さんこんな時間に。」
行ってみるとそこは昨日立ち寄った茶屋。
トンカチ使っていたのは店主の爺さんだった。
「どうしたの?こんな朝早くに。」
「ああ、新しい団子出したから客足が増えたんじゃがな、その影響かこの長椅子の足が壊れてしもうての。」
「ああ、あの団子とお茶美味しかったもんね...。手伝ってあげるよ。」
一瞬ルザーナがそんなの聞いてないって顔になった。
「なんと、いいのか?」
「ああ。ルザーナ、そっちの道具とって。」
「はい、ご主人様!」
数分後...
「よし、こんなもんか。」
「おおこりゃすごい、ありがとうな!」
割と単純構造だったからすぐ終われた。
さ、見回り再開。
次は右に曲がってみるか。
それから歩いている内に大通りに出た私達。
色んな店が開店準備をしており、警備にあたり警兵が何人か歩いている。
こんな朝早いのにご苦労様である。前世で有名な店とか10時以降開店なのにここは朝早いなぁ。
街並みは江戸ほどでもないが木造建築が多く、それでいてどこか現代的な景色もある。
ライフラインというか、魔動線(いわゆる電線)はこの町は地下に配備されており、景観を綺麗にするという目的らしい。
日本でもそういう所あったなぁ。
「....ョー!」
...ん?
「師匠ー!」
やや、この声は。
「すたっ!クロマ!」
『スアなの!』
「『参上!!』」
仲良いな!?
「おはようございます師匠!良い朝ですね!」
『おはようなの!』
「おはよう2人とも。こんな朝早くにどうしたの?」
空飛んでこっちにやってくるんだから、もしや何かあったのか?
「いえ、師匠が散歩しているとルザーナが念話で...。」
「いつの間に...。」
とまぁ朝っぱらからキジコ一向4人揃いました。さぁ、冒険の始ま...りじゃない。
まぁ見回りにはなんの支障もないしこのまま進みますか。
ーーーーー
次にやってきたのは町の中央。
町の中央はそれなりに大きな噴水広場がある。
「師匠、こことここ水が止まっていますね。」
「ああ、後で連絡しておこう。」
「ご主人様、あそこの遊具...えーと。」
「ああブランコだね。」
「ブランコ...?ああ、ゲルンですね。」
そういう名前で呼ばれてるの!?
「ここの鎖がヒビ入ってまして...。」
「そりゃ危ないな。これも連絡しておくよ。」
なんかやってる事が役所の職員みたいだな、まぁ町で暮らす身として色々貢献しておいて損はないだろう。
「キャー!!!」
「「「「!?」」」」
突如悲鳴が響き渡る。
急いで向かってみると...
「ギャーーーオ!!」
「うわ!?」
そこにいたのは大きな鳥の魔物。
冒険図鑑が反応、種族名[ヒメル・グロッス・カイト]、
鳶の魔物だ。
「お姉さん逃げて!!」
「ギャーーーオ!!」
襲われていたお姉さんは無事保護したが...えーと、大鳶はそれを狙いまた襲いかかる。
...だがなぜこのお姉さん襲われていた?
何も持ってる様子もないし、なんなら建物が近いのに迷わずなぜ私達の方に....まさか!?
「ごめん、空間衝撃波!!」
「キャア!?」
「ご主人様...うわ!?」
「師匠...ギャア!?」
『うわーなの!?』
カチャッ...
「痛た...あれ、なんですこれ?」
クロマが拾ったのは小型ナイフ。
「...!!!クロマさんそれを捨ててください...!!蛇の強い毒が塗ってあります....!!」
ルザーナがすっごい警戒態勢に入る。
猫でいう毛が逆立つあれ。
「...お姉さん何者?」
「...ばれてしまったわね。良いわ教えてあげる。私は今は亡きティライター様の意志を引き継ぐべく行動をする正しき真の人間。貴方がいる町の情報を聞き、この世界のためにお前を倒しにきた。」
「...残党か...!」
現れたのは反神獣派の残党。
どうやらロティアートの妄言を信じたまま、今の今まで行動をしていたようだ。
町の人を巻き込むわけにはいかないし、ここはさっさと...
「ご主人様、ここはお任せください。」
ルザーナが私の前に立つ。
どうやら私のために役立ちたいらしい。
「...私のご主人様を毒牙で殺そうとするとは、...楽に死なせません。」
「ルザーナ、殺しちゃダメ。」
「あ、はい!...では一瞬で終わらせます。」
「...誰かと思えば例の青蜥蜴か。貴様も我々に随分邪魔をしてくれた、ならばお前も殺してこの世界に貢献して見せよう!」
「...つまらない妄言に取り憑かれてるとはいえとても哀れです。」
シュンッ
ルザーナの姿が一瞬消えた。
「さようなら。」
ドカッ........ドサッ
「終わりました、ご主人様!」
「お見事。」
すると鳶の魔物も消滅した。どうやら召喚魔物だったらしい。
「さて、警兵に突き出さなきゃいけないし帰ろうか!」
「はい!」
ーーーーー
反神獣派の残党だった女を警兵に突き出し散歩は終わり。さて、ニコがいつきても良いよう準備をしなきゃね!
館の食事スペースにて。
「あの...ご主人様!」
「ん?どうした?」
「...昨夜は申し訳ありませんでした!!」
「え!?」
「ご主人様に構ってもらいたいから一緒に居たいと言いましたがやはり私が未熟でしたあ!!ごめんなさい!!」
どうやら正常に戻った模様、言うなればキジコゲージが一定量まで溜まって別の意味での冷静さが戻ったらしい。
...アニメ漫画のキャラかな!?(異世界)
「今更思い出せばすっごい恥ずかしいです!!忘れてください、忘れてくださーーーーーーい!!!」
「別に付いてきてもいいんだよ?」
「え?」
「正直ニコと一緒にどこか行こうにも、どこいけばいいか迷うし、皆いた方が楽しいじゃん?」
「ご主人様...!」
ニコも別に2人でとは言っていないからね。
「私から言うね。ルザーナ、今日遊びに行かない?」
「...!!!はい、ご主人様ぁ!!」
「うわぁ!?」ギュウゥ...
また抱きついてきたルザーナ。
本当可愛い子だな、お前は。
クロマ「なんでしょう...2人を見てると...胸が、このドキドキは..!?」
スア(何をトキメいてるのかしら...?)
ディメン「その領域は踏み込まない方がいいわよ。」