第96話 悪になりきれないアサシン
「つまりまとめると、
ギルドに案内→茶屋で試作メニュー食べる→魔女っ子にアドバイスする→武具屋のサービスで防具ゲット→到着→改心した...。
意味わからんわ!!!!」
キジコです。
夕日色少女ことアイのお手伝いをおえた後、炎の魔人がアイなのではと思い調査していた所謎の冒険者3人と出会した。
彼らは初めてこの町にきたようで迷子になっており、ギルドに行きたいと言っていたので案内した。
しかし途中色々な所に引っかかり捕まったりと、損はしてないが冒険者さん達に迷惑かけてしまった。
そしてゴールのギルドに着いた途端、
「...すまない!!」
「プラドの名前は聞いた事あるな!?」
「申し訳ない!俺達は金で雇われ炎の魔人について調べるよう偵察にきたんだ!!」
「優しいんだみんな!!」
...である。まるで意味がわからんぞ。
その後色々あって館に向かい朱斗と蒼鈴に話すのでした。現在に至る。
館、重要会議室にて...
「...本当にすみませんでした!!」
「「すみませんでした!!」」
「え、あ、いや...。」
(別に実害は出してないし、むしろ出す前に改心されても...どう反応すりゃいいんだこれええ!?)
「貴方達は別に害は出していませんし、出す前に自白してくれましたので別に罪を問う点はありません。」
(蒼鈴ナイス...!!)
「そしてちょうどよろしい。貴方達は向こうの情報を多少持っている、この際全て話していただけるとありがたいのですが。」
「勿論、全て話します。」
そもそも俺達は風切隠密一家という特殊な傭兵団。ただ雇われ殴る蹴るのではなく、影に隠れ敵を欺き、ターゲットを始末する。
いわば暗殺者の一種に近い。
俺の名はイブキ。
部下のナギと、
語尾にスがついてたりするヤカだ。
俺達はある日プラドとかいう男に傭兵として雇われた。ターゲットは生捕りのみ。
ターゲットの名前は[ヴェスパ]。
夕日のような金髪の髪、ルビーという宝石のように綺麗で赤い瞳、ある事からずっと引きこもっているせいで肌は白い。そしてまだ12の女の子だという。
正直幼子の誘拐如きで俺ら使うと思いたいが闇の依頼を絶対にこなす風切にそれは許されない。
渋々向かうことにはしたが...やっぱ無理だ!!
ここまでが俺達の一連の行動。
次は知ってる限りのプラドの情報だ。
プラドは現在[とある研究所の職員]に炎の魔人を売る事を決定しています。
なんでも初老の男だったと聞いています。
目的は...プラドは莫大な金額、研究員は実験台、お互い非常に有益なものであったためこの取引予定が成立しました。
さらに研究員は炎の魔人の捕獲のために[異形の兵器]を売り渡しています。
...奴らは[次世代兵器]の試供品と言っていました。あんな恐ろしいのが兵器だというのはおかしいと思うよ。
プラドはまた俺達意外にもスパイを送り込むらしく、次は早くて明日。誰が来るかまでは分かりません。
...以上です。」
「...研究員やプラドの居場所は?」
「いえ...。」
「そうか、ありがとうな。...しかしお前らこれからどうする?」
「...一家の掟を破った以上もう戻れないでしょう。」
「ならここに住め。」
「「「!?」」」
突然の案に驚く3人。
「...今空き家があってな、この前せっかく新築立ててやっぱ引っ越し取り消した奴がいたんだ。結構広い家だし取り壊しするのもアレだから住んでもらえると助かるな。」
「それにお前たちはアサシンとしての能力が高い。任せられる仕事は報酬がそれなり以上に期待が持てる。」
「...いいのか!?」
「いいんだよ。君、団子食った時スッゲェ幸せそうな顔だったもん。そういう笑顔ある奴が住んだ方が周りのみんなも笑顔になんだよ。実際茶屋の爺さん即メニュー決定したし。」
「な!?新メニュー決まったのかあの茶屋!?」
「朱斗、仕事終わったら視察に行くぞ。」
「...こんなふうにさ。最近は強い魔物とかが増えて不安になってる人がいるのよね。この前だってドゥーカルンや近所の森から化け物出たし、君達のような人がいると助かるな。」
「...!!、はい!!我ら今日よりこの町の住人として暮らす事をここに誓います!!」
「「誓います!!」」
「そうと決まれば...ほれ鍵。場所は東だ、新築木造だからすぐわかるぞ。」
「は、はい!」
「「よっしゃ仕事終わり!!行ってくる!!」」
「いってらー。」
ーーーーー
それから俺達はその家に来てみたが...
「す...すごい。」
「広い!!」
「生活必需品や設備も既に整ってる...!」
これがかなり良い建物だった。
いつまで暮らすかは決めていないが、正直俺達には申し分なく感じるほど良い家だ。
「...そういやこれからどうするっスか?リーダー。」
そうだな...生活費は基本的にギルド依頼が中心になるだろう。
仮に隠密としての仕事を任せても問題ない人物として実績を積むにはちょうど良いだろう。
それに俺達は薬学知識がある、医者が向かいづらい地域の病人を助けるのも良いかもしれない。
「...よし、ギルドで稼ごうと思う。まずは俺達がいかに優秀であるかを証明出来ればさらに良い依頼も舞い込む筈だ。」
「なるほど!」
「流石リーダーっす!」
「よし、簡単なのからやってみますか!」
「「おー!!」」
...どれくらい先かはわからないが、後に彼らは上級の隠密としてエデルに貢献し、薬草を用いた新薬をいくつか開発し、多くの病人を救ったという。
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さーて見回り再開。
夕日色少女の手伝いをして、スパイを逆に仲間に引き入れてと今はすっかり午後。
正直色々ありすぎてもう疲れたぞ...。
おまけにスパイは明日も来るっての。
でもでかい情報は掴めた。
おそらくプラドと接触したのは例の教授。
可能性としてはマギアシリーズを送り込んでくる事だな...。
朱斗と蒼鈴、ただでさえ警戒態勢しいてもらったのにさらにやばくなるかも...。
だがマギアシリーズが動くとなると念のため連絡しておくべきだな、あの国もマギアシリーズに被害受けた身である以上情報や態勢を整えておく方が良いだろう。
「もしもし聞こえる?キジコです。」
「な!?あ...!キジコ!!聞こえるよ!!」
ちょっと前に別れたばかりなのにすげぇ喜んでる声。
なんというか10分くらいコンビニに行っただけなのに、帰ってきたらめっちゃ興奮してお出迎えするワンちゃんのような...。
「急にかけてごめんね、ニコ。」
「全然!!全っ然大丈夫だよ!!」
「それで、話なんだけどさ...
....って事なんだ。奴らが何か動いている以上、パースや周辺も念のため警戒しておいた方が良いと思う。」
「わかった、連絡ありがとう。」
「じゃあ、気をt...
「ねぇキジコ!今度暇ある!?」
「え?」
暇はあるっちゃあるけど急にどうした?
なんかまるでデートに誘う時の言い始まりというか何というか。
...まさか。
「私ね、今度リーツに遊...じゃなかった、パースの代表として学ぶ事があるって事で、一度リーツで勉強しに行ってみようと思うの!」
(今一瞬本音出たな。)
「だからその時キジコも一緒に来て欲しいの。ああ、ちゃんと護衛の報酬はあるしその...お願い!」
...まぁニコがそれで色々成長してくれるって言うなら止める理由もないかな。
幼い時からパースのために尽力していたゆえにまともな同年代辺りの友達がおらず、その辺りの複雑な感情が飢え気味だから相手してあげればちょっとは成長するだろう。
パースの防衛に関しても戦力は結構あるらしく、もしもの時は転移で迎える。
よし、ここは身も心も若い子のために一丁頑張りますか。(前世32歳の魂)
「...どの道ニコのようなビッグ人物を放っておくわけにはいけないさ、いつ来るんだ?」
せめて聞いておかなければ。
「明日!」
「はあ!?」
この後朱斗と蒼鈴に即連絡した。
その際お茶を吹く音声が聞こえたのは気にしないでおこう。