元暴力団構成員ぶん太 真心のざんげ講演会
どうも。わての指でっか? へへへ、そうでんねん。ありしまへんのや。小指、薬指、第二の方からバッツリ切らさしてもらって、ほんでカタギの方に戻らさしてもらってま。ええ、もう二年なりまっさ。
そんなわての方でも過去の償い、いろいろ考えさせてもらってま。ええ、もちろん考えてますのんや。せやから、手始めに、こうやって昔のことを告白っちゅうことで、皆はんに聞いていただいて、まあなんでっしゃろなあ、悪党ちゅうもんと戦っていく社会の助力になればゆう感じで、やらさしてもらってますわ。へへへ。
まあ、なんでんなあ。暴力団ちゅうのはそこら中にいてますわ。ええ、ええ、そっこら中に、いてまんのんや。へへへ。せやからあんまり大々的に言えませんのやけど、そこはわての贖罪の真剣さっちゅうんでっしゃろか? 手前みそですが、身を切って皆はんの役に立ちたい思てます。ええんです、ええんです。わてのことはええんですよってに。わてなんちゅうもんは、悪党でっさかい。や、もちろんもう改心して、けっして悪事などいたしません。せやかて過去の行いは簡単にはそそげません。わては悪党でっさ。へえ、わての身なんちゅうもんは皆はんのために捧げるもんでっさかい。ええのんです、ええのんです。わてのこれからがどない闇んなかであろうとも、ええのんです。わてには皆はんがまぶしゅうて、まぶしゅうて……へへへ。えらいすんまへん。歳とると涙もろうなるいいますけど、ほんまでんなあ。
ああ、ええです、ええです。わてのことなんか気づかわんといてください。ええんです……。
まあ、おばあちゃん。泣いてくれはりまんのんか? わてみたいなもんのために、泣いてくれはりまんのんなあ。ああ、わては幸せ者んでっさ。昔は悪いことしてきましたけれども、ちゃんと改心して善行重ねて生きてきて……神様仏様は見てくださってますのんやなあ。
わて、がんばりまっさ。わて、じつは、夢ありまんのんや。せっかくやさかい聞いてくれまっか。わてはずっとお寿司屋さんやりたい思てましたんや。実のところ、暴力商売やめてからすぐ修行入りましたんや。そこの大将はえらい奇特な方でなあ。わてみたいな素性のもんにも、真剣に相手してくれはって、よう心根の方まで見てくれはって、わての目を見て、「大変苦労したのだなあ。しっかり罪と向き合っているようだ。よっしゃ、俺のところで罪を償え。うまい寿司つくって、お客さんを笑顔にする。これに勝る罪滅ぼしはない」そういってくれはりましてなあ。しばらく修行して、もう一人立ちできるいうところまできてまんのんや。
そんなときですねん。もうほんま、わてみたいなもんと真剣に向かってくれた大将はんがなんでこないなことに……。すんまへん、すぐ泣き止みまっさかい、かんにんしてくれまっか? ほんますんまへんなあ。
大将はんなあ、がんになりはって、それはそれは大変な治療費入りまんねん。せやからわて、一生懸命お金集めて、開業して、返しきれへんやろうけど、売り上げで大将に恩返ししたいおもてますねんや。わて、本当に恩返ししたいおもてますのんや。
こんなことお願いするのも勝手かもしれまへんが、わてのために泣いてくれはった皆はんやからできるお願いですねん。
お願いします。わての寿司屋の開業資金、助けてくれやしまへんか? お願いしますわ。大将の命のためですねん。治療費はえらい高額ですねん。とても、わてひとりでは都合できませんのんや。それに大将はわての社会復帰をこころから望んでくれてますのんや。
こういうわけで二重に大将を、わての大恩人を、喜ばせたい思てますのんや。せやからどうか、わてを助けてください。お願いしまっさ。この通りですねんや。へへへ。