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異世界アイドル活動記  作者: 三宅交流
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9-4:地元民の強み

「皆さん、お待たせいたしました。これより、カレンプロ主催の対バンイベントを開始いたしますわ」


 ステージに立つ司会者エリーゼが高らかにイベントの開始を宣言する。

 カレンプロのトップアイドルであるエリーゼが司会をするなど、あちらの世界では考えられないことだ。こちらの世界で無名であるが故の采配である。


「それでは、まずは先行であるユカナとリカペアの登場です。皆さん、拍手でお迎えください」


 ビラ配りとTV出演、そして駅前という立地条件もありステージ前には数十人の観客が集まっている。

 その観客の奥には、白い仮面をつけて青いローブに身を包んだアイドルバトル審査員が静かにステージを見守っている。

 この最終選考オーディションは、全三回の対バン形式で行われる。

 交互に歌唱を披露してそのたびにアイドル審査員が勝敗を決めていく。

 そして、三回のアイドルバトルのうち2勝した方のペアがこのバトルの勝者となる。


「それでは、先行ペアの歌唱です。曲は、『Start Star』」


 エリーゼの号令と共に音響システムから音が鳴り響く、ヘキサスターズの定番曲である『Start Star』。

 衣瑠夏やモナコも第二選考オーディションで挑んだこの歌は、アップテンポで初手に持ってきて会場を盛り上げるにはうってつけの一曲である。

 ユカナのモデルのような長い手足を用いたダイナミックなダンスと、リカの縦横無尽にステージを駆け回るステージ構成は、流石トップアイドイル。

 ステージサイドから見るモナコを持ってしても、二回戦で踊った自分のダンスと比較してもその力量に愕然とせざるを得ない。

 しかし、それと同時に違和感も残る。

 ライブの定番曲である『Start Star』が来ても、会場が今ひとつ盛り上がっていないのだ。

 要所要所でリカが観客席を煽っているが、声が返ってくることはない。

 モナコが生まれた世界のように盛り上がることなく、『Start Star』が終わった。

 これが異世界。

 自分たちを全く知らぬ人達の世界で歌うというだ。

 ユカナとリカがステージの上から引き上げ来るのと入れ替わり、衣瑠夏とモナコがステージ上に上がる。


「続いては、衣瑠夏とモナコのペアであります。こちらの歌唱曲は……え~とこちらはカバー曲ですね。それでは行ってまいりましょう」


 音響システムから衣瑠夏には聞き慣れ、モナコには全く聞き慣れない音楽が鳴り響いた。

 一曲目に衣瑠夏とモナコが選曲したのは、これまであちらの世界では全く練習してこなかった楽曲だ。

 一週間前、こちらの世界にやってきたその夜、衣瑠夏はモナコを引き連れて二人でレンタルCD屋を回りまくった。

 有名曲をあれやこれやとモナコに聞いてもらい、異世界人である彼女が興味を持つ楽曲を探し出した。

 そして、そこから先は、二人で毎晩ホテルの相部屋で練習の日々であった。

 なじみのあるJ-POP曲に観客のみんなも身体を揺らしながら乗ってくれる。

 ハチ公前で異世界に飛ばされて初めてのアイドルバトルでは向こうの世界の曲を何も知らずに手も足も出なかった衣瑠夏であるが、こちらの世界で行うアイドルバトルであれば、楽曲知識は誰よりも高い。

 息の合ったコンビネーションダンスを披露する衣瑠夏とモナコに、観客達のボルテージも上がっていく。

 リカがやっていたようにモナコが観客席を煽ってみれば、先のステージよりも大きな声援が返ってきた。

 そして、ボルテージが上がりきったまま、衣瑠夏とモナコの一曲目が終わりを告げた。


 観客達から溢れる拍手に答えながら、アイドル達が見るは白い仮面をつけて青いローブに身を包んだアイドルバトル審査員。

 ステージの構成上、通例の講評は控えていただき、一戦が終わるごとにステージの勝者のみを通知していただくようにしてもらている。

 アイドルバトル審査員がローブの中から、左腕を上げた。

 それはつまり、初戦は衣瑠夏、モナコチームがアイドルバトルに勝利した事を意味している。


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