表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界アイドル活動記  作者: 三宅交流
32/48

7-2:勝者の部屋

 二次選考のアイドルバトルでパートナーを打ち負かした勝者達は、敗北者達とは異なる部屋に集められていた。

 そこは敗北者達が集められた部屋に隣接している。

 敗北者達が集められた部屋に張られたガラスはマジックミラーであり、あちら側からは見えないが、勝者側の部屋からは敗北者達の一挙挙動が目に見えて分かるようになっている。

 この部屋に連れてこられたモナコ・モナもガラス越しに変わらず笑顔を浮かべている衣瑠夏の姿を見て一安心していたのだが、そんな平穏な時間は長くは続かなかった。


「特別ルールとしてこの部屋の中にいる者で新規にパートナーを組むことを許可する。もっとも、その代償として新規にパートナーを組んだ者、つまり、先のアイドルバトルの勝者でもある旧パートナーは、その時点で失格となる」


 マジックミラー越しにスキュワーレより告げられた悪魔の宣告。

 勝者としてのアドバンテージなどこの第二選考には全くなかったのだ。

 むしろ、アイドルバトルステージすら用意されていないこの部屋に集められた勝者達は何もすることが出来ず、先のアイドルバトルで自分たちが倒したパートナーを信じるしかなかった。


「単独で挑んできた場合、負けた時は先のアイドルバトルの勝者でもあるパートナー共々失格となることを肝に銘じておくことだ」


 スキュワーレが真の第二選考についてのルール説明を終えた。

 マジックミーラー越しの部屋では敗北者達はまだ混乱しているようであった。しかし、敗北者達は新たなパートナーを選定するかのようにゆっくりとお互いの顔を見合わせ始める。


「ちょっと、クリア、何迷っているのよ。あんたのパートナーは私だけのはずでしょう。早く、一人だけで戦って、スキュワーレなんて負かしなさいよ!」


 勝者達の声はマジックミラーの先には伝わることはない。

 それでも、自分の達の命運がかつてのパートナーに握られてしまった勝者達はマジックミラーの先に必死に思いを叫ぶ。

 しかし、自分で変えることの出来ない運命ほど無情なものはない。


「うそでしょう。ゴジョー。わたくし達一緒にアイドルなると神に誓いましたじゃありませんか……」


 時間をおくことが迷いを産むと思ったのか、マジックミラー越しの部屋で新たなパートナーが誕生した。

 それは必然的にこの勝者の部屋から二名の失格者を生み出すことになる。

 真っ黒なシスター服に身を包んだアイドルは涙を流しながら床に膝をつき、銀髪のウルフカットのアイドルは全ての憎しみを込めてマジックミラーを叩いた。

 程なくして、二人の肩を黒服のスタッフが叩き、二人は涙を流しながら部屋を出て行く。


「勝者、スキュワーレ・ササマ」


 そして、マジックミラー越しの部屋でも涙を流すアイドルが二人。

 パートナーを捨ててまで自らの夢を追い求めたが、急造のパートナーで勝てるほど、ヘキサスターズのリーダーはやわではない。

 一矢すら報いることなく、ステージ上から二人のアイドルが消えていく。

 その後、パートナーとの絆を信じて、単独でスキュワーレに挑むアイドルが現れたが、こちらも赤子の手をひねるように圧倒的大差をつけられた敗北、ステージの上から消えていった。

 なすすべ無く、戦況を見守ることしか出来ない勝者達の部屋から自然と言葉が消えていき、重い空気が漂う。

 そして一人、また一人と、パートナーがスキュワーレに負け、部屋を去って行く。

 マジックミラー越しに見える敗北者達の部屋に衣瑠夏はまだ残っている。

 静かに、ただ静かにアイドルバトルのステージを見ている。あの子はあきらめていない、こんな絶望的なステージにおいてもスキュワーレに勝つための方法を考えているはずだ。

 だから、モナコ・モナは、相棒を信じて、前を向いて待ち続ける。

 自分と相棒が再びステージで並び立つことが出来るその時を。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ