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異世界アイドル活動記  作者: 三宅交流
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5-1:オーディション:第一回戦

「二人とも二人とも、書類審査合格おめでとうだよ。いよいよ次から、実技審査が始まるからね。はいこれ、第一オーディションの登録用紙だよ」


 練習場に呼び出された衣瑠夏とモナコを待っていたのは、ヘキサスターズ新規メンバーオーディションの書類審査合格の吉報と、次なるオーディションの連絡だった。

 皺一つ無いブラックスーツに金髪ツインテールのクラリスが差し出してくれた登録用紙に目を通していく。


「ちょっと、クラクラちゃん。これ本当なの? 第一オーディション、あのエリーゼちゃんとのアイドルバトルって………」


 顔を真っ赤にしてモナコが問いかける。

 エリーゼ・ミレイとは、ヘキサスターズのメンバーである。麗しい金髪を三つ編みにしたその容姿は、見る人にどこか安心感を与え、子供や女性にもファンが多い。

 そして、彼女が特出しているのはそのボーカル力である。何処までも伸びていき、空高く舞い上がっていくような高音の歌声を、モナコは何度も聞いてきた。


「そうだよそうだよ。ちなみに言うと、新メンバーオーディションの実技審査は全部で3回行われるんだよね。一回目はこの紙の通り、エリーゼとのアイドルバトル。勝ち上がって次の二回目は、スキュワーレとのアイドルバトル」


 スキュワーレ・ササマ。言わずと知れたヘキサスターズのリーダーであり、衣瑠夏が勤める喫茶キサラギステーションの店長でもある人物だ。

 エリーゼとだけではなく、勝ち進んでいくとスキュワーレともアイドルバトルが出来る。

 クラリスと向き合うモナコが身体が武者震いを初めて行くが、これで終わりではない。

 だって、ヘキサスターズにはまだあの二人が残っているのだ。


「さらに最終選考までに勝ち残った場合、三回目のオーディションでは、ユカナとリカ、カレンプロが誇る二人のトップアイドルとアイドルバトルをしてもらうんだよ。しかも、最終選考オーディションはオープンステージで実施。カレンプロを上げて宣伝して、いっぱいのお客さんに来てもらうんだからね」


 リカの名前を聞き、モナコは震えが止まらない。

 恐れているのではない。喜んでいるのだ。リカへのリベンジ戦が、自分がクラリス・クラリスの後継者だって認めてもらうためのステージが、最高の場所に用意されるのだから。

 ユカナの名前を聞き、衣瑠夏は頬が緩むのが止まらない。

 こんなに嬉しいことがあるだろうか。次はもっと素敵に成長したアイドルになっていると交わした約束。

 その約束を果たす場所が今度はステージの上でなんて、なんと素晴らしいことだろう。


「うんうん。衣瑠夏もモナコも良い表情だよ。でも、忘れちゃいけないのは、ユカナとリカとステージで戦うためには、まずはエリーゼとのアイドルバトルに勝たないといけないんだからね」


 衣瑠夏とモナコは、かつてヘキサスターズのメンバーであったクラリス・クラリスが見つけ出したアイドルの原石である。

 だが、クラリスが出来るのはこの二人をステージまで導く所までだ。

 ステージの上は実力と人気がものを言う世界。

 クラリスの後ろ盾があるかといって、甘い判定がなされて易々と新規メンバーになれる訳ではない。

 この先、輝くステージで何をつかみ取るかは、ステージに立つアイドルにしか出来ない事である。


「二人ともオーディションの登録用紙はよく読んだ? オーディションはアイドルバトルのハンデとして、参加者はパートナー形式での登録となるよ。パートナーが見つからない場合は、カレンプロ側で調整するけど、モナコと衣瑠夏、二人はもう相手決まっているんだよね」


 聞かれるまでもないことであったが、改めてパトーナーと言われると恥ずかしさがなぜかこみ上げてきて、モナコは腕を組み、あさっての方を向いてしまう。


「もう、ちょっとぉぉ。モナコちゃん、何照れてるの? わたし達一緒に頑張ろうねって、昨日一緒にお泊まり会して約束したじゃん」


 そんなモナコに容赦なく抱きついてくる衣瑠夏。ほのかに朱色に染まっていたモナコの顔がさらに紅く染まっていく。


「ちょっと、離れなさいよ、衣瑠夏! 確かに約束したけど、それはもっとこう互いを高め合うための約束であって………あと! お泊まり会っていっても、昨日は練習熱中しすぎて二人とも帰る術無くして、仕方なく練習場で一夜を明かしただけでしょうが!!」


 ぴったりと密着してくる衣瑠夏を振り払おうと大きく身体を揺さぶるモナコ。

 一方、衣瑠夏はまるでアトランションでも楽しんでいるかのように汚れのない満面の笑みを浮かべている。


「もうぅぅ、モナコのいけずぅぅ。昨夜の出来事、わたしは凄く楽しかったのにぃぃ」


 しぶしぶとモナコから離れた衣瑠夏は、またしてもクラリスの前にちょこんと膝をついた。

 こんな二人のじゃれ合いにはクラリスも慣れっこだ。

 何事もなかったかのように話を再開していく。


「それで、二人はパートナーとしてオーディションに出るんだよね。じゃあ、次は第一オーディションに向けて歌唱曲を決めないといけないね」


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