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異世界アイドル活動記  作者: 三宅交流
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3-4:再会と再始動

 カレン・プロが経営する喫茶キサラギ・ステーション。

 その店長室には二人の女性がいった。中央に設置された店長席に腰を降ろしたスキュワーレは、吸い込まれそうに澄んだ翡翠色の瞳で何度も時計を確認している。


「もう、スキュワーレは心配性ですわよ。予定より遅れているけど、きっとリカがいつものように寄り道しているだけですわ」


 スキュワーレの隣に立つのは、緑を基調としたドレスに身を包んだ女性であった。

 麗しい金髪を三つ編みに編んでおり、特有のとがった耳にはハート型のイヤリングをしている。


「それは分かっているのだが………というか、エリーゼ。いくら何でもさっきからカップケーキ食べすぎじゃないか?」


 金髪ポニーテールの女性の名は、エリーゼ・ミレイ。カレン・プロにおいて五本の指に入る人気アイドルであり、キサラギ・ステーション店長であるスキュワーレ・ササマの旧友でもある。


「わたくしは昔から、いくら食べても太らない体質だってスキュワーレだって知っているでしょう? 大丈夫ですわ、カップケーキの七個や八個じゃ、コンディションに影響は出ないですわ」

「それは知っているけど、不公平すぎて認めたくないぞ」


 スキュワーレは低音かつしゃがれた声でため息交じりにつぶやく。

 つい先ほど、見たばかりというのについ、もう一度時計に視線を送った瞬間、


「やっほっ!! ただいま!! 二人とも元気にしていた?」


 ノックもなく店長室のドアが勢いよく開かれ、小柄な少女が元気いっぱいに入ってきた。一般女性の胸元ぐらいしかない小柄な女性であった。

 天然パーマの入った黒髪を動きやすいようにサイドポニーに結っている彼女の名前は、リカ・ウェルド。


「おかえりなさいませ、リカ。あ、このカップケーキおいしいですけど、食べられますか?」

「ただいま、エリー。うん、もちろんもらうよ。似てるとはいえ、やっぱり向こうの世界とこっちの世界じゃ、微妙に味付けが違うんだよね。あ~~~、この味懐かしいよ~~」


 エリーゼが差し出してきたカップケーキに、子犬のごとく反応したリカは満面の笑みでカップケーキを頬張っていく。


「ちょっと、リカ。ボク達を置いていかないでよ。あ、スキュワーレとエリーゼ、ただいま」


 リカに少し遅れること店長室に入ってきたのは、すらりとすらりと長い手足には余計な肉は一切無くまるでスポーツ選手のように引き締まっている長身の女性だった。

 セミロングの茶髪が涼しげになびいている彼女は、ユカナ・ミストル。

 リカと二人、アイドル修業のため、二ヶ月間の異世界研修を終え、たった今所属事務所であるカレン・プロへと帰ってきたのだ。


「お帰り、ユカナ。どうだったか、向こう側でのアイドル研修は?」

「もう、それはもう大変だったよ。アイドルって一言に言っても、千差万別。ボクよりもダンスがうまい人だって何人もいたし、フォーメンションダンスじゃこっちの世界は向こうより何倍も遅れているなって感じだよ」

「そう、とても実りのある研修になったみたいだな。それでこそ、カレンプロの人気アイドルであなた達二人を無理して………」

「所で、スキュワーレ。二階のステージって今空いている?」


 しがれた声で感慨深く話し始めたスキュワーレの言葉を、ユカナは勢いよくへし折った。


「はい?」


 思わず、目が点になるスキュワーレだったが、ユカナはかまわずまくし立てる。


「いやさ、あっちの世界でも色々なステージにたったけど、ボク達はこっちの世界の住人な訳でさ、一秒でも早くこっち側のステージに立ちたくてもう戻ってきた瞬間から、体うずうずしていんだよ。帰りの報告とかは、まずはステージでファンのみんなにただいまって伝えてからでも大丈夫だよね」


 伝えるべき事を全て伝えたばかりに、背負っていたリュックサックを店長室に置き、ステージへと駆け出そうとするユカナであったが、店長室の入り口には新たな女性が立ちふさがっていた。

 皺一つ無いブラックスーツに身を包み、鮮やかな金髪をツーテールに結んでいる彼女の名前は、クラリス・クラリス。

 今はカレンプロで働くスタッフであるが、元はこのカレンプロを代表するアイドルの一人でもあった女性だ。


「もうもう、少しだけ落ち着いてだよ、ユカナ。ユカナとリカの凱旋ステージは、今日のキサラギ・ステーションの夜のメインイベントとしてセッティングしているんだからね。それまでは、ちょっと我慢我慢だよ」

「………わかったよ……」


 店長室を今すぐにでも飛びだろうととしていたユカナをクラリスが再び部屋に押し戻す。


「うん。これで、ヘキサスターズ。再集結ですわね。なんだか、わたくしともて嬉しいですわ」

「でも、事務所を辞めたナオは既にここにいない。それにクラリスだって、もうアイドルは辞めている状態である。とても今のヘキサスターズは完璧とは言えない状態だ」

「ですが、だからこそ、次に向かっていくために、わたくし達をここに集結させたのですよね、スキュワーレ」


 最後のカップケーキをぺろりと食べ終えたエルフ娘は旧友の考えなどお見通しとばかり笑って見せた。


「その通りだ。ヘキサスターズは本来、その名前の示すとおり六人組のアイドルグループであったけど、ナオの脱退と、クラリスの引退によって活動休止をせざるを得なかった。だが、あたし達のヘキサスターズはこんな所で終わるわけにはいかないわ。だから………」


 ヘキサスターズのリーダーであるスキュワーレは、特徴的なしがれた声で高らかに宣言する。


「抜けた二人を補うため、新生ヘキサスターズを6人で再始動させるための、新メンバーオーディションを開催する!」


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