鍵を無くしたのです
誰でもやりそうな事か、そうでもないこと。
いつそんな日が起こるか分かったもんじゃない。ちょっとした恐怖に出会うこと
「こないだ、家の鍵を無くしちゃったんですよー」
女子高校生にしてはとっても小柄な、ちっちゃい迎は夏休み明けの学校でちょっとした雑談中。その表情はトラブルのくせに惚気中。
「それで坂倉くんにメールして、家に泊めてくれたんです」
「なるほど、それは上手い彼氏訪問、彼女訪問に繋がるな」
「そーですよねぇ」
「いやしかし、鍵を無くすなんてとんでもないぞ。探しに行かなかったのか?」
鍵を無くすと家に入れないことや、自分の家に泥棒が万が一、来るって事もある。
とっても危ないのですぐに探した方がいい。
まぁ、厄介なのは無くしたタイミングが遅すぎると、どーやっても捜せないので、諦めるのも感じである。
「まぁ、俺は宿題を無くした事で、夏休みの宿題を乗り切る事にした」
「無くしてもいいけど、宿題はやっておこうね。舟くん」
持ってくるのを忘れてもいい。やっておけば、いいと思う。
「買い物をする時に落としちゃったみたいで、交番で聞いてみたんです」
「まぁそりゃそうだ」
落とし物をし、警察に相談すると紛失届を書いてもらうことになります。見つかるとは限りませんが、ホントに稀にあります。
警察に届けられた落し物は、そこから落とし物センター的なところに届き、そこを訪れるよう勧められたり。紛失した時が短ければ、近くの交番にある可能性も考慮され、その交番に連絡をしてくれるそうです。それで見つかる事はホントに稀ですけど。
「紛失届出したり大変で」
スマホを落とし、警察に運良く届けられた場合は、電源を落とされるので電話やメールなどで捜そうと思っても繋がりません。電話などの通信環境を切る必要がある場合、契約した電話会社に連絡を入れて、通信を切断するよう連絡しましょう(これは悪用されないようにするための処置です)。その際、本人確認として、名前、生年月日、住所、スマホの機種、パスワードとか色々、電話で確認されます。
「落とし物の保管は、1年くらいだって聞いて。休日、落とし物を保管しているところに坂倉と行ったんです」
落とした物が見つかったら、謝礼をすることもできます。
相手方に要求がなければできませんが。
「そしたら、9か月前に無くした家の鍵がでてきました!これって凄くないですか!?」
「凄いが割と最近、無くしてるじゃねぇか!」
それらしき物が落とし物センターにあったとしても、そこから連絡が入ることはあまりないです。ほとんど似たような物ばかりなので。あくまで保管しているだけです。
「しかし……なるほど」
「なにが、”なるほど”です」
「いや、坂倉がその話をした時、ちょっと残念がっていた理由が分かってな」
「へ?」
せっかく2人の休日をそんな形で潰され、親いない家がもうすぐだって時に、鍵を見つけて家に帰っちゃう迎が畜生に思えてな。それに
「あー、落ち込むな。坂倉。そーいう相談をされる事は彼氏なんじゃないか?」
「あー、そうだよな。頼られているよな……」
「坂倉くんもどうしたの?」
「いや、いいんだよ」
迎ちゃんに言えねぇ。
俺、その日に鍵を無くしたって……。
「?あれ、なんで舟くん。坂倉くんからその話を聞いていたの?」
「!まー、いいだろ。気にするな。気にすんな。男には見得を張るのも特技にしなきゃいけねぇーの」




