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終末的日常論  作者: 杉下 徹
一章  黒
2/54

1-1

 学校の屋上から見上げる空は青く、それは少なくとも俺にとっては救いであった。

 親友であるところの下ノ瀬彼方に言わせればそれは全くの皮肉であり、空だけがひたすらに青い事には反感を覚えるべきだそうだが。その言葉を律義に守って、というわけではないだろうが、彼方がここを訪れた事はほとんど無い。

「そろそろ、屋上も辛いかな」

「志保っ!」

 よって、屋上にいる俺を呼びに来るとすれば、それは大概が彼方の妹である下ノ瀬白羽だ。時々可乃が、もしくは遥香が来る事もあるが、今の声は白羽のもので間違いない。

「どうした?」

 掠れた息と共に吐かれた、切羽詰まった声へと返事を返す。声の印象に違わず、屋上の扉から姿を見せた白羽は、いつになく慌てて見えた。何か、それも良くない事が起きたに違いない。体を預けていたビーチチェアから起き上がり、体ごと白羽に向き直る。

「お兄ちゃんがどこにもいないの!」

 そして、発された白羽の言葉に、張り詰めていた気分が少しばかり緩む。

「彼方がいないのはいつもの事だろ」

 再び寝転がる、とまではいかないまでもゆったりと背もたれに寄り掛かる。

 高校に入ってからこの方、彼方の出席頻度は右肩下がりに下がっていき、二年になった頃にはすでに学校へ通う事をほぼ完全に放棄していた。それは俺も同じで、こちらはそこそこ顔を出してはいるが、もっぱら屋上か旧応接室のどちらかにいる。そういった事情もあり、今ではこの屋上は適当にかき集めたもので作られた快適空間になっていた。

「そうじゃなくて、昨日の夜からずっとどこにもいないの!」

 だが、今日に限って白羽は特に彼方の不在が心配なようだ。この様子だと、連絡すらつかないのかもしれない。彼方なら心配無いとは思うが、今の白羽をこのまま放置するのは躊躇われる。

「じゃあ、とりあえずあいつらを集めるか」

 適当に宥めたところで、白羽が納得する事は無いだろう。俺としても、彼方が無事であると示す説得力のある根拠があるわけでも無い。そうなると結局、俺にはいつものメンバーと共にいる事くらいしか白羽を安心させる方法が思いつかなかった。

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