やっぱり一人旅にしよ
日が傾き始めた頃、山合の中に村が見えてきた。
先の村よりは栄えており、工芸品や食糧品等が店先に並んでいる。
その他にも行商人が泊まれるようにと宿屋もあり、その日はエイミーの強い希望で村に泊まる事にした。
『早く部屋に鍵かけて、ゆっくり休みたい。一人で!』
宿屋に入ると中はカウンターがあり、テーブルとイスが五組程並んでいた。
食堂やバーを兼ねているようだ。
カウンターには一矢の二倍はあるような大男が立っている。
大男は一矢達に気が付いてもその厳つい顔に営業スマイル等は微塵も感じられない。
ただ、その宿屋の主人は一矢達が近付いてくるのをカウンターに手をついてじっと待っていた。
一矢はさりげなくエイミーの後ろに隠れる。
『コイツ……』
エイミーはジロリと一矢を睨むとおずおずと主人の前へと歩いて行った。
「いらっしゃい、食事かい? それとも泊まるのかい?」
エイミーはチラリと主人の後ろに貼ってある料金表を見る。
『よし、大丈夫』
「泊りで、部屋は二つでお願い」
主人は壁に掛けてあった鍵を二つ取って置く。
「部屋は二階だ。食事が居るならココで注文しな」
一矢達は荷物を置くと食事をする為に一階へ戻って来た。
一番安いソーセージとパンを二つずつ頼んだ。
それでも久しぶりの肉と主食は美味しかった。
料理を運んできた女性に一矢達は色々と話を聞いた。
この村は木工品や織物が盛んで港町から行商人がよく買い物に来るらしい。
確かに一矢達の他に商人風の男達が食事をしている。
港町には朝一でココを発てば夕方には着けるそうだ。
「でも、途中の村で一晩休む方が殆どのようですよ。急ぎでなければ」
「そうなんだ。まぁ、俺達も急ぐ旅じゃないからそうしよっかな?」
『奴隷商人探すんだろ、急げよ!』
エイミーは心の中で思った。声に出さないのはまた『誰のせいで……』と言われたくなかったからだ。
「ところでお姉さんは旅とか興味ある?」
一矢は更に声をかける。
「う~ん、ココの仕事があるんで……」
「えぇ~、良いじゃん。色んな町にも行けるしさ、楽しいよ!」
エイミーは一緒のテーブルに居るのが恥ずかしくて他人の振りをする。
「父がココで働いてるので、チョット……」
一矢が尚も粘ろうとするも、後ろから声が聞こえた。
「お客さん……」
一矢が振り向くとあの大きな宿屋の主人が立っていた。
「他に何か注文は?」
「……無いです」
一矢が小さくなっている所を女性は主人に連れられ去っていく。
商人達からは忍び笑いが巻き起こった。
『……やっぱり一人旅にしよ』
恥ずかしさのあまり、赤くなった顔を隠してエイミーはそう思った。




