世界観と転生者の信条。
今回は設定を少し出すだけなので短めです。
──魔法。魔法陣や魔道具を媒体に、魔力を消費することによって不可思議な現象を起こす非現実的な力。
通常、魔力という謎の多いチカラは自然に人体から放出される。
つまり常人では魔法を使用することは不可能なのだ。
だが約三万年前、何らかの原因によりその機能を失ってしまった欠陥人間が誕生した。
その人間の名はツァオバー・オルソット。魔法を発明した天才魔法使いだ。
当時三十五歳だった彼は自分の周りで起きる不可思議な現象に気づき始め、自分の障害を研究を始めた。
そして彼はその障害を『ツァオバー器官欠損症』と名付け、魔法というものを独自で発明した。
それから彼は魔法についてを教えるための学校を創設し、『ツァオバー器官欠損症患者』──通称魔法使いを全世界から招き入れる。
しかし、その後魔法という技術は人類の発展とともに忽然と姿を消した。
そして再び魔法というものが発見されたのは2018年、日本のことだった。
◇ ◆ ◇
ツァオバー魔法学園。
魔法の英才教育を施す学校だ。
四十年前に魔法を発見してから世界中に魔法学校ができたらしい。
それは日本でも例外ではなく、国民の税金をふんだんに使い、学園を建てたという。
今では世界の人口の九割、約八億人もの人間は少なからず魔法を行使はできるらしい。
今の世界障害者が多すぎるだろ。
「諸君、ツァオバー魔法学園入学おめでとう。しかし浮かれるな。しっかり学んでいくように」
黒板の前でニッコリ微笑む女性担任、空条静先生。
身長高め、黒髪、そして整った顔故のきりっとした目つき。
十人の男性がいたならば、九人は振り返ってしまうだろう。あとはホモとか。
それくらい、誰が見ようが完璧な美人だった。
まあ、俺にとっては高嶺の花、関係ないか。
「それでは一年間よろしく頼む」
「………………」
やはり、魔法を学ぶということに緊張を覚えているのか、教室の中は静寂に包まれ誰からも反応がない。
「それでは自己紹介をする。出席番号順だ」
それでも挫けずこの態度を通す空条先生は一体何者だろうか。
俺であれば今夜、涙で自分の枕がぬれている自信がある。
しかし、そんなことはどうでもいい。大事なところはそこじゃない。
結局入学は免れなかった……。
別に俺はツァオバー魔法学園にいること自体が嫌だとは思っていない。
入学式、新しい生活、その初日。それ自体はいい。
しかし問題は、俺こと宮崎和也が魔法を使えないという点にある。
殆どの人が魔法が使えるというのならば、逆に言うと魔法を使えない人もいるということになる。
残りの一割の魔法を使えない人は『落ちこぼれ』と言われ差別されてきた。
そして俺は、残りの一割に見事入っていたのだ。
なんでここにいるの俺。場違いすぎるだろ。
魔法を使えないものが虐められるというのは日常茶飯事らしいのだが、俺の場合は特殊すぎるだろう。
魔法以外の力というのはこれまでにもいろいろ発見されている。
だが、大抵は魔法とは関係なく、力も弱いものだ。しかし不運にも、俺の場合は魔法に関係あって、力もそこそこ強い。
どう考えても巻き込まれフラグが満載である。
隣の席の銀髪少女に視線で助けを求めるが、「頑張ってください」と、これもまた視線で返された。
……なんで視線だけで伝わったのだろうか。
「宮崎、自己紹介をしろ」
「……はい」
空条先生の言葉によって現実に引き戻される。
どんなに影の薄い俺でも、席から立つともちろん注目されることになる。
注目されることに慣れていないのでうっ……と後ずさりしてしまう。
自己紹介しようにも、緊張でできない俺。
周りからは「うわ、顔が死んでる。特に目が」とか「あいつ絶対ぼっちだわ〜、島田?」とか聞こえた。
おい、誰だよ島田、同情しちゃうだろうが
やっとのことで平静を取り戻し、自己紹介をしようと口を開く。
「あ〜、み、宮崎和也です。魔法は使えませんが特待生としてここにきました」
やっとこさ少し噛みながらも自己紹介を言い切る。何気に前世含め初めての自己紹介だ。
「時間ないから宮崎君はまた今度ね〜」とか言いわれ、自己紹介は後回しにされてしまうのだ。
結局最後までさせてくれなかったが。
今度会ったら陰口言ってやると決意する。
いや、会えないんだけどさ。
直接じゃないのでもはや仕返しなのか分からないけど、中学のときの教師に復讐を誓う。
陰湿すぎるだろ俺。
ちなみに、特待生というのは理由がある。
特待生といえども、前にシュテンバルトに話したとおり、魔法ではない異能があるだけなのだが。
「『最低限以上働くのは時間の無駄』というのが俺の信条です。一年間よろしくお願いします」
なぜか、自己紹介で信条を言うくだりになっていたのでその流れに乗ってみることにした。
悲しいことにぼっちとは発言権がないために周りに合わせるしかないのである。
ちなみに前の人の信条は『みんな笑顔で』だ。爆発しろ。
「………………」
シーンという擬音がこれでもかというくらいに似合う静寂が空間を支配する。周りを見渡すと全員が引いていた。
銀髪少女、もといシュテンバルトもかなり本気で引いていた。
おい、俺はただ本音を言っただけだぞ。
◇ ◆ ◇
自己紹介に滑った俺は、学校の中では誰とも話さずその半日を費やした。
ぼっち再誕の瞬間である。
銀髪少女なんて知りません。
今日は入学式で校内案内とか、説明で学校が終わって本当に良かったと思う。
それで今、俺とシュテンバルトは下校している真っ最中であった。
「なんでついてきちゃってんの?」
後ろを振り向くと、目の前には銀髪少女。
何やらニコニコとしていて、はっきり言って不気味だ。
「いえ、私は護衛ですのであしからず」
「ねえ知ってた? ぼっちって注目されたら死んじゃう生き物なんだよ?」
すれ違うたびに通行人が振り返り、注目を浴びていた。
十中八九どころか九くらいはシュテンバルトのせいだろう。
それと俺の目、とか? あとは特にないな。
大抵の通行人は「なんであんな根暗っぽいやつが」と呟いていた。
やめろ、いくら悪口になれた俺でも傷つくぞ。
「和也さん。雰囲気がどんどん暗くなってますよ、特に目が。もう目に見えてわかるくらいに」
お前のせいだろ気づけよ馬鹿野郎。
そう思ってしまうくらいには、俺の気分は相当落ち込んでいた。
「あ、そうそう和也さん」
「……あんだよ」
この少女の「あ、そうそう」はトラブルしか起こさない。
彼女と会って会ってまだ一日だがそれだけは分かった。
「あそこよりません?」
彼女は俺の後ろを指差し、首を傾げる。
おい、ちょっとかわいいかと思っちまったじゃねえか。
「……なんでマックでそんなあざとくなる必要があるんだよ」
「いいじゃないですか、マック。私はあそこ好きですし」
マックが好きって……。どんな好みだよこの銀髪少女。
確かにマックはうまいがどうしてもって言うくらい来たいとは思えない。
たまに食ったらうまいなという程度である。
「……まあ、予定もねえし、ちょうど腹減ったからな」
「素直じゃないですねえ」
何やらによによとうざい笑顔を浮かべる銀髪少女を無視し、昼食を求めアスファルトでできた道を歩く。
しかし、俺の頭の中ではもはや昼食のことなどとうに考えていない。
これからどうするか、何が起きるのか。悪い考えばかりが頭をよぎるばかりである。
「和也さん、そっちはファミマですよ」
「ああ、すまん。ボーっとしてた」
とりあえず、しばらくの間は大丈夫だろう。考えていても悪い方に行くだけだ。
そう考え、マックへと足を運ぶ。
この後、俺と財布が悲鳴をあげることになったのはまた別の話である。
カルラさんは大食らいだったのです。w
まあアレですね。内容が薄っぺらいですねすいません。