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やっと来たラブコメでさえも、やはり誰かに阻まれる。

超久しぶりの投稿。展開を考えることができなかったんです!あと、執筆中小説を間違って消去してやる気なくなったんです!


……………御免なさい。


 日曜日。リア充が外でウェイウェイしたり、ブラック企業の社員が疲れを癒したり、ぼっちがアニメの録画や溜め込んだ漫画を消化する日。

 俺にとっては優雅な惰眠を取るためだけに存在していると言ってもいい日。

 もう聖夜よりこっちの方が聖夜してるだろ。聖曜日とか良いんじゃねえの? 毎週が聖のつく日とか俺まじ聖人だろ。キリスト教的に見て俺まじルターだろ。特に、現状に不満を持ってるところとか。


 何に不満を持っているのかというと、俺はいつものようにゴロゴロしていたいのだが、今日は予定が詰まっているのでできないことである。


「シュテンバルト。こっちは組み立て終わったぞー」

「あ、そうですか」


 パラソルの組み立てが終わり、ふぅっと息をつく。

 てかもうちょっと労われよ。俺が働くとかレアだぞ。カードゲームにするなら星5ランクはあるね。

 まあ、ともかく俺はリア充の聖地、夏ヴァージョン。つまり海にいるわけである。


 右を見ればリア充。左を見ればリア充。休憩所を見れば、私服をしっかり着こなし、うつむ座ったままうつむき微動だにしない男数名。ああ、なんか今俺のぼっちセンサーが反応したわ。


 と言うかなんでこんなところでパラソルなんて組み立ててんだ俺。働きたくないでござる!


「はいはい、よく働きましたね。ちょっとだけなら休んでもいいですよ?」

「おーう、もっと労われ。……ってか、なんで心読んじゃってるの?」

「そんなことよりもー」


 そんなことよりもですませちゃったぞこいつ……。

 なんで俺の知り合いにはエスパーが多いんだよ。


「どうですかー?」


 シュテンバルトは腰に手を当て「ふふん」と自信満々に己の姿を見せつけてくる。たしかにまあ、似合っていると言えば似合っているが……


「いや、お前上に服着てるじゃん」


 上に来た服が似合っていた。腰あたりから首元までキチンとボタンがしまっているという重装備である。というか暑くないのかそれ。


「……ええ、分かってましたとも。和也さんが私服を褒める程度の甲斐性もないことなんて。でも私服ですよ! いつもの制服じゃないんですよ! 何か思わないんですか!」

「断じて俺に甲斐性がないわけじゃない。他人が俺についてこれないだけだ!」


 ほら、特にゲームの話とか? 知ってるゲームの話に俺が入ったらいっつもみんな黙りこむんだよね。ホントなんなのあれ……。小学生の時の純情な俺を返せよ。


「それに、お前の私服くらい毎日見てるじゃねえか」


 実際こいつの私服は放課後とか毎日見ている。理由はこいつが家に居座るからだ。まあ、そのおかげで新原が遊びに来たりしてくれてるんだが……ふへへ。


 ホント前世の俺が聞いたら呪詛を吐くと同時に卒倒してそう。毎日女の子の私服見るとかどこのリア充だよ。あ、新原は女の子じゃなかったか。

 そう思いながら、ふとシュテンバルトの方へ注意を向けて見ると、何やらブツブツ言ってた。


「おい」

「ひゃい!?」


 声をかけると、シュテンバルトはものすごい速度で飛び退いた。……そんなに俺が嫌いなの? 拒絶反応起きちゃうの?


「俺はそこら辺にいるから、適当に泳いでこい」

「……いえ、私の水着姿を褒めてもらうまでここは引きませんよ!」


 シュテンバルトは肩に手をかけ服をばっと剥ぎ取った。彼女の本当の姿が露わになる。なんか小説に出てくる怪盗みたいだな。


 彼女の水着はワンピース型で、普段からは全く感じられない清楚さがあった。文句の付け所がないくらいに似合っている。


「どうですかー?」

「そうだな。……似合ってなかったら文句をつけてやろうと思ってたが、それができなくて残念だ」


 俺の言葉にシュテンバルトはクスッと笑う。


「素直じゃないですね」

「……うるせ」

「じゃあ、私は先に泳がせてもらいまーす!」


 満足だとばかりに笑顔になった彼女は海へと飛び込んでいった。残るはぽつねんと俺一人。

 現実では女の子と海へ来ても、オイルを塗ってあげたり、浜辺で捕まえてごらんなさーいうふふふふ、なんて展開はないのである。ラブコメとか都市伝説かよ。


 ふと、周りを見渡せば、セットしたパラソルにビニールシートしかない。俺の半径十メートル範囲には誰もいなかった。とうとうATフィールドとか展開できるくらいに心の壁ができちゃったの?


「……ふっ」


 思わず笑いがこみ上げてくる。これが優越感というものか。


 これだけのスペースを一人で使えるというのは、なかなかに嬉しいものだ。

 『みんなサッカーしようぜ!』という言葉により、教室で一人になってしまった時にもこんな感情を抱いていた。ちなみにこれは小三の頃だったりする。


 ひとまず俺は、パラソルの陰でひっそりと読書をすることにした。


「和也さん! 何でこないんですか!?」


 暫くするとシュテンバルトが戻ってきた。

 相変わらずうるさい奴である。

 そんなことより、全開にした服ってなんかエロいよな。シュテンバルトよ、何でその服ボタンを閉めてないんだ。全くけしからん、いいぞもっとやれ。


「おかげで体を乾かす手間がかかってしまったじゃないですか!」

「知らん。そのまま泳いでいればいいだろ」


 適当に返すと、シュテンバルトは「あーうー」と困ったような声を出す。あざといなこいつ。惚れちゃうところだったぞ。

 胸の高鳴りを抑え込むために、手に持った文庫本へと目を落とす。……収まったということは、シュテンバルトより文庫本の方が優先度が高いみたいだ。


「あ、宮崎くんだ!」


 いきなり名前を呼ばれ、それが聞き覚えある声だったので、読書を中断し顔を上げる。


「おう、新原。奇遇だな」


 そこには新原がいた。白いシャツに短パンのラフな姿の新原も可愛いと思いました。

 そんなことを思っていると、新原の後ろから上代がひょっこりと頭を出した。


「げぇ……」


 シュテンバルト、その声と顔は女の子的にアウトだと思うぞ。そんなに嫌なのか。

 ま、別にシュテンバルトたちの関係に口を出す必要なんてないか。なんなら、これからも誰かの関係なんて聞かないし聞かれないだろう。

 なので、トイレに逃げ込むことにした。それでは拙者、ドロンさせていただくでござる。


「……泳がないの?」


 不意に、上代に話しかけられた。俺は驚愕する。

 上代から話しかけられたことなどあっただろうか。いや、その前にこのロリっ子に罵倒なしで話したことがあっただろうか。いや、ない。

 感動に打ちひしがれる俺の目には涙がたまっていた。この感情は、この胸の高鳴りはなんなのだろうか。自分に問いかける。この感情がもしそうなのなら、俺は……俺は───


「俺はカナヅチなんだ」


 約五秒で会話終了。胸の高鳴りは動悸だったようです。


 俺の返事に上代は気まずそうに目をそらす。

 まあ、普通泳げない人が海にいるとは思わないよね。だから俺はシュテンバルトが入っても海に入れることなく読書していたわけだが。


「でも頭脳戦は得意だぞ。将棋とかオセロとかよく一人でやってたしな」

「それ、一人でするものじゃないよね……」

「悲しすぎますよ和也さんッ!」


 新原が苦笑する。シュテンバルトはハンカチで涙を拭いていた。あれ、ボードゲームって一人で遊ぶためのものじゃなかったっけ? 違うの? ……違うね。


「でも、泳げないのなら仕方ないね。……そうだ。近くに美味しいソフトクリーム屋さんがあるんだ。食べて見ない?」

「お、おう」

「あ、私も行きます!」


 上目遣い気味でこちらに尋ねる新原。おいおい可愛すぎだろ。あまりの可愛さに、つい首を縦に振ってしまう。

 あとシュテンバルト。お前はお呼びじゃない。


「……私は先に泳いでる」

「うん、わかったよ」


 どうやら、上代は甘いものが苦手らしい。

 一言入れて、そのまま海の方へ行ってしまった。


「それじゃ、行こっか」


 つまりそれは新原との二人きりな訳で、……なんとも思わないな、うん。

 いや、さすがに男相手に恋心とか芽生えるわけがないだろ。

 だから、この胸のドキドキはきっと動悸だろう。気をつけなければ。


「私のこと忘れてません?」


 おい、ジト目でこっち見るな。なんか怖いから。ちょっとお前の存在を頭の中で消してただけだから。


「楽しみだねー」

「お、おお。そうだな」


 新原が満面の笑みでこちらを振り返る。

 ……いいか、こいつは男だ。こいつは男。こいつは……男? いやどう見ても女だろ。いや、でも新原が嘘つくとは……

 いや、逆に考えるんだ。もう男でも……


「和也さん! それ以上はダメです!」

「どうわ!?」


 隣で大声を出されて仰け反ってしまう。何か考え事をしていたような気もするが、なぜか思い出せない。思い出そうとするたび、真夏なのにものすごい寒気がしたため、思い出すことはやめた。


「ぼーっとしてないでよ。もうついてるよ?」


 顔をあげれば小さいながらも洒落た喫茶店があった。

 木造の店で、テラスでは若い男女が談笑しながらソフトクリームをスプーンでつついている。リア充かよ爆発しろ。

 中に入ると、客で埋まっていた。店員の人に連れられ、窓の横の席に座る。


「ソフトクリームの店にしちゃ本格的だな」

「他にも色々と美味しいデザートがあるんだよ」

「どれも美味しそうですねー」


 店員にソフトクリームを注文し、新原と談笑する。メニューを見てみれば、なるほど結構種類があった。

 ……バッタソフトとか誰が食うんだよ。


「お待たせしましたー。ご注文の抹茶とチョコです」


 しばらく談笑していると、注文したものを手にしたウェイトレスが小走りでやってくる。

 新原とシュテンバルトにはチョコ、俺の前には抹茶が配られた。抹茶ってうまいよな。なんなら命の次に大事なまである。


 やっと運ばれた抹茶ソフトを受け取ろうと手を伸ばす。

 瞬間。何の前触れもなく、ウェイトレスがテーブル前で盛大にずっこけた。


「…………は?」


 驚きで固まっている俺の頭上へと抹茶ソフトが回転しながら飛んでいく。ドタンバタン! とウェイトレスが地面に激突する音とともに、べチャッといういやな音が耳に入った。

 ヒヤッと冷たい感覚がする頭部へと、恐る恐る手で触れる。そして手を見ると、その手は小刻みに震えていて、抹茶色のべたべたした物が手にくっついていた。


「な……なんじゃこりゃあ!?」


 抹茶ソフトが頭に乗っていた。逆さまに乗っているコーンは鬼の角のようである。


「ママー、あの人ソフトクリームを頭にのせてるよ」

「シッ、見ちゃダメよ!」


 おい、そこの母親。俺が悪いみたいな言い方するなよ。

 恥ずかしさで反論の声も出ない。気づけばべっとりとしたものが顔を伝って、口元まで流れていた。

 ふと、前を見れば新原も引きつった愛想笑いを浮かべている。それがよりいっそう俺を傷つける。

 呆然としていると、溶けかけの抹茶ソフトが口に入る。


「ああ……うまいな……」


 頭からずり落ちたコーンが、むなしく地面をならす。ついでに俺も空しく声を出す。


「ぷくく……あっははははは!」


 隣を見れば、シュテンバルトが机をバンバン叩いて爆笑していた。ちょっとうるさいし、店の迷惑になるだろうから落ちたコーンを無言で顔面に投げつける。


「あの……」


 心の中でほくそ笑んでると、後ろから声をかけられる。力なく振り向けば先ほどのウェイトレスがいた。

 顔が合った瞬間、ウェイトレスがヒッ、と悲鳴を上げる。


「宮崎くん。その無表情は怖いよ!」


 ああ、そうか……俺今無表情なんだな。

 まあ、そんなことはどうでもいい。


「とりあえず……拭くもの持ってきてくれるか?」

「は、はい! 今すぐ持ってきます!」


 ウェイトレスは走り去っていってしまう。

 そこで、やっと冷静な思考を取り戻す。てか、俺今どんな状態なの? とりあえず、鏡代わりに窓を見る。

 きっと、ひどい有様の自分の顔でも反射してるんだろうな、と思ったが違った。

 そこには、なにか、黒いスーツ姿の大男窓にへばりついて、こちらを覗き込んでいた。

 ……誰だこいつ? 髪を整えているにしては不自然だし、そもそもこんな真夏にスーツを着ている時点でどこかおかしい。


 大男と目が合った。俺はすぐに目をそらしたが、大男はこちらをじっと見ている。

 ……いや、ホント誰だよこいつ。


 大男はガラスの向こうで何かをつぶやいていた。なんだろうと思って見ていると───目が眩むほどの強い光が窓の外から入ってきた。


「うわ!?」

「ま、魔法!?」


 店内で悲鳴が響く。

 光がより一層強くなった時───強い衝撃が俺を襲った。


 一瞬の浮遊感の後、地面に激突したのか背中に激痛が走る。


「ゲホッゲホッ、なんだよいきなり……」


 そう呟きながら視線を上げると───、


「…………んだよ、これ……」


 半壊した喫茶店が目に入った。

今回水着回といったな……。あれは四分の三嘘だ。海なんてなかったんや。……あ、はい。ごめんなさい。

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