かごめ、かごめ
その日はすごく寒かったのを覚えている。
クラスで特別仲のいい僕を含めた5人で学校帰りに公園で雑談していた。
中学生でする話題でもないと思うが小学生の時やっていた遊びやゲームの話で盛り上がっていた。そしてとある話題で意見がぶつかった。
「かごめのルールってそんなのだっけ?」
一人の女の子がそう言ってきたのだった。「中の人が後ろの人が誰か当てられなかったら、その人は除外して別で中の人決めるんじゃないの?」と言った。
しかし僕たちの知っているルールは確か、決められなかったら笑い声などのヒントを出して当てられるまでやるはずだ。
それなら、二つのルールを一度やってみよう、誰かが言いだした。
「うしろの正面、だ~れ」
違う意見を出した女の子を中に入れ歌が終わったその時、僕たちの足元に黒い輪が現れて僕たち4人は知らない村に立っていた。丁度太陽が頭の上に来るころだった。
それに頭の中を自分たちに備わった能力のことがぐるぐると渦巻いていた。
お腹に鉛を抱え、水の中で溺れているような息苦しさでまともに思考が出来なくて4人はそこで座り込んでしまった。
日が落ちて、僕達4人はやっと言葉を交わすことが出来た。
「ここってどこなんだろうね…」
そう切り出したのは、霧島綾香だった。彼女は賢くいつも物事を客観的に見れる冷静な女の子だ。そんな子が誰も答えられる筈もないことを言うなんて、そう思いながら回らない思考を無理やりに回す。
そして、あえて誰も口に出さなかった答えを言った。
「その、言いにくいんだけど、もしかしたら、知ってる世界じゃないかも…」
その時、みんながどんな顔をしていたのかわからないが、僕はただこれからどうしようと、未来に対する不安しかなかった。
「俺さ、俺たちのさ、この能力についてなんだけど…」
そう口を開いたのは関口潤平、小学校までサッカーをやっていて明るい性格とユーモアがあってクラスでも人気のある奴だった。
「これってなんで俺達4人しか居ないのに、5人の能力ってわかるじゃん…」
でも、そう言葉を続たいが何を続ければいいのかわからない、そんな表情を見せた。
言いたいことはなんとなく全員に伝わった。確かに、ここに来るまでのことも他の3人のこともちゃんとわかるのに、なぜか、何かを忘れているような、でもなにを忘れているのか何が思い出せないのかがわからない。
「言わなくても、潤平の言いたいことわかるよ。でも、それがなんなのかわかんない…」
そう苦しそうに、中屋美優が呟いた。
そして4人とも黙ってしまった。
僕は僕達が持っているこの能力がすごく怖いものだと思った。
すると体の大きな筋肉質な男が4人が輪になって座っているところに声をかけてきた。
「お前さんたち、そんなところで座って何してる、ところで見慣れねえ顔だな、服も、お前ら違う世界からの転移者か…」
何を言っているかわからないが害意はなさそうだ。
「宿がねえなら俺の家に来いよ、嫁さんも子供が5人も来て嬉しいだろうからさ!」
その男はにっと歯を見せて笑った。しかし潤平は聞き逃さなかった。
「今、何人って…」
「5人だろ?あー、すまん4人だった。なんでだろうな、今一瞬、お前たちが5人だと思ったんだがなぁ」
4人は顔を見合わせた。潤平は顔が強張り、美優も綾香も不安と恐怖に唇を噛んでいた。
その夜、僕たちはその男の家にお世話になることになった。
これからどうなるとも知らずに。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
次の話は少しだけ怖い話になります、お楽しみに