能力、遊戯
お久しぶりです、望月です。
毎回遅くてすみません
今回は説明っぽくなってしまいましたが、最後まで読んでいただけると嬉しいです。
城門をくぐるとすぐに衛兵に捉まり、城壁内で王城の次に高い建物に連れて行かれた。
そしてテーブルと椅子だけの殺風景な部屋に通された。
しばらくすると、所々に銀の装飾をあしらった白いコートに身を包んだ50代程の男が来た。それに続いて中学生くらいの学ランとセーラー服を着た男女が入ってきた。
まずはここに来た経緯を聞こうか、とその男が口を開いた。
「ゲームを起動したら、周りが真っ黒になって気付いたら東の方の森に立っていて…」
そこまで続けると目の前の男は深いため息を吐いた。
「君はどんなゲームをしようとしていたんだい?」
不安そうな、探るような目を向け問いかけてくる。
「敵を倒してレベルアップしていろんなスキルを手にして…」
そう言って続けようとするとまた、今度はより一層深いため息を吐いた。
そして、羨ましい、と一言だけ言った。
「何が羨ましいんですか…?そりゃあ、こんなアニメみたいな世界に来て、召喚術が使えて…」
「君はものすごく恵まれているよ、それは確かにこの世界に来たとき君は死ぬような思いをしたかもしれない。でもね、君はその力の汎用性の高さと強力さを正しく理解しているかい?」
大きく息を吸って彼、この国の騎士団、マエハラ騎士団団長の前原達夫は口を開いた。
「俺がこの世界に来たのはもう20年も前だ。俺は自分の特殊すぎる能力に気付きそれを戦争に活かした。それが上手くいって俺は“戦争の形を変えた英雄”としてこの団の団長に任命された。」
ここまで話して一度水を口に含んだ。僕は堪え切れなくなって口を開いた。
「騎士団長は、その、どんな能力を…?」
目の前の前原はニヤッと口を釣り上げて言った。
「人身売買の洗脳術さ」
一瞬、何を言ったかわからなかった。きょとんとしていると前原はまたこう続けた。
「この世界に来る人間、調べたが例外なく日本人しかここにきてないんだが、皆何かの遊びをしている最中、もしくはそれが引き金となってこの世界に飛んできている。そしてその遊びが能力として特殊能力として備わる。」
と言って前原は口を閉じた。
「それが本当だったとして、あなた、騎士団長は何をしてこの世界に?洗脳は遊びじゃないですよね?まさか遊び感覚で…」
「違う違う、俺ははないちもんめ、味方と仲間を売り買いする遊びだ。特別だが強いわけではない。」
そう言って前原はグラスの水を飲み干した。
「それで、お前の能力は?」
「RPGゲームの召喚術師で、まだレベルも低いと思います、馬とオーガしか出せないですし…」
そこまで言うと前原は豪快に笑った。横に来て
「そこまで出来るなら上等じゃねぇか、今まで俺が見てきた奴で直接戦闘が出来るのはお前が二人目だ!もう一人はボクサーだったけどな!」
そう笑いながら肩を組んできた。そういえば、と真剣な顔に戻って部屋の隅の四人を見た。
「あの子たちを紹介してなかったな」
そう言うと彼らに手で合図した。彼らは僕の目の前に立つと、軽く会釈した。
「この子たち5人は君と同じように遊んでいるところ、運悪くこちらの世界に紛れ込んでしまってね…」
そう言うと、少年の一人が椅子に腰かけ話し始めた。