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resist  作者: 望月かざね
3/6

召喚、出発

ここは異世界。俺は異世界へと来た。

それ以外、何も情報もないままにこの世界を歩くのは危険だと判断し、女性にこの世界の大まかな状況や俺の傷を治癒した魔法のことなど、事細かに聞いた。

この世界にはどうやら魔法があるらしい。それも訓練しだいでは誰でも扱えるようになるとか。それともう一つ聞いたことがある。

それは、この世界へ迷い込んでいる人間はどうやら俺だけじゃないらしい。それも俺のようなケースで転移してきているみたいだ。気が付いたらここにいた。そういった転移者は少なくないそうだ。

「その、迷い込んだ人にはどうすれば会えますか?」

「その方なら、この村から東の方角にある王国の騎士団長を務めているとお聞きしました」

俺はそれから一週間この村に滞在することになった。

そして何もしないままお世話になるのは申し訳ないので、何か手伝えることはないかと尋ねると暖炉や竈の燃料にする薪を割って欲しいと言われた。

連れて行かれたのは家の裏で、大きな木の台のとうなものと、大量の薪が積まれた屋根と柱だけの雨よけのある庭だった。

「家の裏ってこんなに広かったんですね」

「えぇ、この世界はまだまだ人間の数が少ないそうなので、土地が余るんです」

家の裏の庭を、いや庭にしては広すぎるがそれの真ん中のあたりを見やりながら言った。

「なるほど、それでこれだけの庭が作れるんですね」

そんな会話をしながら俺は彼女に薪を割る為の切り株に案内された。

「これを使ってくださいね」

そう言いながら俺の身長ほどの高さの倉庫から彼女は縦長のモノを取り出した・

「それは、斧…ですか?」

受け取って気付いたが予想以上に重たい。前の世界でも別段力がないという訳ではなかったが、これはずっとは持てない。

「おやまぁ、力がないんですね」

彼女がくすくすと笑いながら言ってきた。そこで俺は見栄を張って大丈夫と言い張り薪を割り出した。

五本ほど割って、俺はもうへとへとだった。斧を少しだけ振り上げ、それから振り下ろしても、薪に刺さりはするが完全に二つに分かつまではいかなかった。そしてしっかり頭上まで斧を持ち上げて力を込めて振り下ろして、やっと分断出来たのが五本だけだった。正直、ここまで薪割りが辛いものだと思わなかった。映画や漫画で軽々と薪を割ってるのを見て薪割りを完全に舐めていた。

「終わりましたか?」

座り込んでいる俺の後ろから声をかけてきたのは、やはりあの女性だった。

「すみません、正直、薪割りなめてました」

少し早足に息を吸って吐いてを繰り返しながら答えると、その女性は斧を手に取り、薪を割り出した。俺はそれの見とれていた。全く無駄のない動きだった。斧を持った腕をくぐる様にして持ち上げ振り下ろす。彼女は得意げに笑顔を作ってこちらに向けてきた。

そのあと数本薪を割ってから昼食にすることになった。

昼食は豚を丸焼きにしたものをご馳走になった。

「これを焼く為にあなたの割った薪を使ったんですよ」

そう微笑みながら教えてくれた・自分が頑張って割ったものが使われていると思うと更に美味しく感じた。

「はぁ、もう食べれないです」

椅子の背もたれに体を預けて反り返りながら言うと、彼女の方から尋ねてきた。

「そういえば、あなたの名前を聞いていませんでしたね」

それもそうだ。ずっとあなた、では呼びづらい。

「えっと、本田紘太です。あなたは?」

「変な名前ですね、私はエリンといいます」

くすくすと笑いながら変な名前と言われたが、確かにそうだ。彼女、エリンさんの顔を見ると、ヨーロッパの方の顔な気がする。実際にヨーロッパの方の人の顔を見たことがないから断言はできないが、白人で鼻が高いからそう思った。そして暮らしや建築物なんかも西洋のものに似ている気がする。そこでまたエリンさんの方から切り出してきた。

「あなたはどうやって、この世界に飛んできたんですか?出来れば飛んでくる直前の記憶があればいいんですが…」

そう言うと俺は疑問に思ったことを先に言った。

「なぜ、そんなことを聞くんですか?」

するとエリンさんは顔を和らげて言った。

「この王国の騎士団長様があなたと同じ、別の世界からの転移者なんですよ。そして騎士団長様は自分のほかにも転移者が現れると考えて、王国周辺の村や町にこういう世話をしろと言っていたのです。」

俺のほかにも転移者が居たことにも驚きだが、自分以外の事まで頭に入れて対策まで練っている。すごい人だ、流石は騎士団長にまでなる人だ。

「僕は、そのネトゲを始めようとして、気付いたらこっちに立ってて…」

「…ネトゲ?」

エリンさんは首をかしげた。そういえばこっちにはゲームとかは無いんだった。

「あぁ、えっと遊びみたいなものです」

すると彼女は少し考え込んでから口を開いた。

「…あなたはそれに関係する能力が備わってると思うのですが」

俺はその言葉に驚愕し、目を見開いた。

「え、じゃあ俺が来る前に設定したスキルが…」

上手く言葉を紡げずに口をパクパクさせた。

「…?まぁそれに関係あることなら備わってるでしょうね」

そして俺は家の裏に出て、能力の検証をした。

まずはresistで設定した召喚術が使えるか試すことにした。

全身に力を入れて、限界まで力を込めて、

「サモン!」

と、叫んでは見たが俺の全身全霊をかけた叫びは空へと吸い込まれて空しさだけを残した。

「…何も起きませんね」

「…はい」

もう一度、今度は詠唱付き叫んでみた。

「隔離された世界の扉を開き顕現せよ、威光を示せ!」

その言葉も空へと吸い込まれた。

「出て来いよくそ馬ぁぁぁぁ!」

やけくそで叫んだその瞬間、かすれたような甲高い鳴き声とともに背後から茶色い影が俺の横を風のように駆け抜け、俺の目の前で立ち止まった。

鼻息をならし、少し足踏みしてこちらを見つめてくるそれは、まぎれもなく俺の身長に並ぶくらい大きな馬だった。

「う、馬…?」

エリンさんが驚いたように、そして疑問のように言った。

「設定した召喚術が使える…?」

そうして俺はゲーム開始時にオーガ召喚スキルを取得していたことを思い出した。

そうして先ほどと同様、力いっぱい叫ぶ。

「出でよ!オーガ!」

しかしこれは空へと響いて消えていった。

それから何度も叫んでみたが結局、その日俺の前にオーガが現れることはなかった。

それから一週間ほどその村でお世話になった。

馬は召喚出来るが、鞍や手綱が装備さていないので、そのあたりも村長さんや村の人たちに用意していただいた。それから俺はその転移者だと言う王国騎士団の騎士団長に会いに行くことにした。

道中、モンスター、王国城壁付近だとゴブリンや狼などの小型のモンスターしか出ないそうだ。俺は初心者でも扱いやすい武器、槍とロングソードを貰った。ショートソード―よりもはるかに長いその剣は最初は扱いにくいから、基本は槍で戦ういいとと村のがたいのいいお兄さんから教えてもらった。

そして俺は村の人たちや、村長、そして衣食住の世話をしてくれたエリンさんに別れとお礼をして、馬にまたがり村の門をくぐりこの村から東の方向にある王都を目指し、手綱を握り締め馬を走らせた。


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