雨の唄
あぁ、今日も一日が終わろうとしている。
ボクは何が出来たのだろう。
ボクはキミに、どれだけの想いを伝えられたのだろう。
手を繋いで歩いた通学路。
懐かしい風景はもう、無い。
開拓され、ビルが建ち並び、ネオンの明かりが眩しい。
カエルの鳴き声は、もはや聞こえない。
セミの鳴き声はするけれども、どこか遠くへ。
ムシの姿も変わっていく。
ムシの声を、最近聞いたのはいつのことか。
ボクたちはいつから、こんなにも遠くへ来てしまったのだろう。
空は、こんなにも狭かったかい。
空気は、こんなにも苦しかったかい。
風は、こんなにも冷たかったかい。
雨は、こんなにも降り続いていたかい。
雨は、こんなにもココロを寂しくさせていたかい。
キミの声が聞きたくて。
毎日通った見慣れた家。
今はもう、その跡も無い。
キミとボクを繋ぐバンゴウ。
現代社会の産物、携帯電話。
それを鳴らす、勇気はない。
あぁ、ボクはまた何も出来ずに終わるのか。
こうして人生、何事もなく終わるのか。
『ツマラナクシテイルノハダレ』
言い訳はやめよう。
勇気を持て。
旗を掲げろ。
声を出せ。
キミに「届け」と訴えろ。
後悔したくないのなら、行くしかない。
今しかない。
『ウゴキダセ』
電話越しに聞こえる音。
雨の音がする。
ボクの空も雨。
キミの空も雨。
繋がっている。
どこに居るの。
知りたい。
どこに居るの。
会いたい。
どこに居るの。
まだ間に合うのならば。
どこに居るの。
伝えたいことがあるんだ。
『トビラハヒライタ』
なり振り構わず駆け出す。
冷たい雨にはもう、慣れた。
今はタダ、駆け出すだけ。
自分を信じて、キミを信じて。
雨の唄が聞こえる。
ボクのココロを後押しするかのように。
ひとつとして、同じ音はない。
雨粒の奏でる音は、ボクに魔法を授けてくれる。
『マケルナ』
見つけたよ、小さな花を。
ピンク色の傘をさし、にこやかに微笑むキミ。
こんなにも息があがるのは、駆け出していたからだけじゃない。
キミのことをずっと、想っていたから。
『キミノコエガキキタクテ』
ずっと、愛していた。
出会ったときから、ずっと、ずっと。
『イツマデモカナデル』
これからも、ずっと、愛している。
はじめまして、こんばんは。小田虹里と申します。
「雨の唄」というタイトルの作品を綴りたくて。でも、そう思ってもなかなか思うようにはいかず。本当は、ピチャピチャ……と、子どもが長靴を鳴らしながら歩いている風景を思い描いたりしながら、想像しておりました。
ですが、いざ書き始めてみると、大人……少なくとも、学生以上の年齢層の話になってしまいました。ただ、これはこれで、ひとつの「雨の唄」ということで、自分なりには納得しております。
また、いつか別の「雨の唄」を綴れたら良いな……とも、思います。
今日は、私のところの天気は「晴れ」でした。
それなのに、何故「雨」のことを思いながら書いたのかと問われると、気分が沈んでいたからかもしれません。
でも、こうして作品として作り上げてみたら、どうやら私にも魔法の声が聞こえて来たようです。
もっともっと、頑張れそうな気がして参りました。
基本的に、私はファンタジーを中心に書いております。また、そうありたいとも思っております。
今回は「詩」というジャンルで書かせていただきましたが、「小説」も短編、長編、両方ともに挑戦しております。
もし機会がありましたら、そちらでもお会い出来ましたら幸いです。
ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。
皆様にも、「魔法」の声が聞こえますように……。