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colorful!!  作者: 未来
1章 巻き込まれる、僕
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勉強なさい!

いつか高校の教師の誰かが言っていた。『人に物事を教えるのには、その内容を3倍理解していなければならない』と。確かに本当の意味でその中身を理解していないと、説明なんてものはできないのだろう。しかし、理解できていることと、教えられるということはまた、別問題なようだった。


「だから!余弦定理はこの式でしょ!で!こっからaの値を求めるの!よく見て!どの三角形を見るかぐらいわかってくるでしょ!」

「いや、こない」

「なんでよ!」


早見は非常に頭がいい。それは認める。だが、彼女はそれ故にわかっていないのだ。


「俺たち馬鹿は、なぜそんなやり方をするかわかんないからわかんないんだ!なんで余弦定理が出てきてんだよ!てかなんなんだよ、余弦定理って!何の文字の羅列なの?!」

「そ、そんなとこから教えなければならないの…?あなた本当に高校に通ってるの?」

「通ってはいるよ!授業聞いてないけど!」

「それは通ってないのと一緒よ!」


何を言ってるんだこの女は。授業受けてないだけで欠席と同義とかどうかしてるだろ。


「学校の本分は勉強でしょ!それをやってないってことは、会社にいって仕事してないようなものよ!何もしないで給料もらうとかどんだけ偉いのって感じよ!」


む、確かに…


「人間関係の幅を広げるとか他にも色々言われてるけど、友達が春川くんしかいないあなたはそれも達成できてないでしょ!あなた学校に何しに来てるのよ!」

「べ、別に友達はハル以外にもいるよ!」

「…本当?」

「そのかわいそうみたいな目やめて!」


確かに休み時間とかハルとしかいないな…


「ちゃんと授業受けなさいよ、そんなんじゃ教えることが多すぎて大変よ」


こいつの言ってることは常に正しい。この正論女め。いつか絶対言い負かしてやる。


「しょうがないからとりあえず今日は私が1から教えてあげるから、今後は授業である程度理解しといて」

「はいはい…ていうかこれからテストまでずっとこの勉強会すんの?」

「あなたがしなくても勉強できるというならしないけれど、そういうわけでもないでしょう?」

「ま、まあな…」


家に帰って勉強するはずがない。


「てか、お前自分の勉強はどうすんだよ」

「いらないわ」

「は?」

「いらないの」

「どういう…」

「私はもう勉強しなくていいのよ」


もう完璧だから何も必要ないということか。


…ってなんだそれ?!


「どういうことだよ!確かにお前は完璧かもしんねーけど、やることはいくらでもあるんじゃねーの?!」


世界のなにもかもを知り尽くしているわけでもないだろうし。


すると彼女は首を小さく振った。


「もう、ないのよ」


その表情はどこか諦めているようで、少し前の誰かさんがよくしていたものによく似ていた。


「ふーん…」


少し重くなった空気に気圧されて、僕は気のないような返事をすることしかできなかった。

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