早見とパシリ
ガッと書いたので、間違いあったらコメントでも入れてください
謎の呼び出しから早数日。この数日で知ったことがいくつかある。
まず一つは彼女の名前が『ヒトミ』であること。漢字は教えてくれなかった。あと気安くヒトミとか呼んだら怒るとも言われた。とりあえず早見とでも呼んでおけとも。
もう一つは早見の性格について。彼女が転校してきてからというもの、暇さえあれば彼女を見ていたつもりだったのだが、この数日で知った早見ヒトミという女はまったく別の人間だった。
僕の知っていた早見はおしとやかで優しげな人だった。かつ、容姿端麗、学業優秀、運動神経抜群の才色兼備をそのままあらわすような存在まであった。
しかし現実の彼女は才色兼備ではあるが致命的にワガママだった。なんかいろんなものが吹き飛んでしまうぐらいに。とにかく早見は全てが自分の望んだ通りにならないと気がすまないらしいのだ。
昨日はパシられてオレンジジュースを買いに行ってこいと言われたから買ってきたら、買ってきたオレンジジュースを受け取った瞬間に僕に思い切り投げつけてきやがった。額にクリティカルヒットしてアホみたいに痛かった。そのあとに言った一言が「やっぱりグレープフルーツ」である。ふざけてる。
「私は一色くんが買いに行ったすぐ後にグレープフルーツがいいな~って思ってたんだよ。察してよ。」
「できるか!結局本当に買いに行かされたし、オレンジジュースは僕が飲んだし…グレープフルーツジュースのお金もらってないし…」
「買うもの間違えて時間をロスした分の弁償よ」
「おかしいだろ?!むしろ輸送料はらってよ!てかオレンジで我慢するでしょ普通!グレープフルーツも同じ柑橘類なんだし!」
「オレンジとグレープフルーツは全然味違うじゃない」
「そりゃそうだけど!」
今は昼休み。呼び出しの次の日に「ご飯でも一緒にどう?」って可愛く小首をかしげながら言われたから喜々としてついていったらこの有様となった。それから毎日パシリ。パシリの毎日。上下関係が完璧に完成している。どうすればこの状況を打破できるのか…
僕が頭を抱えている横で早見はお弁当箱を取り出して食べ始めた。なんだか女子にしては大きい。
「なんか、大きいね。お弁当箱」
「…悪い?」
「いや。なんか意外だなって。」
「そう?私はそんなに少食なイメージ?」
「なんか、華奢だし」
「…それとこれとは全く別でしょう」
「そうかね?食べても太んないなんて他の女にひがまれそうなもんだけどね。ねえ、そうじゃない?」
「…そんなことどうでもいいわよ。それより大事な話があるのよ」
「どうでもよくはねえだろ…」
「いいのよ。本当に。それで大事な話。」
「おう、なんだよ」
「一色くん、私が話したこと覚えてる?」
「あの天才がどーのっての?」
「そうよ。あれを実行に移そうと思うの。」
「実行?何すんだよ?俺は天才になんてなれねえぞ。だから劣等種なんだし。」
そこで早見はすごく嫌そうな顔をした。なぜかその顔がいやに目にとまった。
「…なれるわよ。やればなんとかなる。」
「そういうわけでもないだろ。」
「あるわ。やろうと思えばできないことなんてないはずよ。」
「それはお前ならだろう。俺にできることじゃなくないかな。」
「…できるのよ。証明できるはずなの。できないことなんてないの。やろうって気持ちさえあればできるはずなの!」
早見の口調はどんどんと激しくなり、最後には目は赤くなっていた。
「ちょ、なんで泣くんだよ?!」
「…泣いてないわ」
「いやいや、」
「泣いてない」
「そうですか…」
「…いいからやるわよ。」
「へいへい。で、何をするんだ?」
その言葉を聞くと、さっきまでのが演技だったかのように自信たっぷりの顔になって、(…本当に演技?)一気に言った。
「私が勉強を教えるわ!」
だから俺は勉強したくねえんだて。