お呼び出し
2話です。1話1話の進みが悪くてすいません。
それから2週間がたった。なぜ彼女の自己紹介のとき呆けていたのだろうか。これだけたっても今だ彼女の苗字が『早見』であることしか僕はわかっていなかった。これだってクラスの女子がそう呼んでいたのを聞いただけだ。
彼女のプロフィールに関しては全くと言っていいほど知ることができていないが、その他のことに関しては大分知ることができた。なにせ彼女はどこでだって目立ってしまうのだ。
容姿もさることながら、彼女のスペックは僕らの想像をはるかに超えていた。運動は何をさせても大活躍、勉強ではどの科目も完璧に近く、先生を凌駕していることもままあった。
「本当に何でもアリだな、早見さん」
「そうだね」
ハルとの会話はここずっと彼女の話ばかりだ。
「なんでこの高校に来たんだろうな。絶対パーソナルカラー、俺たちと違うだろ」
「どう考えても優良種だからね」
なぜこの時期なのか、なぜこの高校なのか、彼女の転校については気になることはたくさんあったが、僕が本当に気になっていることはただひとつだった。なぜ彼女のkara-ringには色がないのか、だ。
転校初日に見えたあのkara-ringは確かに真っ白だった。
kara-ringは持ち主の成長と共に大きさ調節のために買い換える。新品のkara-ringは確かに真っ白だ。でもそれは装着してすぐの数分間だけのことで、すぐにパーソナルカラーの線が2本浮かび上がってくる。
彼女が教室に入ってくる直前にkara-ringをつけたとは考えづらい。なぜ彼女のkara-ringは白いのか、僕には皆目見当が付かなかった。
※※
その日の昼、いつもどおりハルと購買のパン(焼きそばパンだった)をほおばっていると、突然声を掛けられた。
誰にって早見さんにだ。
「一色くん、ちょっといいかしら?」
「ふぇっ?」びっくりして焼きそばが口から噴射しそうになったので必死に手でおさえこんだ。
僕を見かねてハルが代わりに尋ねてくれた。
「イッキがどうかしたか?」
「少し話があるのですが、少し時間をいただけますか」
そう言って彼女はまっすぐ僕を見た。彼女のはっきりとした黒い目に引き込まれてしまいそうだった。
ずっと見てると怪しまれそうなので、目を逸らして「別に大丈夫」とだけかろうじて答えた。
「そうですか。じゃあ今日の放課後この教室で待っていてください」
彼女はそう告げると教室を出ていってしまった。
※※
早見さんが僕を呼び出したという話はまたたく間に学校中に広まった。僕は好奇と恨みの目を向けられた。本当に彼女は有名人らしい。
※※
放課後。教室で待っていたらどこかに行ってたのであろう早見さんがすぐにきた。そして
「場所をかえましょう」
そう一言だけ言うと教室を出ていってしまった。
もちろん僕はわけもわからず、その後ろを追いかけることしかできなかった。
後から知ったのだが、廊下に好奇心旺盛な生徒が数人いたらしい。僕は全く気付かなかった。