怪しいあいつの正体は?
草野市立六文橋高等学校は夜な夜な妖怪が集まる秘密の心霊スポットでもなければ、異能力者同士が激突する学生超能力者たちを囲う特殊機関でもない。至って普通の、公的権力が金を回して作った公立学校だった。
現在校舎にガタがきており、耐震補強工事のみで済ませるか新校舎に建て替えるかで市議会は紛糾しているらしい。
そんないわくなんて全くない、普通の学校の二階の教室に私たちはいた。
「もうこれはフラグだって!! とうとう私にも非日常の片道切符がやってきたんだって!!」
「いいいかげんにしなさいよ、アンタ? どれだけその話題を引っ張んのよ。クラスの反応見て見なさい。ほら、みんなアンタをかわいそうな物を見る目で見ているでしょ?」
「私の言動はもはや痛々しいと言いたいのっ!?」
私――中田優子がそんな運命の出会いを果たした昼食時、私は教室で弁当片手に親友に魂の熱弁をふるっていた。
そんな私の夢あふれる熱弁も、絶対零度よりも冷え切ったリアリストな我が親友――北野澪さんの氷を解かすには至らなかったようで、サラッと吐かれた澪さんの冷気によって今の私は雪女に出会った猟師状態だ。
「まぁ、あんたが言うようにみた感じ痛い奴ではあったけどさ……名前もビジュアルも」
「私が言うのもなんだけど、澪も意外とひどいこと言うよね」
おまけに彼女自身が中二病でない分、言われた方のダメージは永遠の中二病たる私がはやし立てるよりもデカイような気がする。
「でもあんた、あの子の態度見て見なさいよ。至って普通の自己紹介をした品行方正の鏡のような生徒かとおもえば、男子の下ネタにもきちんと乗るし、辺にクールぶったりしないし『その髪どうしたの?』ってうちの委員長が質問したら『姉の悪戯で脱色されて……』って、血涙流していたじゃない。つまりあんたとは違って普通の価値観と羞恥心を持っている、ごくごく一般的な普通の生徒さんなの。素人さんなの。きっと目だってあれよ、ヤクザの抗争に巻き込まれたとか、両親の夫婦げんかに巻き込まれたとかよ、きっと」
「澪……目が見えなくなるような刃傷沙汰が起こっている時点で結構非日常だと思うの」
平然ととんでもない予想を打ち立てる親友に、私の頬が微妙にひきつるのを感じる。
「だいたい、あんたが望んでいる非日常系転校生っていうのはどんな設定なのよ? あいつがあんたと同じ病気にかかっているかどうかは、それを確認してからでもおかしくないでしょ?」
そう言いながら澪は窓の方へと視線を移し、学級委員長に連れられ学校案内をしてもらっているのか、体育館へと続く一階の渡り廊下を委員長とともに歩く転校生――帝院雷輝君を見下ろした。
どうやら彼女の中では彼が本当に非日常への片道切符という可能性は存在せず、彼が中二病か、本当に家族の悪戯に巻き込まれた被害者かの二択しかないらしい。
「ちゅちゅちゅ……ちゅうにちゃうわ!! んで、特徴だっけ? え? え~っと、まずは……イケメンで学校中の女子から騒がれるわ!!」
「騒がれているわね。『ちょ、何あれ? あの配色はありえないでしょ?』という意味で」
白い髪に、日本人特有の黄色の肌というのはどうしても悪目立ちするらしく、かっこいい云々以前に不自然さが先に立つ。これで肌も日本人らしくない、アルビノ的配色だったらまだその違和感もなかったのだろうが、残念なことに彼の肌の色は典型的な東洋配色だった。
「あと……ミステリアスな雰囲気を出してヒロインを威圧するわ。『俺に近づくと火傷するぜ?』て・き・な!!」
「じゃぁ少なくともあんたはヒロインじゃないわね。相手にすらされていないし」
「ひどいっ!?」
た、確かにあの人が学校案内されているのはうちの学級委員長だけど!? 立候補したけど今朝の騒動が記憶に新しいのか冷や汗流しながら『別の方いません?』とか言われちゃったけど!?
「そ、そんで放課後夕焼けに染まる教室で『あまりこちらに首を突っ込もうとするな。命がいくつあっても足りないぞ?』みたいな意味深なことを言って私に背を向けて去っていくのよ!!」
「今日曇っているけど?」
どうやら私は天候にも見放されてしまったらしい……。
ぐったりと机に突っ伏す私を、食事を終えた箸でツンツンとつつきながら「はは、面白い脱力具合ね。タコみたい」と言って笑ってくる澪。この女いつか〆る(今は肉体的な喧嘩では勝てる気がしないので。いちおう二種類の武術の有段者だし)。
「もう……そんなに否定するなら協力して!! 澪も協力してぇえええ!! あいつ、前の学校では合気道やっていたらしいから、部活見学に澪のところにも来るでしょ!! 親友なら協力してぇええええええ!!」
そう。私を大いに失望させた帝院君の自己紹介だったがその自己紹介の中には『前の学校では合気道をやっていたので、この学校でもお世話になりたいと思っています』というあたりさわりのない、しかし私にとっては彼の接点となりえる重要な情報が含まれていたのだ!!
「協力って……そんなことできるわけないでしょう? うちの部活は個人情報保護法に則り情報の開示要求を棄却します」
「……最近って、いろんなところが厳しいわよね」
「こんな時代だしね」
そう。澪は現在我が校の合気道部に籍を置いていて日夜《武》を極めるために、その女性らしさなんて微塵も残っていない体をさらに筋肉で固くして、コブラツイストをかけて、私の体をツイスト……。
「イタタタタタタタタタタタタ!? イタイイタイ澪イタイ!!」
「何か余計なこと考えなかった?」
「考えてません、考えてません、考えてません!!」
お、オノレ!? こいつはエスパーか何かか!?
「あ、合気道よりもプロレスの方が似合ってる気がする」
「何言ってんのよ。プロレスなんかやったら相手を美しく投げ飛ばしてその尊厳をへし折る快感が味わえないじゃない」
「じょ、冗談だよね……」
私としては友人が加虐(Sな)趣味を持っているなんて考えたくないのだけれど……。
ひきつった笑みを浮かべて「ウソだと言ってよ……」という私の言葉に対して「フフフ」と意味深な笑みを浮かべる澪。正直その笑顔が怖くて耐えられなかったので、私は思わず目をそらし窓の方へと視線を移した。
その時だ!
「あ、あれはっ!?」
「どうしたの?」
私は体育館の見学を終えたと思われる帝院君が、委員長がいないのをいいことに、まるで手品師のような鮮やかな手並みでポケットからスマホを取出し、誰かと電話をし始めるのをしっかりと目撃した!!
「あの鮮やかなスマホさばき……。やはり奴は組織の人間!?」
「どんな組織に所属したら、かっこいい携帯の取り出し方なんて教えてもらうのよ……」
澪の辛辣なツッコミも今の私には届かなかった。
そして、
「っ! 見てっ!! 澪っ!!」
「今度は何……」
私が警戒の声を上げ、指をさした先では、学級委員長が校舎から姿を現した瞬間(ハンカチで手を吹いているところを見るとお手洗いに行っていたようだ)、まるで早撃ちが終わった拳銃をホルスターに収めるガンマンのようなクールさでスマホをしまう、帝院君の姿があった!!
「今のしぐさは……まさか《死の銃撃練武》の納銃術!? そんな、あの呪われた殺戮銃撃術を継承している人間がいたというの!?」
「普通に通話が終わったから携帯しまっただけのように見えるんだけど……。あと、この戯言いつまで続ける気?」
いいかげん澪の視線が痛くなってきたので、わたしはこの話題を強引に締めることにした。
「澪、わたし決めたわ」
「首をくくる覚悟を?」
「いつの間にか私の生存権が侵されているっ!? って、そうじゃなくて!!」
私はクルリとまわったあと、澪に向かってびしりと指を向けた!
「あの転校生の化けの皮を剥ぐために、私は今日の放課後、彼を尾行します!!」
決まったっ!! きれいに決まった私の決めポーズ。昨日から考えていた渾身の力作が決まったことにより、わたしの心の中では爽快感の風が吹き荒れていた。
もっともその数秒後、
「人を指差すなって小学生のころから言ってんでしょうが」
「ぎゃぁああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」
ため息を漏らしつつ澪が、わたしの人差し指の関節をコキュッと外してくれやがったため、私は激痛にのた打ち回ることになってしまい、いまいち恰好はつかずじまいだった。
くそぅ……あの暴力女。筋いためたらどうしてくれんのよ……。
…†…†…………†…†…
私の名前は北野澪。至って普通の高校生。ただ、私の友人――中田優子がかなり普通でないのが目下の悩みで……。
「なんだかんだ言って結局ついてきてくれるのねっ!! さすが私の親友!!」
「最近交友関係見直すかどうかかなり迷っているけどね……。あと、わたしがついてきたのはあんたの戯言を信じたんじゃなくて、あんたが警察のご厄介にならないように監視しにきたの」
「私の行為がすでに犯罪に準じるとでもいうの!?」
普通にストーカーとして罪に問えるランクのことをしている、という自覚がないのだろうかこの友人は……。
私たちが今いる場所は我が高校の近くにある商店街だ。名前は分からない……。私たちは名無し商店街と呼んでいる。ずいぶん前にボロボロになった看板が撤去された後、資金不足で新しい看板を買うことができなかったようで、本来看板があるべきアーケードにさびしい鉄骨が晒されているだけとなってしまった、ぼろい商店街だ。
もっとも、地元の通の奥様方は通常のデパートよりも格段に安い値段で商品を売ってくれるこの商店街をごひいきにしているらしく、結構な客足はある。特に今は夕方なので、夕食の材料を買いに来た奥様方でこの商店街はごった返していた。
「さぁ……早くあなたの本性をさらけ出しなさい。そして私に非日常をっ……!!」
「……………」
興奮した様子で鼻息を荒くする優子と、そんな友人の姿を見て割と真剣に110番をするか悩んでいる私が隠れているのは商店街の商店同士の隙間にできた小さな裏路地。私たちはそこからチョッコリと顔をだし、下校する際にフラフラと商店街に入っていった帝院君の後をつけていた。
学校を出た瞬間電車の駅へと向かわなかったところを見て彼の家が近いとは分かっていたが、まさか彼の家はこの商店街の商店のどれかなのだろうか?
「はっ。そんなわけないじゃない澪。ほんと何もわかってないんだから。非日常のヒーローがこんな寂れた商店街に住んでいるわけないでしょ? きっとこの近くにある豪華な一戸建てに一人で住んでいるのよっ!!」
「……優子、いいいかげんあんたのヒーロー観がわからなくなっているのだけれど?」
あとそのセリフ、商店街の人に聞かれたら袋叩きにされても文句言えないわよ? と、内心で友人の迂闊すぎるセリフにため息を漏らしながら、わたしは人ごみに紛れるように裏路地から飛び出した優子に追従した。どうやら、この人ゴミなら追跡に気付かれることはないと踏んだらしい。
備考初心者の私としてはその判断が出しいのかどうかわからないが、奥様方でごった返す商店街に学校の制服で乗り込むのは、かなり迂闊な気がするのは気のせいだろうか?
案の定私たちは悪目立ちをしてしまい、瞬く間に奥様方に「こんな娘がこんなところに買い物なんて珍しいわね?」といわんばかりの好奇の視線にさらされた。
私は今すぐ逃げ帰りたい心境だったのだが、あいにくと尾行という非日常っぽい行為に興奮を覚えている優子はその視線に全く気付いてくれず、ずんずん帝院君の後を追いかけていた。当然私はそれを放置することもできず、小さくため息を漏らしながら優子の後をついていく。
「っ! 澪……みてあれっ!!」
「はいはい、どうしたの?」
何やら緊張した面持ちになり、無駄に鋭い声で私に話しかけてくる優子。そんな彼女の態度にややげんなりしつつ、わたしは優子が指差した方向へと視線を向ける。
そしてそこでは、金物店に入った帝院君が包丁を種類別に一本ずつ購入している姿があって……。
「あれは……まさか、暗黒料理舞踏に使うための武器を!?」
「セガ○ルな料理人が出てきそうな名前ね。つか、普通に包丁を買っただけでどうしてそこまで邪推できるの?」
いいいかげん真剣に黄色い救急車を呼ぶべきなのだろうか? と、わたしは友人の脳みそが大丈夫なのか割と心配になるが、小学生のころからこんな感じだったことを思い出し、ため息とともにいろいろと諦める。
「みてっ!! 次は八百屋さんに……白菜……だとっ!? そんな、わざわざ旬でない食材を買うなんて、奴はいったい何を考えているの!?」
「野菜一つ買っただけでアンタはいったい何を考えているのよ……」
「次はお肉屋さん……。ひき肉? はっ!? まさかあの肉はあいつが殺した人間の肉で、証拠隠滅のためにあの肉屋で販売しているんじゃ!?」
「普通に営業妨害だからそういったヤバい妄想はやめなさい。周りにいる奥様方がぎょっとした顔で肉屋さんから離れてんでしょうが!!」
「そ、そんな駄菓子屋で散財なんて……奴の財布は化物か!?」
「あら懐かしいわねこのお菓子。私もあとで買っておこっと」
「もう何でいちいちやる気がそがれるような茶々入れるの!?」
「早急にこんなバカげたこと切り上げて帰りたいからだけど?」
ほんとこの子はどうしてこうまでバカなんだろう……。と思いつつ、わたしは先ほど駄菓子屋で買った占い飴玉を一粒、袋から取りだし口の中に放り込む。この飴玉はなめとっている間におもてのコーラ味の飴がはがれ、その下から出てくるカラフルなあめの色によって今日の運勢を占うというもの。小学生のころはこれをよく買って、占いの結果に一喜一憂していたことをよく覚えている。
「ねぇ……いいいかげんにこんなことやめない? 普通に買い物しているだけに見えるしさ。きっとあの電話だって、親におつかい頼まれたとかそんな感じよ、きっと。ほら、占い飴だって《最凶》の青だし」
「何言っているのよ、非日常ヒーローが親ごときに縛られるわけがないでしょ!!」
「全国の非日常ヒーローの親御さんたちに謝れ」
本当に失礼極まりない発言だと思う。物語の主人公の親たちだって、好きで出番を削られているわけじゃないだろうに……。あれは物語の進行上主人公が好き勝手できないと困るから出番が少ないだけであって、べつに子供を縛り付ける悪い親というわけでもないのに……。
私がそんな風にラチもないことを考えながら、非日常ヒーローの親御さんたちを弁護しているときだった。
「っ!?」
「ん?」
突然優子が絶句し足を止めた。
「どうしたのよ?」
「うそ……なんで!?」
きっとまたろくでもない妄想を炸裂させるんだろう。そう思った私は白けた目を優子に向けたが、どうやら彼女は真剣に驚いていたらしく、柄にもなくシリアスな顔をしながら奥様方の人ゴミをかき分け、先ほどまで帝院君が立っていた場所へと走り出した。
「いったいなんだって……」
そう言いかけた私は、ようやく異常事態に気付いた。
そう、数秒前まで帝院君が立っていた場所には誰もたっていなかった。
彼から視線を外したのはほんの数秒程度の時間だったのに、彼はその数秒の間に忽然と姿を消していた!
「って、嘘でしょう!?」
まさか本当にあの子が言っていた非日常な事態じゃないでしょうね!? 私は内心でわずかに悪寒を感じながら、慌てて優子の後を追いかける。
そして、
「まったく、こんなところにネコ捨てるなんて元の飼い主の神経疑うぞ。どう考えても拾わせる気なかっただろう?」
「にゃ~」
優子が勢いよく通り過ぎた裏路地から、小さな子猫を抱えた帝院君がひょっこり顔を出すのを見て一気に半眼になった。
なんのことはない。彼は私たちがちょっと目を離したスキに(といっても彼は私たちにつけられていることは知らないだろうが)通り過ぎるはずだった裏路地にネコがいるのを発見し、それを拾いに裏路地に潜っただけだった。目を離したスキにそれが行われてしまったせいで、私たちは彼が消えたと錯覚してしまったのだろう。
何が非日常事態よ、バカバカしい……。と、内心で数分前の自分を罵りつつ私はさっと人ごみに身を隠し、こちらに向かってくる彼が通り過ぎるのをやり過ごす。ここで彼をつけていることがばれると割合恥ずかしいことになることが目に見えていたからだ。
「う~ん。とりあえずうちのお袋と親父に相談して飼えるようなら飼うか? でも保険とかめんどくさそうだし、あの人たちが賛成するかな……。いや、でもあの二人だったら「何そのおいしいシュチュエーション!? それをこっそり見ていた女の子と運命の赤い糸で結ばれちゃうんですか!?」とかいってOKだしそうだな……」
どうやら彼のご両親はなかなかいい趣味をしているらしい……と、彼の独り言を聞いた私は判断を下す。これは彼が言っていた姉の髪脱色悪戯説も濃厚になってきた。
「まぁ、お袋が引っ越しの際に紛失したものと、今日の晩飯の材料をわざわざ遠回りして買ってきたんだし、この程度のわがままぐらい許してくれるだろう」
猫をペットとして飼うためには安すぎる気がしないでもない対価だったが、それで本当に彼があの子猫を飼うことができるのかどうかは私の知ったことではないので、切り捨てる。
それよりも、どうやらここには買い物に来ただけ、ということが分かったのは幸いだった。これで、家に帰ることができる。と、人ごみの中に消えていく帝院を見送った私は小さく安堵の息を漏らした。
そして、わたしはそのことを優子に告げようとして、
「ふふふっ!! きた、きたわよぉおおおおおおおおおおおおおおお! きっと帝院君は私たちの尾行に気付いていたに違いない。そしてそんな私たちを「素人が」といわんばかりに鮮やかにまいたのよ!! これは間違いなく、彼が非日常的な存在である証……俄然やる気がわいてきたぁああああああああああああああああああ!!」
何やら勝手に燃え上がり、奥様方をドン引きさせている姿を目撃してしまい、
「はぁあああああああああああああああああ……」
大きなため息を漏らしながら最近スマホにかえた携帯を取出しメール機能を立ち上げ、そっけない一文だけ打ちこみ優子に送信する。
《実家に帰らせてもらいます。二度と話しかけんな》
それだけ打つと私は関係者だと思われないようにさっと身をひるがえし、できるだけ早足で優子の傍から離れつつ家路へとついた。
その夜、メールを真に受けた優子が泣きながら謝罪の電話をかけてきたので結局彼女を許してしまった。やはり私は彼女の幼馴染で、どこか彼女に甘いんだろうと自覚し、思わずベッドで悶えてしまったのは私だけの秘密だ。
…†…†…………†…†…
え? はい? 仕事? あの……俺ようやく転校終わったばかりで学校になじむために時間使いたいんですけど?
なに? 拒否権はない? お前の家族の命がどうなってもいいのか? いや……何言っているんですか課長。今までそんなことした事ないくせに……。ん? あ、由利さん? お久しぶりです。
あぁ、やっぱり? 最近見たアニメの影響ですか……。ホントろくでもないんですからあの課長。え? うそでしょ? それにつきあった部隊の人がうちの両親ガチで拉致した!? 何してんですか!? 監督不行き届きで訴えますよ!!
はい……はい。わかりました、その仕事っていうのはそいつボッコボコにしてうちの両親を救い出して不祥事隠蔽しろと?
え、ちがう? もうボッコボコにはした? だったら何で俺に仕事を……。
え、あ……あぁ~。ウチの両親が? 俺が助けにくるまで帰らないと? せっかくのおいしいシュチュエーションなんだからって? ……ほんとうちのバカ親がすいません。
はい。はい。わかりました。早急にそっちにいって引きずってでも帰りますから。とりあえず反省促すためにそっちも二、三発殴っていただいて結構ですよ?