第一章(5)「遺跡の謎」
翌日俺はヴァーシュを連れて研究所を訪れた。といってもヴァーシュはカードの中に居るけどな。
研究所は交易都市シルバートの中心部から少し離れたところにある鍛冶屋通りにある。
鍛冶屋エリアは、その名の通り、シルバートの中で最も工業が盛んな場所である。裏道もたくさんあり、田舎者は迷ってしまうほどの広さがある。中には何を売っているか分からないような怪しげな店や、高い金を巻き上げられそうな工房もあるが、そんなエリアの中にあるひっそりとした通りに目的の建物はあった。
周りの建物と比べれば質素な感じの小屋だ。全体的にぼろいが建物からは周りとは違う独特の雰囲気を出していた。かけてあるプレートを確認する。ハンスはいるみたいだな。
研究所の名前は「H-LAB」、
名前だけ見れば誤解を招きそうな建物だ…。
こんこんと試しにノックしてみるが返事はない。
「ハンス!俺だ、アレンが来たぞ!」
返事はない。
軽くドアを押してみると、音もなく開いた。中を見ると大量の本が乱雑に積まれている、部屋は木製の簡素な部屋だ。それはいい。問題は床に積まれた書類やメモ、専門書だ。少しなら構わないだろう。でもこいつの部屋は何だ。まるで足の踏み場がない。なんだよこれ、ゴミ屋敷?でも一番すごいのはハンスだ。こんな部屋で平然と寝ているのだから。
「おい、ハンス起きろ!ちょっと聞きたいことがある」
足元の紙を踏まないようにしながら近づき、話しかけた。
「ああ、おはようアレン今日もいい天気だね」
「ようやく起きたか。ちょっと魔物のことで聞きたいことがあってきた」
「ああ、魔物の話?まあそこに座ってよ」
「どこに座ればいい?」俺は下に視線をさまよわせる。
「机に積まれている本のそばに椅子があるよ。それに座って」ハンスはそういってベットに腰掛ける。
書類の山から椅子を引きずり出して腰掛ける。俺は昨日の依頼のことを話した。彼は話を聞くと机の上にある書類を漁り、書類を見ながら話しだした。
「最近、穏やかだった魔物たちが、活発になってきている。原因はまだ不明。報告書にはそう書いてある。でも裏通りの仲間から集めた情報によれば、レム遺跡近くに確認されていないような魔物が発生しているって。僕は遺跡に何か原因があると考えている」
「そうか。でもなんでそれだけの情報でそんな結論になった?」
ふと疑問に思い、聞き返す。
「遺跡の中は高いエネルギーであふれているらしいよ。昔の文献で読んだことがある。
何か未知のお宝でもあるんじゃない。行ったことはないんで僕がわかるのはここまでだけどね」
「十分だ。俺が調査して確かめてみる。今からでも荷物を整えて調査してみる」
俺は意気込みながら言った。
「分かった。でも気を付けたほうがいいよ。レム遺跡とその周辺は地属性のモンスターが多いから
炎属性のカードを持って行ったほうがいいよ。はいこれ、持って行ってよ」
そういいながら彼は俺にカードを5枚差し出す。俺の持っていない炎属性のカードだ。
「いいのかよ、ハンス?申し訳ないな……」
「いいよそのくらい。その代わり、クエストとして依頼するから調査の報告よろしくね」
「分かった。じゃあ旅の支度するんで明後日から行ってくるわ!」
約束を交わし、部屋を出た。
そうと決まればさっさと旅の支度をしないとな。準備ができ次第出発だ!
俺はそう意気込み準備を始めた。