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重たい、暗い、たまに明るいファンタジー

その女は最強の武器を持っていた。

作者: 馬 stallion

思いつきで書いたものです。

稚拙な表現ですが・・・最後まで楽しんでいただければ、幸いです。

「あなたね・・・勇者 ライって・・・」

囁くように艶かしい声が耳に響いた。





薄暗い酒場のカウンターで美しい女は一人、酒を飲んでいた。


歳は20代半ば?いや、もっと年上か・・・。


その身なり、背格好から想像するに、職業は盗賊か・・・?


銀色の艶やかな長い髪を後ろで束ね、碧色の目と細い腰に短剣を光らせている。

体は法衣のような淡い黄色の布で身を包み、そこから白く長い足が威嚇するようにこちらに伸びている。




この世界を闇に包み、人々を苦しめ続けた魔王 ウェルザー。

そのウェルザーの野望を打ち砕き、安堵感に包まれたのも束の間、

世界は更なる闇に包まれた・・・。




魔王の残党を退治するも、魔物は減らないどころか増える一方・・・。

ウェルザーを裏で操る更に強大な敵の存在を感じたのが10日程前だった。




しかし、僕らの旅も終焉が近いだろう。

一時は愕然としたが、その敵を倒せば今度こそ世界に平和が訪れる・・・。

その強敵の情報を集めるため、これまでに通った街という街、城という城を細かく調査し、情報を聞きまわっている。

今日も一日動きまわったが、特に有力な情報は掴めていない。




最果ての町・・・そう呼ばれる魔王ウェルザーの城に最も近いこの町が最後の希望だ。




酒場のマスターの話を聞いていると、

どうやら僕らが魔王を退治した後、この周辺の魔物はこの女が退治しているようだ・・・。




たった一人で・・・??

そんなに凄腕なのか・・・。

この地域の魔物は相当強い・・・。

今でもより凶悪な魔力を纏い、人々を襲っているはずだ。

勇者である僕・・・もしくはうちの戦士ガンズならまだしも・・・。

こんな華奢な女が・・・?







僕らはパーティを組んで旅をしている・・・それも2年ほど前から。


戦士 ガンズ(19歳)はこの世界で最も怪力を誇る猛者だ。

と、同時に最も良く食べる男でもある。


魔道士 モーファン(55歳)はこの世界で最も魔術に長けた賢人だ。

と、同時に最も知識を持つ男でもある。


盗賊 ヤコム(20歳)はこの世界で最も素早い超人だ。

と、同時に最も罪を犯した盗賊でもある。


そして、僕、ライ(17歳)は勇者を名乗る。




ガンズが言う。

「とりあえず、飯でも食いながら話を聞けば良いガ!」

そういいながら、カウンターにあるチキンに手をつける。



僕は素直に疑問をぶつける。

「君はどうしてこの辺りの魔物と一人で渡り合えるんだ?」



腰につけている短剣は至って普通のものだ。

着ている淡い黄色の布も魔力を封じているようには見えない。


腕だって細い。

超人的な脚力を感じないが、しなやかな足・・・。

銀色の髪と碧色の眼は魔力には満ちていない・・・。

白い肌は綺麗でこそあるが、人間族以外の何者でもない。









女は間を空けて、ゆっくりと紅い唇を開いた・・・。

「私には武器があるの・・・それもこの世界で最強の・・・」

そう言って、グラスに口をつけた。




「最強の武器??? それは・・・嘘でしょう!」

魔道士モーファンが口を挟む。



無理もない、最強の武器は僕の腰に下げている、この剣だ。



女は鋭いその碧の眼でモーファンを舐めるように見つめる。

そしてグラスをカウンターに置き、また唇を開く。



「貴方がモーファン?」


「いかにも、私が魔道士モーファンだ。 知っているなら話は早い。」


そう言いながら、モーファンは誇らしげに白いアゴヒゲを触った。

モーファンの知識は絶対だ。

これまで僕らもそれに助けられ、それに支えられてここまでやってきた。




「ふぅん・・・・思ったより若いのね・・・見た目も知識も・・・」

女はクスっと笑うようにモーファンから視線を外し、こちらに背中を向けた。



「この女・・・ナマイキだな・・・ほっとけ」

盗賊ヤコムがそういいながら、指でナイフを回し、イスに腰を掛けた。



女はこちらに背中を向けたまま、話す。

「ヤコム・・・貴方も知ってるわ・・・そして貴方以上のものを盗める・・・」




ヤコムは吸おうとしたパイプの手が止まったが、何もしゃべらなかった。




「ガンズ・・・そして勇者 ライ・・・・貴方たちも知ってる。」

ガンズのチキンを食べる手は止まらない。



女は僕の方に向き直り、続けざまに話す。

「ライ・・・私を仲間にしない? そっちの二人よりは役に立つわよ」

そう言って、モーファンとヤコムに視線を送った。



確かに・・・・興味はある・・・。

この一帯の魔物を倒すその武器・・・・。

そしてモーファンを見下し、ヤコムを上回る能力・・・・。


しかし、


「いきなり、ハイそうしましょう! って訳にはいかない・・・、何より君の実力を見せてもらわないと・・・」



当然だ・・・。





ヤコムがナイフをチラつかせて、パイプを吹かす。

そして、ギラついた眼で女を睨む。

「女・・・もし嘘だったら、ただじゃおかねぇぞ!」





「私が見極めよう、その武器を、貴方の能力を!」

モーファンが嗜めながら、話を纏める。




「ここはモーファンにまかせよう!」

僕はモーファンを信頼している。




「っへ!勝手にやってくれ・・・」

ヤコムはそういってパイプを吹かす。


ガンズは豚の丸焼きに手をつけている。







「女よ・・・見せてみろ!!!」

モーファンが凄んだ。







女はスラリと白く長い足を伸ばし、黙ったまま立ち上がった。

165cmくらいはあろうか・・・、ヒールのない革のサンダルだがより背が高く見える。




そのままモーファンに歩みより、彼の耳元で囁いた。




「そんな威圧しないでもらえる? モーファン・・・それから私の名前はロン、 ロン=ビケットよ」





「わかった、ロンよ・・・。 見せてもらおうか?」

モーファンはイスに腰掛けた。





薄暗い店内のわずかな光に照らされる銀色の髪に、僕は思わず息を飲んだ。





しかし、ロンは黙ったまま動こうとしない、魔力も感じないままだ・・・。












「っへ・・・やっぱハッタリか?! ねぇちゃん!」

ヤコムが野次を飛ばす。





ロンは周りを見渡し、また囁くように艶かしい声で呟く。


「人目もあるし、他のお客さんに危害が加わるといけないわ。 あっちの部屋にしてもらえる?」




そういってロンは奥の部屋に向かって歩きだした。





「はっ! 大層なこったな!」

ヤコムが鼻で笑うが、僕らはロンの後を付いて歩いた。





モーファンの背中に魔力を感じた・・・。

彼は集中力を高めているようだ・・・。

魔王ウェルザーと対峙した時を思い出させる。




「お前らに任せるガ!」

そう言って、ガンズはスープを啜った。





「ガンズ・・・貴方にも見て欲しいの、私の能力を・・・」

ロンはドアの前で振り返り、ガンズにそう言った。



「食べながらでもいいのガ?」

と言いながらガンズはチキンを2つ手に取って、重い腰を上げた。





ギギーっと音を立てて開く扉をくぐり、次々と僕らは部屋の中に入った。









最後にドスドスとガンズが部屋に入ると同時に・・・。


バタン!!


と、扉が閉まった・・・。







部屋の中は酒場から漏れる声が聞こえる程度で、静かだった。

さらにその部屋は殺風景で、奥に木製ベットが二つ、古いタンスが一つ・・・。

窓は閉まっているがカーテンが開いており、月明かりが差し込んでいる。





「さぁ!見せてもらおうか!」

モーファンがロンの背中に声を掛ける。






ロンは何も言わずに部屋の中央で立ち止まり、短剣の挿していたベルトを取ってベットに放り投げた。


そしてロンは背中を向けたまま、銀色の髪を結んでいたヒモを取り、髪を振りほどいた。

その銀色の髪は長く、腰まで届きそうだ・・・。









僕は月明かりに照らされた銀色に目を奪われた。


ガンズの手からチキンが離れ、床に音を立てて落ちた。









そのまま法衣のような淡い黄色の布をゆっくりと脱ぎ始め・・・













白い肩が・・・













さらに透きとおる様な白い背中が見えた。













ヤコムが唾を飲み込む音が聞こえた。











布が床にフワリと落ちると同時に、

モーファンの魔力が薄れていくのが分かった。



















酒場のマスターがドアを見つめながら、呟いた。

「ロン様・・・お美しい・・・そして、流石でございます・・・。」















・・・その夜、パーティは全滅した。


ファンタジー初挑戦です。


内容そのものは特にファンタジーではないかも;;


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


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― 新着の感想 ―
[一言] 面白かったです。 しかし、まさか「じいちゃんの白いパワースーツ」を書かれた方だったとは…!(あの短編、結構好きだったものでw) 是非、ペガサスさんの長編ファンタジーも読んでみたいです。
2011/03/06 13:23 退会済み
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