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超短編 なろうラジオ大賞7

いつでもどこでもホットケーキ

作者: 荒雪柳
掲載日:2025/12/21

テーマは『ホットケーキ』

『第7回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞』の対象となる超短編作品です。

「―――今度、ホットケーキ食べに行こ?」

「ああ、いいよ」


 言われて考える。

 そういえばホットケーキなんて長いこと食べてないな、と。

 最後に食べたのはいつだったか。

 そう考え込んでいると怪訝そうな視線を向けられる。

 肩を竦める。


「ホットケーキなんて食べるの久しぶりだなって」

「そうなの? ……あんまり好きじゃない?」

「そういうわけじゃない。むしろ好きだけど」


 それは本当だ。

 そもそも甘い物は嫌いじゃない。だからホットケーキを食べに行くことに反対する理由も特にない。


「ふーん、なのにあんまり食べてないの?」

「あえてホットケーキってのがなぁ」


 ホットケーキというのはある意味で特殊な食べ物である。

 甘い物は基本的には食後のデザートや間食のおやつとして食べることが多いと考えられるが、ホットケーキをそれらと同じにするには少し問題がある。

 大抵の場合、そういったものと比べて量が多いのだ。

 それゆえに、何かのついでとして食べる機会がない。


「端的に言って、いつ食べればいいのかわからない」

「いつって……いつでもいいんじゃない? 朝ごはんの代わりとか?」

「じゃあ朝食べたりする?」

「それは……しないかな」


 結局、うまいタイミングが見当たらず食べる機会を逸しているのだ。それがどうしても食べたいものであればホットケーキを食べるために専門店を訪れることもあるかもしれないが、なかなか一人ではそういう気分にもならない。

 たとえば喫茶店に立ち寄ったりすれば気まぐれに食べてみようと思うこともあるのかもしれないが、残念ながらなかなかそういう店に行くこともない。


「うーん、なるほど……」


 と、そう話すと何か思うところがあったのか、深く考え込んでいるようだった。

 ホットケーキでそこまで考えなくともよいと思うのだが、余計なことは言わないことにした。


「うん。わかったよ」

「何が?」

「じゃあ今から買いに行こう」

「……何を?」


 話の流れとしてホットケーキなのはわかる。

 つまりそれは、これから食べに行こうということなのだろうか。


「ううん、違うよ」


 それがどういう意味かわからず首を傾げる。

 そんな自分の姿に楽しそうにふふと笑う。


「これから材料を買いに行くの。それで、作って食べよう。好きなだけ。食べたいだけ」


 それでいいんだと。

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