表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/51

第48話 重大な決断

 時は流れる。


 令和9年(2027年)。

 圭介はもちろんまだ馬主、というよりオーナーブリーダーを続けていた。


 この年、50歳になる彼は、まだ元気だったが、世代交代が少しずつ始まる。


 まず長女の明日香。18歳の高校3年生になり、「将来の進路」を考える年だが、彼女の選択は一択だった。


「オーナーブリーダーになる」

 というものだったが、父である圭介は、


「まあ、いきなりは無理だろ。まずは牧場で勉強しろ」

 と伝えていた。明日香は、高校卒業後に子安ファームに戻り、厩務員として働く予定だった。

 将来的には、牧場長、そしてオーナーブリーダーになりたいらしい。


 明日香が結婚して、婿に継いでもらうということも圭介は考えていたらしいが、それを話すと、

「考え方が古い。女だって出来る」

 と一蹴されてしまった。


 そして、その年の春。

「麗衣。競馬学校は厳しいぞ。それでもがんばれるか?」

 次女の麗衣が、関東の千葉県にある、競馬学校に入学することになる。


 実は、それでさえかなり狭き門で、応募しても騎手養成学校に入れるわけではないのだが、彼女は鋼の意志で、それをクリアしていた。

 それだけに、彼女の決意は固かった。


「愚問だね。3年後、期待してていいよ」

 彼女が競馬学校に入って、騎手を目指す原動力になったのは、実は結城家の長男、結城薫の存在が大きく、彼がこの年、実際に競馬学校を卒業して、中央競馬で騎手としてデビューしていた。


 麗衣は、薫の存在は関係ない、と否定していたが、圭介は薫の影響が少なからずあると見ていた。


 麗衣は、この春から騎手養成学校に入学。

 3年間の養成期間を経て、騎手免許を取得し、いずれ中央競馬界に入るだろう。


 唯一、進路が決まっていないのは、三女の麻里、14歳。

「いいなあ、姉さんたち」

 と、無邪気に笑顔を見せていたが、


「お前は、何かなりたい職業ないのか?」

 圭介が尋ねても、


「うーん。別に。騎手になれない以上、どうでもいいかな」

 と、親としては非常に心配になる答えしか返ってこなかった。


 末っ子で、どこか自由奔放なところがある麻里は、甘え上手で愛され上手なところがあり、抜け目ないところもあった。


 ところが、そんな彼女にも転機が訪れる。


 翌年の令和10年(2028年)、春。

 ふとしたきっかけで、緒方マリヤが子安ファームを訪れた。


 その時、彼女は久しぶりに麻里に会ったのだが。

「あら、あなた」

「はい?」


「あのおチビちゃんが大きくなったわね」

 かつて、麻里のことをおチビちゃんと呼んでいたマリヤは、その成長に目を見張っていた。


 そして、

「将来の夢はある?」

「うーん。別にないかなあ」


「じゃあ、アイドルやってみる?」

「えっ。アイドル?」


「そう。あなた、ちょっと面白いかもしれない。光る物を感じる」

 それが緒方マリヤなりのお世辞なのか、それとも元・アイドルの直感なのか、圭介にはわからなかったが、それでも娘である以上、気にはなる。


「麻里。興味あるか?」

「うーん。まだ、よくわからないけど、やってみたいかな」


「そうなのか」

 父としては意外だったが、意外なところで後押しが入った。


「いいんじゃない、麻里なら」

 妻の美里だった。


「美里」

「この子、人を惹きつけるところがあるからね。もし、本気でやる気があるなら、反対はしないわ。ただし、中途半端な気持ちでやるなら、最初からやめたほうがいい」

 彼女は、母親として、ある意味、冷静な目を持っていた。


 しばらくの逡巡、微妙な空気が流れるが、麻里は考えた後、答えを出した。

 明るい笑顔で、


「じゃ、中学を卒業したらやってみる」

 彼女なりに考えてはいたらしい。


 とりあえず義務教育の中学まではきちんと勉強して、高校に入る頃に、アイドルとして活動するなら、という考えらしい。


「わかった。じゃあ、来年の春辺りに、私が懇意にしてる芸能事務所に紹介するから」

 緒方は緒方で、性格的にさっぱりしてるところがあったから、あっさりと了承していた。


(しかし、まさか娘がアイドルになるとは)

 父として、圭介は複雑な気持ちではあった。


 何しろ、

(可愛い娘が、大勢のキモオタどもの眼にさらされることになるのか)

 と思うと、父親としては複雑な感情になるのだ。


 翌年春、麻里は緒方が紹介した芸能事務所に所属し、しっかりアイドルとしてデビューすることになる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ