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ラッキーオーナーブリーダー2  作者: 秋山如雪
第3章 鮮烈のスプリンター
17/20

第17話 ドラゴンのデビュー

 エルドールが、凱旋門賞を目指すべく、フランスへと旅立つ直前。


 九州の小倉で1頭の快速馬がデビューを飾る。


 2021年8月22日(日) 小倉こくら競馬場 5R 新馬戦(芝・右・1200m)、天気:雨、馬場:稍重ややおも


 2019年に産まれた、ゾルファガールの仔、ミヤムラドラゴン。産まれた時から「心臓が強い」と言われていた、強心臓の持ち主。


 子安ファームのメンバーからの愛称は「ドラゴン」。その期待のドラゴンがデビューするにあたり、圭介たちは、さすがに九州は遠いので行かなかったが、その代わり、子安ファームのメンバーのほとんどが、執務室でインターネット映像を見ることになった。


 唯一、結城亨だけは、作業をしていて不在だったが、それ以外に圭介、美里、明日香、麗衣、麻里、美織、結城真尋、結城薫も揃っていた。


 2枠3番、単勝1.2倍の圧倒的1番人気だった。


 小倉競馬場・芝1200mは右回りで、典型的な小回りの平坦なコース。最後の直線は293mと短く、高低差はほとんどない。


 スタートから最初のコーナーまで長いが、コース全体を通して下りと平坦しか無くペースは非常に速くなる傾向にある。


 また夏場は、硬くてスピードの出る野芝主体で高速決着になりやすく、スピード・瞬発力が大きな武器になる。


 唯一の懸念は、この日、雨で不良馬場だったことくらいだが。


「スタートしました」

 揃ったスタートになったが、注目のドラゴンこと、ミヤムラドラゴンはいきなりハナを奪って先頭に立っていた。

 雨による不良馬場も彼には関係ないようだった。


(いきなり先頭か。バテないか?)

 と圭介は内心安堵していたが。


 見ると、少しもペースを落とさず、そのままあっという間に、最終コーナーに入る。


 最後の直線では楽な手応えであっさりと先頭を走りそのまま後続を難なく引き離していった。


「さあ、ミヤムラドラゴンが先頭。リードは2馬身、3馬身」

 文字通り、あっという間に突き放していった。


「抜けました、3番のミヤムラドラゴン。突き放す一方です。リードは5馬身、6馬身、7馬身」

 実況の声を聴いて確認するまでもなく、圧倒的なスピードで他馬を子供扱いにして、引き離していた。


 そして、

「3番、ミヤムラドラゴン、ゴールイン」

 もはや勝負になっていないくらいの、圧倒的な差だった。


 最終的に着いた着差は、6馬身。


「いや、やっぱマジですごいわ、この仔」

 感慨深げに画面を見て、言い放ったのは、牧場長の結城真尋だった。

 そもそも、彼女自身が、ミヤムラドラゴンが産まれた時に、


「この仔はマジですごいよ。これで勝てなかったら、逆にヤバいと思うくらい」

 と言っていた張本人だ。


 それに、獣医の岩男千代子が、


「こんな心臓の音は聞いたことがないというか。力強いというか。とにかくすごい馬です」

 と言っていたのを圭介は思い出していた。

 

 そして、長女の明日香もまた、圭介の袖を引っ張って、顔を近づけてこう告げたのだった。


「もしかしたら、アスカチャンに代わる、短距離エースになるかもしれないね」

 と。


 彼女たちの先見の明に驚く圭介だったが、この馬がまさか本当に「伝説を作る」ほどの存在になるとはさすがにこの時は思っていなかった。


 「ドラゴン」の伝説が、今、静かに幕を開けたのだった。

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