神通力を奪われ、奴隷にされた女神は復讐を遂げた後、勇者パーティーの討伐を受け流して、しばし休息を取ります
前作「神通力を奪われ奴隷にされた女神の怒りが頂点に達した時、女神は覚醒する~復讐はとろ火でじっくりと(改訂版)~」の解決版です。
魔王となったわらわは、自分を嘲笑した村を焼き払い、王国全体を情け容赦なく壊滅させた。
溜め込んでいた憎悪と欲望を一気に解放したわらわは、もうひとつの欲望を思い出した。
仕方がない。わらわも健康な女の子だもの。一年間も禁欲してたら、それは溜まるものも溜まるわ。
わらわは、以前、神秘の泉の女神として泉に人を寄せ付けず、毎週末、神々の集いで奔放に遊び歩いていた頃を思い出した。
辺りは焼け野原。人っ子一人生き残っておらず、幸い見る者などおらぬ。
溜まったものは、抜かないとね。
わらわは泉の水に半身を浸し、じっくりと「一人遊び」を楽しむことにした。
一方その頃、勇者パーティー「金翼の覇者」は魔王のもとに迫っていた。
彼らは全員が自信に満ちた顔をしており、それぞれが世界を救う使命感に燃えている。
「いくら恐ろしい魔王と言えど、俺たちならきっと勝てる!」
パーティーリーダーである勇者アルヴァが叫ぶ。
「その通りだ!」重戦士バルゴが力強くうなずく。
「皆で力を合わせれば怖いものなしよ!」紅一点の魔導士セリナが微笑む。
全員が泉のほとりに到着し、魔王に向かって攻撃開始の雄叫びを上げた。
「こら!魔王!我々『金翼の覇者』が来たからには必ず討伐してみせるぞ!」
だが、魔王はそれには応えなかった。泉の真ん中で背中を向けたままガン無視であった。
「あぅっ! んんっ! んんぅ……!」
そして、なんとも動物的な叫びを返すだけだった。
「ゴルァ!女神!なめとんのか!返事くらい、せいやぁ!!」
勇者アルヴァが怒り狂って叫ぶ。だが、返ってくる返事は
「ぁぁ……んっ、あぁ……」
「んんっ……! んんんっ……!」
セリナが「私、なんとなく聞き覚えがある……」と少し顔を赤くした。
「なんということだ……魔王はもはや言葉を発することもない。
理性を失い、完全に怪物と化してしまったか!」
アルヴァが眉間にしわを寄せる。
「攻撃してこないなら、今が好機だな!」バルゴが剣を握りしめる。
「今こそ、全力を出す時だわ!」セリナの杖が輝きを増す。
五人は魔王の背後にから、それぞれの必殺技を繰り出す準備を整えた。
「五人同時にいくぞ!ブレイジング・スラッシュ!」
アルヴァの剣が赤い炎をまとい、魔王の背中に振り下ろされる。
「ドラゴニック・カタストロフ!」
バルゴの大剣から巨大な竜の形をしたエネルギー波が放たれる。
「エターナル・ラグナロク!」
セリナの杖から放たれた光が、魔王を包み込むように降り注ぐ。
「シャドウ・レクイエム!」
僧侶ルイスが闇の中から跳び出し、魔王の足元を狙う。
「スカイエンド・デスペラード!」
弓使いアインが空中で矢を放ち、矢は稲妻となって魔王を貫く。
ものすごい斬撃音と轟音が辺りに響き渡った。
その時、魔王は叫んだ。「ああぁぁあっ‼︎ だめっ! だめぇえええっ!」
「しめた!我々の攻撃が効いてるぞ!!」
セルフプレジャーに耽る(ふける)女神――魔王である、わらわは、下の方でゴミがなんか言ってのが聞こえてきた。
ふあぁぁああっ、時間をかけて坂を上り詰めて、もうチョットでクライマックスなのに……
こっちは指を激しく動かして両手が塞がってるから、それどころじゃないわ。
わらわは、手が離せないのじゃ。めんどくさい、あえて攻撃を受けるわ。
「五人同時にいくぞ!」って、こっちも、いくわよ。
あっ!なんか、背中に感じる。丁度いいマッサージ。わぁ、全身に心地よいバイブレーションが沁みる……。
「ああぁぁあっ‼︎ だめっ! だめぇえええっ!」
快感が波のように押し寄せ、わらわの身体を震わせる。
「ひぁぁあっ⁉︎」
ぷしぃっ、わらわの泉が、勢いよく噴き出た。何度も何度も。
「あ」
その瞬間、一線を越えた。
「んんんぁああああっ‼︎ ああぁぁぁぁぁああっ‼︎ はぁぁああうんんんぁぁああああああああああああっ‼︎」
声にならない叫びをあげながら、わらわの身体は大きく跳ね、硬直した。
全身が弓形に反り、ぶるぶると痙攣を繰り返し、ズブズブズブとそのまま泉に沈む。
すべての欲望を吐き出したわらわは、気だるい眠りに誘われた。
これから、泉の底に沈み、しばしのまどろみを楽しもう。
「金翼の覇者」のパーティメンバーたちは、倒れた魔王を見下ろしながら、勝利の余韻に浸っていた。
全員が疲れ果てていたが、その顔には満足げな笑みが浮かんでいた。
「今回は相手から反撃を許さない、一方的な勝利だったな!」
リーダーのアルヴァが笑いながら言った。大剣を肩に担ぎ、誇らしげに胸を張っている。
「オレたちの連携が完璧だったんだよ!あの魔王が手も足も出なかった!」
バルゴの大剣を地面に突き刺し、勢いよく頷いた。
「そうそう、『だめ! だめ!』とか言って、最後は人間の言葉を取り戻したのかしら」
魔導士のセリナが頬に付いた埃を拭いながら、笑顔で答えた。
「けど、最後の攻撃の後、水魔法か?、いきなり潮のような攻撃には肝を冷やしたぞ。
見当違いの方向だからよかったが、まともに攻撃を受けたら危なかった」
僧侶のルイスが冷静な声で注意を促す。だが、その声にも少しばかりの安堵が含まれていた。
「まあまあ、ルイス。魔王の最後の断末魔を聞かなかったのか?全身を苦しそうに振るわせて。
あれなら二度と復活することはないさ!」
弓使いのアインが空を見上げて深呼吸した。
青空が広がり、戦いの跡をかき消すかのような清々しい風が吹いていた。
「よし!!いつもの合言葉を唱えるぞ!」
リーダーのアルヴァが叫ぶ。
「「俺たち最強だ!
『金翼』最高!」」
その頃、泉の中では女神が遠のく意識の中、彼らの勝どきを聞いていた。
「禁欲、解放……」
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